第43話 【決死】ついに最後の祠に潜入




 次の町――――白聖盟どもが祠を厳重に囲んどる地点に到着した翌日。

 宿に滞在してワイはアークたそを待っとった。

 ワイは宿の外に出るなって言われてたから大人しく待ってた。

 アークたそがいない間、爆死カウントがちょっと進んだんやがアークたそはすぐに帰って来たからワイの爆死カウントはすぐに止まったんや。


 ほんま、アークたそがおらんかったらワイは今頃、まだ森の中で虫を食ってたかもしれん。

 めちゃくちゃ恐ろしい話やで。

 変なところでチェックポイント更新されるし……ひど過ぎる話や。


 そんなことをしみじみ考えてると、アークたそが偵察をした結果を淡々とワイに告げてきたんや。


「祠の突破は真太郎1人では無理っぽいね。あれだけ配置されていたらすぐ囲まれる」


 アークたその声はいつも通り温度がなくて無表情や。

 そんな怖い事を淡々と言われても、ワイは何の実感もわかないンゴ。


「いやー……そらワイも窓の外見てて思っとったで。なんやあの警備、アホほど人とか色々おったやん」

「まぁ、祠を壊しまわってる私たちを待ってるんだろうね」

「魔王の力をそぐために尽力しとるのに、なんで邪魔するねん」

「魔王がどうのこうのっていうよりは、祠を破壊できる人に興味があるんだと思うよ。この世界のどの種族も祠には殆ど入れないようになってるしね。祠に入りたいけど入れない鬱憤みたいなの溜まってるんでしょ」


 なんやねんそれ。

 野次馬みたいなもんやんけ。

 キッショ!

 マジでキッショ!


 ワイとアークたそは真剣なんやで!?

 見世物やない!

 ほんま野次馬腹立つわ。


 アークたそは窓際に立ったまま、祠の方の遠い方向を見ていたンゴ。

 飴を舐めながらあらゆる種族が集まっている祠を見ているようやった。


 ワイはベッドに腰かけて足をぷらぷら揺らしながら、ぼそっと呟いた。


「あのクソイケメンはまだアークたそのこと探してるんやろか? ほんましつこい奴は嫌やなぁ」

「いるんじゃないの、しつこい人は嫌いだよ。本当に気持ち悪いよね」


 口に出してることは結構棘があるけど、別に声色は変わらなかった。

 ほんまにアークたそは表情読まれへんな。

 全然困ってるようにも嫌がってるようにも見えへん。


「……どうするんや? 正面から行くのは確実に無理やろうし」


 アークたそは髪の毛をぐしゃぐしゃと乱しながら、面倒そうにしとる。


「仕方ないね……ここは私が視線を誘導するよ。派手にやれば視線は全部そっちに向くだろうから。真太郎はその隙に走り抜けて」


 ファッ……!?


 アークたそはサラッと言ったけど、内容はめちゃくちゃヤバかったような気がするンゴ……

 そんな大味な作戦で上手くいくんか……?


「え……アークたそがおとりするんか……?」

「そうだね。それで祠が壊せるならそれでいいよ。本当は姿を現したくないんだけど」

「いや、でもアークたそ1人であの数は……」


 いくらアークたそが激ツヨでも、あの数の相手は難しいんやないか。

 だって強い奴らがわざわざ集まってるんやろ?

 いくらなんでも危ないんちゃうか。


「そうだね、だから長くは持たせられないかな。数で押されたらちょっと不利かも。早めに祠へ走り込んで。できるだけ早く。全力で」


 アークたそは淡々と語り、椅子に腰を下ろしたんや。

 長い髪がゆらりと揺れ、細い指が机の上に静かに置かれたのを見てると、作戦のことなんて全部頭から抜けてしまうンゴ。

 アークたそは手が綺麗やな……アークたそはその綺麗な手を汚すんか……?


 ワイはそれでも構わへん。

 アークたそがなんでも、ワイはアークたそについていくんや。


「……アークたそ、ワイはどこまでもアークたそについていくで」

「そうだね、私を信じて祠を壊してきて」


 そう言っとるけど、優しい感じはまったくないんや。

 淡々とそう言ってる中にじんわり優しさをワイは感じる。


 だってそうやろ!?

