第53話 次から次へとピンチになるのなんでなんや? こんな主人公補正いらないンゴ
「どうやったらここから出られるんや? なんかあるやろ、絶対何か方法があるはずや!」
そう思わんと正気を保てんかった。
こんな地獄で(地獄みたいな場所ちゃうで。ここほんまもんの地獄なんやで!?)冷静でいられる方がおかしいンゴ。
せやのに、クソイケメンは力なく首を振るだけで、完全に諦めモード全開やった。
「もしそれが分かるならこんなことになってない」
「……チッ……イライラするわ、お前のそのツラ!」
「私の顔にイラついても状況は変わらないよ」
「その諦めきったツラがムカつくんや! 前向きに考えろや!」
前の……っていうかクソイケメンにとっては「昔」ってほど前か。
その頃のクソイケメンなら、もっとプライドが高くて、アークたそを自分なら落とせるとか思っとるくらい前向きやったはずや。
アークたそに対して傲慢なまでに突き進んどった。
でも、今は覇気がないんや。
数十年という年月と絶望が、人間をここまで変えてしまうんか。
歳を取り続けて、ただ死を待つことすら許されない日々が、かつてのクソイケメンの心をへし折ってしまったんやろうか。
「ワイは諦めへんぞ! アークたそに授かったこの超パワー魔法があれば、こんな暗闇一発でぶち抜けるはずや!」
ワイは右手に魔力を集中させたんや。
魔法の練習なんて全くしとらんかったし、最近は全く使ってなかったけどこの身体に
アークたそから貰った無限の魔力が、身体の中を熱く駆け巡る感じがしとる。
自分でも引くくらいのエネルギーが渦巻いとるのが分かるんや。
「これならどうや! 最大出力……ファイアボールやあああ!!!」
シュゴォオオオオオ!!!
という爆音と共に、超巨大な火球が空へ向かって放たれたんや。
一瞬、あたりが昼間みたいに真っ白に明るくなった。
逃げ惑う町民たちの青白い顔や、崩れた建物の残骸が鮮明に浮かび上がったンゴ。
でも……――――
ワイの放った魔法は、ある程度の高度まで達した瞬間、まるで闇に吸い込まれるように「スッ」と消えてしまった。
爆発も衝撃も何もない。
ただ、エネルギーが何かに飲み込まれただけやった。
「なっ……!? 消えた……!?」
ワイの渾身のファイアーボールやで!?
これで駄目なんか!?
「神の結界は外からの力も中からの力も全て吸収し、循環させているようだ。圧倒的な魔法でもどうにもならないか……」
クソイケメンがガッカリしたみたいに言い放つ。
クッソ、マジでムカつくンゴ!!
「ドラゴン、とりあえず上の方に飛んでクレメンス! どこかに穴があるかもしれんやろ!?」
「そんな簡単なものだとは思えないがな」
「ええからやってクレメンス!!」
ワイはドラゴンを急かし、再び上空へと舞い上がったんや。
やっぱり不安定なドラゴンの背中にしがみついてるのつらいわ。
翼の動きに合わせて上下するのが気持ち悪くなるンゴ。
それから数分、数十分……ドラゴンは翼を羽ばたかせ、闇の天井を目指して飛び続けたんやけど………でも、どれだけ飛んでも出られんかった。
ただ、どこまで行っても濃密な闇が続くだけや。
ひとまずは諦めてクソイケメンのところに戻ったら、クソイケメンはめっちゃ冷めた目でこっちみとった。
「そんな単純なことで出られるなら、とっくに皆やっているよ」
マジで諦めモード全開のクソイケメンにカチンを来たンゴ。
「お前もボケっと見てないで手伝えや! 元白聖盟のトップなら、なんか魔法的な知識とかあるやろがい!」
ワイはクソイケメンに一発拳を叩き込むのをぐっとこらえたんや。
こんなアークたそのストーカーになんで駄目だしばっかされんといかんねん。
お前もなんかしろや!
「……手伝うことなんてないよ。この『理』を無視して、空間そのものを捻じ曲げでもしなければ、外に出ることなど不可能だ」
空間を捻じ曲げる……?
…………
………………!!
せや!! ピンと来たンゴ!!
「ワイ、空間転移の魔法使えるんやったわ!」
宇宙に放り出されたトラウマで封印しとったけど、あれこそがまさに「空間を捻じ曲げる」魔法やんけ!
