第2話 ダンジョン創造



「ステータス、オープン!」


……だが、何も起きなかった。

ステータス画面が出ることも、俺の頭の中に例の女性の声が響くこともない。


「……あれ? 違ったか?」


もう一度、ステータスオープンとは別の唱え方をしようとした時、両手で抱えていたボーリングの球ほどの大きさの透明なダンジョンコアが、激しく点滅を繰り返した。


「な、何だっ?!」


俺が声を上げると、すぐに目の前に画面が現れ次のように書かれていた。


「……アホなことしてないで、さっさとダンジョンを創造するのじゃ!

ってぇ、ダンジョンコアには意思があるのかっ?!」


驚いたことを口にすると、それに反応したようにダンジョンコアは激しく点滅する。

そして、目の前に現れていた画面の言葉が変わった。


「……何を当たり前のことを。とにかく唱えよ! 『ダンジョン創造』とな、か。

本当に意思があるんだ……。

【ダンジョン創造】」


俺の言葉に反応して返事をしている時点で、ダンジョンコアには意思があるものと判断した俺は、書かれていた言葉を唱える。

すると、今まで目の前に現れていた画面より二回りほど大きな画面が出現。


そしてそこには、ステータス画面かと思えるような項目が記されていた……。


「…………これって、ダンジョンを造ることができる操作項目か?

まず、フィールド型か迷宮型か?

……他にも選択肢はあるみたいだけど、今はこの二つだけが選択可能か。

ん~、後々というより、俺がどんなダンジョンにするかで選択したほうがいいな……」


俺は、どんなダンジョンを造りたいのか?

漫画やアニメ、ラノベやゲームに必ず出てくるダンジョン。

それは、入ったものに試練や困難を与え、魔物と戦わせている。


他にもいろいろな宝物が出てきたり、話によっては悪魔や魔王がいたり。

でもそういう戦いがメインのダンジョンって、ほぼほぼ攻略されて、ダンジョンマスターが痛い目を見るんだよな~。


「……やっぱり、戦いメインにするのはなしだな。

俺の命が危ない。

というわけで、迷宮型はなし!

ここはフィールド型で、ダンジョン内に街とか村を造るイメージでいこう!」


設定項目のフィールド型を選択。

すると、フィールドの広さの選択項目が出現。


「……いろいろな広さがあるけど、このDPってダンジョンポイントのことか?

今どれくらいあるのか……って、この右上の数字か。

一……十……百……千……万。十万と二千ポイントか……」


画面右上に表示されていたDPの数字に注目すると、別画面が現れて見やすくなった。


「……これは見やすい。

えっと、十万二千ポイントの内訳が、初期ポイントが二千で、異世界人がダンジョンマスターになったことでの特別ポイントで十万か。

……ということは俺以外だと、もらえるポイントが違ったわけか……」


特別ポイントに関する、表のようなものがあった。

そこには、誰がダンジョンマスターになるかでもらえるポイントが決まっていた。


小型動物、大型動物に小型の魔物、大型の魔物。

人族から、獣人、エルフ、ドワーフと様々な種族の後、異世界人に神族なんてものもあった。


「……はぁ? いや、宇宙人って……」


もっともポイントが高かったダンジョンマスターに、思わずツッコミを入れてしまう。

宇宙人はないだろう……。

しかも、一億ポイントって……。意外と少ないんじゃないの?



気を取り直して、DPの稼ぎ方という項目があったので見ようとすると、手元のダンジョンコアが再び激しく点滅する。

そして、最初の画面のコメントが変わった。


「……えっと、『いつまでかかっているのだ! 早くダンジョンを造って中に入れ!

ここは安全地帯ではないのだぞ!!』か。

確かにそうだよな……」


というわけで、DPの詳細は後にして、ダンジョンの設定画面に戻る。


「フィールド型の広さといっても、DPとの交換で決まるみたいだ。

それに、細かい広さを指定もできるけど、ここは大体の対象別で選んだほうがいいか。

え~っと、最小が……六畳の部屋?」


……俺の実家の部屋と、同じ大きさだな。

イヤちょっと待て。もしかしてこれって、俺の知識から情報を得ているのか?


「……そう考えれば、このドーム球場とか、○○空港とか、この異世界にはない対象だからな……。

まあ、分かりやすいからいいか。

細かいことを気にするのは、安全地帯でするとしましょう」


というわけで、俺はドーム球場を選択。

階層は一階層だけにすることを考えていたので、安全を考えて広さをとったわけだ。

まあ、後で変更できると注意書きもあったから、今はこの広さで。


「交換ポイントは、三千八百ポイントか。

特別ポイントを貰ってなければ全然足りずに、選択肢が減っていたな……」


しみじみと、異世界人だった自分のありがたみを感じながら、DPを払うことに同意すると別の画面が現れる。

そしてそこには、土地固定か空間固定かの選択肢が出ていた。


「土地固定? 空間固定?

……これって、この場所にダンジョンを固定するかどうかってことなのか?

ん~、俺は日本に帰りたいから、ここは空間固定の方か?」


この選択はよく分からなかったが、この場所に固定されるのはまずいとの判断から空間固定を選択。

すると、両手で抱えていたダンジョンコアが強い光を放つ!


「ま、眩しいっ!」


俺は、目を思いっきり瞑ると顔を逸らした。

その直後、体が軽くなった感覚になったかと思ったら、地面が無くなって落ちる感覚が襲ってきた。


そしてすぐに、やわらかい毛のような地面に落ちた感覚になったのだ。



「んっ? んんっ?! な、何が起きて……」


薄っすらと目を開けると、さっきまで見えていた木々がない。

さらに俺は確かめようと、ゆっくり目を開けていって驚いた!


目の前に広がる景色は、さっきまでいた森の中ではなく、視界一面に草原が広がっていたのだ。

そして、やわらかい毛のような地面は草の地面だった……。


「これが、本当の草原なんだ……」


俺が草の地面をさわっていると、後ろから声をかけられた。


「どうじゃ? すごいじゃろう?」

「……え?」


顔を上げて後ろを振り返ると、そこには巫女装束を着た、俺と同じくらいの年齢の金髪美少女がいた……。






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