第51話「うれしい打診」

 コンコンッ。


「はーい?」


 ガチャ。


「おや、トウドウどの、ごきげんよう」

「ありゃ、ゴーズさん。数日ぶりです」


 宿でミールとだべっていると、来客あり。

 もちろん上記のとおりゴーズさんだ。


「今日はどうしました? あ、例の件です?」

「はい?……れ、例の件がどれかわかりかねますし、心当たりが多すぎてさっぱりですが──多分違います」


 ありゃま。

 違ったのか──てっきり、商品が欲しいのかと。

 

 あ、じゃあもしかしてゴーズさんまで、苦情を言いに?


「違いますって。そうじゃなくて、ギルドの件、聞きましたよ」

「あ、あぁ、その件ですか」


 そういえばギルドの所属できなくなったって話があったな。


「えぇ、その件で少しご相談が──」

「はぁ、まぁ、なんでしょう?」


 立ち話もなんなので部屋に招く。

 中ではミールが一生懸命あやとりをしていた。


「ミールなんか飲み物入れてくれ」

「あーい」


 チョコチョコ歩いたミールが、軍用キャンティーンから水をカップにそそいて、粉末レモネードを溶く。


「れもねーど、です」

「はい、ありがとう────おや、さわやかな味ですね」

「洗剤味っすよ」


 よく飲めるな、それ。

 Cレーションについてくるけど、藤堂さん嫌いなので全部ミールにあげている。


「──いや! これも売れますよ。……っと、そうそうその件もありましたね」

「はぁ?」


 コホンッ。


「トウドウどの、ギルドに入りませんか?」

「え?」


 この人なに言ってんの??


「あ、いえいえ!……そんな不審者を見る目で見ないでくださいよ。ギルドはギルドでも冒険者ギルドではありませんよ?!──商人ギルドです」

「はぁ、商人ギルド──」


 …………あぁ!

 商人のギルドね!


「はいはい! わかりました完全に理解しました!」

「……本当です?」


 もちろんっす!


 今思い出したけど、ルルには商人ギルドを勧められてたわ!

 そして、ギルドっていったら、 なにも冒険者ギルドだけじゃないわな。


「そうですそうです。しかもトウドウ殿の方向性にかなり近いのでは──?」

「たしかに……。なんだかんだで俺って平和主義者ですしねー」


「は、はぁ……?」


 いや、そんな胡乱な目でみないでくださいよ!

 先日のは不可抗力ですから!!


「ま、まぁ、それはさておき、冒険者ギルドのようにちゃんとランクもあがりますし、魔物素材も引き取ったりしますよ。……ぶっちゃけ、冒険者ギルドよりもレートは高いくらいです」

「なんと──……え? じゃあ、なんでみんなそっちにもっていかないんです?」

「そりゃあもちろん、商人ギルドの敷居が高いからですよ。信用もこっちのほうが断然ありますしね」


 そりゃまぁそうだろう。


 剣をふりまわしてなんぼのもんじゃーい! の冒険者より、お金をやり取りする商人のほうが安全だし、信用できるってもんだ。

 だけど、それならその分、皆魔物素材を商人ギルドに持ち込んだほうがいいのでは? というか、それができるならそもそも冒険者ギルドいらなくない?


「はっはっは。それはもちろん──商人ギルドに入るには試験がいるからですよ。そして、ギルド員以外は基本的に取引をうけつけておりません」

「あー。そういう……って、試験です? 俺、なんの勉強もしてないですよ」

「なんのなんの。お話していてわかりますが、トウドウどのは高等学問をおさめていらしゃいますよね? 文字もよく理解してらっしゃる」

「まーそれは……」


 一応大卒だしね。

 あと、文字は転生ボーナスで──ごにょごにょ。


「ならばまず落ちることはありませんよ。私の推薦があればすぐに試験を受けれますよ、──あぁ、もちろん下駄をはかせるわけにはいきませんので、正規の試験となりますが」


 ふむ。

 これはありかもしれないな──。ルルも身分証代わりになると言っていたし、受けるだけ受けるのはありだろう。


 なんだなんだあって、この前のギルド試験のときとかに採取した素材まだ売ってないし、

 旅の途中で手にした素材とかもあるしなー。


「よし! 受けてみます!」

「おぉ! それはよかった──トウドウどのが町を追い出されると聞いて、急いで手配したのですよ」


 なんと、すでに受ける前提で話が進んでいたのか。

 さすが商人。話がはやい。


「では──こちらへ。道々色々説明させてもらいますね」

「ぜひとも──あ、ミール少し、留守番たのむ」


「んー」


 あやとりに夢中になっているミールを残すと、藤堂とゴーズさんと連れ立って商人ギルドに向かうのだった。

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