ワイがそう言うと、クソイケメンが今日一番の驚き顔でワイを見た。
「空間転移!? まさか……あれは神にしか使えない最高位の魔法だぞ? それを、君が……?」
露骨に馬鹿にされて腹立つけど、ワイは胸を張ってクソイケメンにどや顔したンゴ。
「せや! アークたそがしてるの見てたら、なんとなくやり方わかったんや。でもな、座標? みたいなんが上手く指定できんくて、この前も宇宙に放り出されてえらい目にあったわ。あやうく『ワイ、宇宙に死す』ってなるところやったで」
ワイが自慢げに話すと、クソイケメンは顔を引き攣らせて糾弾してきたんや。
「馬鹿か君は!! 座標指定が不完全な空間転移など、ただの自殺行為だぞ! 転移の座標が不確かなまま発動なんてしたら身体がバラバラになり、肉塊となって次元の狭間に散るのがオチだ!」
ファッ……!?
そうなん!?
死ぬほど痛そうやんけ!!!
『ナビゲーター:「せやで。イッチは不老不死で『絶対に壊れない身体』になっとるから無事やっただけや。フツーの人間があんな無茶苦茶な発動方法したら、一瞬でひき肉一丁あがりやったな。草」』
それならやる前に教えろやボケナビィ!!!
危うくワイがひき肉になるところやったわ!!
でも、空間転移魔法でなんとかここから出られそうや。
それにかけるしかない。
……いや、待てよ。
ワイは不死身やからええけど、もしここで転移魔法を使ったら、一緒にいるクソイケメンとドラゴンはどうなるんや?
ワイの魔法で転移するにしても、座標がデタラメやったら、こいつらだけバラバラのひき肉になってまうんとちゃうか……?
「ど、どないしよ……ワイ1人なら出られるけど、お前ら置き去りになってしまうんか……?」
そんなことを悩んでいた、その時やった。
ズズズズズ……ッ!!
地響きのような音が、闇の下の方から聞こえてきたんや。
それはドラゴンの羽ばたきよりも重く、数えきれないほどの足音が重なったような不気味な響きやった。
「……まずいね。君が派手に魔法なんて放つから、彼らが集まって来てしまったようだ」
クソイケメンの声が、今まで以上に震えている。
「彼らって……まさか、ここの住人たちか? 人喰いの!?」
「神が来たとでも思われたのだろうな。新しい『食糧』が降ってきたか、あるいはこの苦しみから救ってくれる神が降臨したのか……絶望の淵にいる彼らにとって、君の魔法の光は毒々しいほど眩しすぎたのだろう」
冷静に言っとるクソイケメンも流石になんか危機感みたいなのを感じ取るようやった。
『ナビゲーター:「イッチ、周りを見てみ。ここの『人喰いの不死者』たちが、迫ってきとるで。魔法ぶっ放すのは軽率な行動やったな、マジで」』
「ヒエッ……!!?」
闇の下の方を見ると、うっすらとした鬼火に照らされて、無数の「影」がこっちに押し寄せてるのが見えた。
その瞳は爛々と輝き、口からはヨダレを垂らし、全員がワイを……ワイという「極上の肉」を見つめとる。
アークたその力を継ぐものとして見られとるというよりは、『肉』としかみられてへんような気がしたンゴ。
「ぎゃああああああああ!! 来るなあああ!! 寄るなああああ!!」
ワイはパニックになっとった。
ワイは食われるんか?
あ、でもワイの身体って傷つかないんやった。
でも流石に人間に噛みつかれるのは嫌やで!
「早くしろ! 食べられる前に、あのデタラメでいいから転移魔法を出すんだ!」
「でもお前らバラバラになるかもしれんのやぞ!?」
「私が座標指定を補助する! 失敗したとしても、ここにいて食われ続けるよりはマシだ!!」
地響きのような唸り声が、すぐそこまで迫っている。
不老不死同士の「食い合い」に巻き込まれるなんて、絶対に御免や!!
ワイはパニックになりながら、デタラメな魔力を練り始めるしかなかったンゴ。
ほんまどうなっても知らんで!!?
【悲報】ワイ、最強の魔法を使おうとしたら、味方をひき肉にするリスクしかなくて詰む?
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