第22話「グリフォンスレイヤー」
「すごいすごーい!」
「トードーが風神様をたおしたー!」
「つよーい! トードーつよーい!」
はっはっは!
そうだろう、そうだろう!!
「まぁ、それほどでもあるけどなー」
わっはっは!
戦車の上で仁王だつ藤堂。
子供たちに
そして、子供たちはグリフォンの死骸に足をかけて輪になって踊る踊る~。
「ちょーしにのってるー」
「……うるせーよ」
のらせろよ。
ったく。
一人だけ戦車に残り、重機関銃の上に顎を載せているのはミール。
その水を差してくれたダークエルフの少女──ミールのヘルメットをツンッ、とずらしてやる。
「わぷっ!」
ずれてヘルメットを、あわあわと直す姿がかわいい。
「……ま、さっきは助かったよ」
「にー♪」
ふん……。
ミールの悪戯っぽい笑みに柄にもなく照れる藤堂。
まぁ、それよりも。
「……ところで、今更だけど本当によかったのか? あれでも、
わっしょいわっしょい♪
風神さまこと、グリフォンの上で踊るエルフの少年少女にそう尋ねる藤堂。
しかし、予想に反してきょとんとした顔。
「んー? だいじょーぶだよー」
どこが大丈夫なんだよ。
神様ちゃうんかーい。
「うん! へいきー♪」
「だからどこが平気やねん。普通、神様殺したら怒られないか?」
「風神様なら、いっぱいいるから大丈夫なのー」
あー、いっぱいいるのか。
どーりで……。
「……ん? 今なんて?」
「だいじょーぶー?」「へいきー?」
いや、そのあと。
「「いっぱいいるー?」」
そう
「……え? 風神って、一体じゃないの……?」
「ちがうよー」
「いっぱいだよー」
「群れでいるよー♪」
「「「──山の向こうにいっぱいいるよー♪」」」
そう子供たちが言ったが最後──。
キュルァァァアアアアアア!
ギュルァァァアアアアアアア!
「あ、あー……群れ、ってこういう」
その言葉通り、森の向こうから聞き覚えのある雄たけびが聞こえてきた。
そして頭上を覆う無数の影──。
「じーざす……」
※ ※ ※
思わず空に向かって祈る藤堂。
だが、そこにいたのは天に増します我らの神ではなく、エルフの守り神様こと「風神様」の……
「わーいっぱいきたー」
「縄張りとりにきたー」
「風神様いっぱ~い♪」
「「「戦争だー♪」」」
……あッほぉ!
はしゃいでる場合か!
「ったく、そういうことは最初に言えよ!」
風神ことグリフォンの生態も、その数も!
その辺一番大事な情報だろうが!
「ったく──こりゃまずいぞ!」
この上空で行われている乱痴気騒ぎは、おそらく縄張り争いだ。
あれだけの強力な個体が死んだのだから、その広大な縄張りを奪おうと、他のグリフォンが越境してくるのは想像に難くない。
……いや、それにしたって数が多いし、何より早い!
「くそっ。何匹いるんだよ!」
「えーっと、」
「
「「「──いっぱいいっぱい~♪」」」
……マ●イ族か!
3よりうえの数がない部族か! お前らは──!
「あーもういい。わかったから、遊んでないでさっさと森の奥に逃げるぞ!」
おそらく、あの巨体では森まで入れまい。
だから、エルフがこんな物騒なところに住んでいるのだ。
慌てて装備品を回収すると、未だにはしゃぎ回ってる子供たちを一人ずつポンポン戦車に押し込んでいく。
「えー、もうちょっとー」
「きゃはは、投げて投げてー」
遊びじゃねーんだよ!
「……ええから、はよ乗れ!」
「えー、もう行くのー?」
「あー。トードー、お肉もってこーお肉ー」
「鳥肉おいしーよー♪」
──
神様とちゃうんかーい!!
「つーか、半分は獅子だぞ!」
「「「焼けば同じー♪」」」
……こぉの肉食エルフどもがー!!
「あぁ、もうわかったわかった! あとで解体すっから、今は、逃げるぞ!」
子供たちがせがむので、しゃーなしとばかりに、グリフォンの死骸の大きな塊を探すと、戦車の牽引ワイヤーにひっかけ引きずっていくことに。
まぁ、血抜きにはなるか?
「全員乗ったな?」
「「「はーい♪」」」
「よーし、準備オーケィ!」
「ケツまくってにげんぞー!」
「「「
のりのりの子供たちを乗せて、戦車前進ッ!
目標──エルフの森!!
「──
キュラキュラキュラキュラ──!!
そうして、こうして、
風神様ことグリフォンを退けた藤堂は、子供たちの案内に従って森の奥へと踏み込んでいくのであった……。
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