第27話 グルーグ王子の策略

 王宮内へと入ってすぐ、入場を許してくれた衛兵の上官に王宮内にある牢獄への道を聞き出そうとしていると、コカゲが間に割って入って来た。

 そして、コカゲはまるで用は済んだと言わんばかりに上官をこの場から立ち退かせた。


「てめぇ、さっきから妙な動きばっかりしやがって、何が目的だ?」

「ここからは私が案内しますので」


「ややこしい真似をしやがって、初めからそうしろ」

「指輪は便利じゃないですか?」


「指輪?」

「あぁ、コレの事か今初めて使った」


「今後もそうやって見せびらかせば、下々は喜んであなたに仕えてくれますよ、存分に使った方が身のためですよ」

「・・・・・・お前」


 その口ぶりはあの第二王子の妹であることを証明している様なものであったが、ここで俺は一つの疑問が頭をよぎった。

 そもそも、第二王子の妹だったとしたら、こいつはヴォルト王国の姫という事になるはずだ。そんな奴がこんな地味な格好をして俺に付きまとっている理由はなんだ?


 ・・・・・・まぁ、そのあたりもせっかく王宮に来たんだからグルーグに問いただせばいいだろう。


 そうして、俺達はコカゲの先導で豪勢な廊下を歩いていると、とある一室の前でコカゲが立ち止まった。


 その扉の前でコカゲはノックをすると、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 その声の後、コカゲは躊躇なく扉を開いて俺達も中に入ると、そこにはグルーグが椅子に座ってくつろいでおり、奴は菓子をむさぼりながら俺たちを出迎えてきた。


「あぁ、よく来たなお前たち、待ちわびたぞ」


 その様子は、思わず苛立ってしまう程の態度であり、俺はすかさずグルーグの正面にある椅子に腰を下ろした。


「御託はいいグルーグ、ここには王宮にある牢獄のために来た」

「ん?なぜそんなところに用がある?」


「勿論、てめぇが欲しがるオリジンがあると聞いたからだ」

「ほぉ、その情報はどこからだ?」


「貧民街のバーバラというエルフの女から聞き出した」

「そうか・・・・・・」


 そう言うとグルーグはティーカップを持ち上げてそれを口につけると、満足そうに拍手を数回鳴らした。そしてその様子とここに来るまでのコカゲの対応に俺は完全にこいつらの手のひらの上で転がされているという事を理解した。


「見事だメフィウス、よくぞここまでたどり着いたな」

「・・・・・・俺を試したな?」


「そうだ私はお前を試した、その点については謝ろう。だが、どうしてもお前の事を試したくて仕方がなかったのだ」

「なぜだ」


「お前が本当に信用できる存在なのかを知りたかったまでだ。そして、お前はその期待に応えてくれた、これ以上ない喜びを私は今かみしめているぞっ」

「悪趣味な奴だ、ひねくれている」


「そういうな、私は立場的にも簡単に人を信用できない、これは職業病といってもいい」

「王子は職業になるのか?」

「王子としての役目を全うするのは非常にストレスがたまる。だが、それを乗り越えた先には明るい未来が待っている。そう思えばこの程度の事はなんてことはない」


 初めて会った時とは違うテンションに困惑しながらも、こいつはこいつでそれなりに苦労している様子がうかがえた。


「で、牢獄にオリジンをかくまっているというのは本当か?」

「本当だ、親父殿が秘密裏に確保している、この目で見た」


「そうか、ならとっとと案内してくれ」

「待てメフィウス」


「なんだ?」

「我が王宮の牢獄にはすでに先客がいる」


「そんなもんお前の王族特権で何とかしろよ」

「無理だ、兄上がひいきにしている連中が警備している」


「どんな連中だ?」

「ヴォルト王国でも随一の防御力を誇り、人員、統率力共にトップレベルのギルド【シルドラ】が警備を固めている」


 グルーグは唇をかみしめながら悔しそうな表情でつぶやいた。その反応に対し、俺は同情の気持ちと共に、難攻不落の相手の存在にやる気が失せた。

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