第25話 見捨てられた者
「そうか、ならダンジョンにでも向かうのが俺の役目って所か・・・・・・他に、言う事はあるか?」
「ないよ」
「そうか・・・・・・」
これ以上喋ることがない、そう口にしたバーバラはどこか頻繁にタバコを吸い、こわばった表情をしていた。それが何によって引き起こされているのかはわからないが、彼女にどこか違和感を感じた。
ただの気のせいか・・・・・・?
いや、世界に拒絶され、神から見放された俺にとって、こいつの態度を素直に信用する気になどなれなかった。
そして、俺はこいつから聞き出せるだけの情報をどんな手を使ってでもすべて聞き出すと心に決めた。
「ところでバーバラ、エルフ族と言えば魔力と精神力、それにMPに精通した一族だったよな?」
「そ、そうだけど、それが何?」
「・・・・・・食べ応えがありそうだ」
俺は子を小さくそうつぶやくとバーバラは怪訝そうな顔をして聞き返してきた。
「え、何?」
「いや、聞いてみただけだ、それよりもこれからよろしくな」
そうして、俺はバーバラに手を伸ばすと、彼女はわずかに戸惑った様子を見せた後俺の手を握った。
もしもこいつが、MP対策用の魔法道具を装備していたとしてもこれだけ接触していれば防ぎようはない。それはすでに実証済みだ。
そして、バーバラの手をぎゅっと握りしめると、彼女の顔が引きつった。その瞬間に俺は至近距離でバーバラからMPを吸収し始めると、彼女は俺から手を放そうとしたが、それを逃がさなかった。
「ちょっと、いきなり何をするのっ」
「混じりっ気のない質の良いものだ、だが、タバコのせいでわずかに濁ってるな」
「ひ、人のMPをレビューをするな、っていうかやめてっ」
「いいや、やめない、なぜなら俺はお前からとれるものはすべて手に入れるつもりだからな」
「な、何を言っているの」
「まだ、俺に隠している情報があるだろ?」
俺の言葉にバーバラはわずかに表情をゆがめたのをい逃さなかった。しかし、彼女は俺の問い詰めに対して黙秘という態度を取り始めた。
「そうか、黙秘するか」
俄然楽しくなってきた展開の中、エルフ族という事もあってMP量は豊富、そう簡単に消耗する様子を見せないバーバラだったが、彼女の様子は徐々に衰弱していく様子がうかがえた。
「は、離しなさい」
「抵抗すればいいだろう」
「くっ、そんなことが無意味な事くらいわかってる」
「ならば、離せばいいだろう」
「本当にこれ以上話すことは無い」
思いのほか根性のあるバーバラは、もう残り少ないMPだというのに限界ぎりぎりの状態で粘っていた。その精神力は強く、それは一般的なエルフに比べても一線を画したものに思えた。
だが、MPが枯渇することによる意識の混乱は確実に訪れており、彼女はわずかに震えながら今にも気を失いそうになっていた。
これ以上やると、目的の情報も聞き出せない状況になりかねないが、俺はこいつが情報屋として信頼に足りる相手かどうかをどうしても確かめる必要がある。
そうして、バーバラの意識が飛んでしまう直前に俺は手を放してやると、彼女はカウンターにもたれかかりながら息を切らして意識を保っていた。
「いい根性してるな、長命のエルフ族なだけはある」
「あんたは、聞いていた通りずいぶんと乱暴者だね」
「悪いことをした、せめてもの情けで俺の支払額を倍にしてやる」
「そ、それはありがたい」
「だが、それだけMPが減ったら立っているのもやっとだろう、返してやる」
「そ、そう」
そうして、俺は再びバーバラの手に触れ、MPを返してやった。だが、その瞬間に彼女は血相を変えて俺につかみかかって来た。
「あ、あんたこれは」
「あぁ、MPは返してやるがただのMPじゃねぇ、こいつには幻覚作用を加えてある」
「や、やめろぉっ」
やめろと言われても、外道だと思われようとも、全てはこいつから情報を得るためだ。それに、俺にここまでさせるほど固い口のこいつは情報屋として十分に信頼できる相手なのは間違いない。
そうして、MPで満たされていくバーバラの表情は徐々に恍惚になっていき、完全にとろけた表情を見せ始めた頃合いで、俺は尋問を始めることにした。
「バーバラ、オリジンについて隠していることがあるな?」
「はい、あります」
「答えろ?」
「ヴォルト王国の王宮に牢獄」
「王宮に牢獄、それがなんだ?」
「そこにオリジンが投獄されているという情報があります」
「なるほど、他には」
「ありません、オリジンについて話せることはこれですべてになります」
「本当か?」
「本当です」
「・・・・・・そうか」
ここまでした上で更に手に入れられない情報となると、もう俺に出来る事は無い。となると、王宮の牢獄へと向かいオリジンを回収しに行くのが先決か。
それにしても第二王子め、自分の家の牢獄にオリジンをかくまっているとか、一体どういうつもりだこの野郎。
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