 優しくなかったらもっと滅茶苦茶な要求をしてくるはずや。

 声色に感情は読み取れへんけど、優しいことには変わりないンゴ。


 アークたそは最後にぽつりと言った。


「……さて、行きましょうかね。準備できてる?」

「もちろんやで!」


 ほんま、惚れるでこの無表情美人。

 もうなんか、全部上手くいくような気がしてきたンゴ。

 アークたそにかかれば、なんでも上手くいくんや!




 ***




 深夜。

 白聖盟とその他の連中が祠周辺をぎっしりと包囲しとる中にワイはアークたそと別行動で入り込んだんや。


 祭りでもやっとるんかと思うほどの量がいて、かなり歩きづらいレベルや。

 この中全力で走れるんか?

 フィジカル的にワイの方が負けてへんか?


 くっそ……野次馬ども、道を開けるんやで!

 ワイの使命を邪魔するなや!


 クソイケメンと同じく、狂った思想の信者ばっかりや。


 アークたそは人目につかない場所で待機しとる。

 ワイが祠のかなり近くに行くまで待っててくれとるんや。

 こんなたくさんひしめき合ってるのに、アークたそはワイの場所わかるんやろか?


 いや、そんなこと考えたらあかん。

 ワイは無条件にアークたそを信じるんや。

 それが今回の祠の試練の条件でもある。


 ワイが大分祠の近くまで来たとき、空気が変わったんや。

 文字通り空気が“変わった”。


 空気が震え、風が吹き返し、足元の砂利がカタカタ鳴り始める。

 地震と台風が一気に来てる感じやった。

 絶対殺すマンな空気がその場を支配する。


 それから辺りが白く飛ぶほどの閃光が夜空をまるで昼間みたいに照らしたんや。

 これがアークたその「走れ」の合図!


「お、おかのした……!」


 白聖盟の兵も、他のすべての種族が一斉にアークたその方向へ向いた。


「敵襲だ!!」

「魔法反応! 相当強いぞ!」

「囲め! 全員で囲め!!」


 予想以上の数や。

 アークたその言ってた通りや、あれは長くは持たへん。


「……ワイ、行くしかないやん!!」


 足がすくみそうやった。

 数百人単位でうじゃうじゃおる。

 ワイはまっすぐ祠の方に向かって走り始めたんや。


 かなり怖いけどアークが囮を引き受けてくれてる以上……


「行くしかないんじゃあああああ!!」


 ワイは全力で走った。

 必死で走ったけど、息はすぐ切れるし、足はガクガクする。

 途中、巡回の兵に見つかって叫ばれた。


「不審者だ!! 捕らえろ!!」

「くっそ!!」


 槍を持った兵が左右から迫ってきたんや。

 絶対捕まる距離や――と思った瞬間。


 背後で目を開けていられないほど眩しい閃光が走った。


 アークたその魔法や。


 兵が爆風に吹き飛ばされ、ワイの進路がまっすぐに開く。

 鮮やかな魔法にワイは一瞬見とれた。


 アークたその方を見ると、全然ひとりで余裕そうやった。

 まるでプランクトンが象を相手にしてるみたいな感じや。

 絶対にアークたそは負けへん。


「あ、ありがとうアークたそ……!」


 ワイは息切れしながらも懸命に走ったんや。

 汗が目に入り、視界がぐちゃぐちゃになっても、とにかく走った。


「なんだ!? 止めろ!! 祠に入らせるな!!」

「全員で押さえ込め!!」


 さらに兵が集まって、ワイが入るルートに雪崩のように流れ込んできて――――


 でも、また衝撃波が横から走って、兵たちを簡単に吹っ飛ばした。

 アークたそが遠距離から援護しとるんや。

 凄い、凄いでアークたそ!

 流石ワイの嫁やで!


「うおおおおお!!」


 祠の入り口はもう少しや。

 喉が焼けるみたいに熱いし、足は千切れそうや。

 けど止まったら終わりやで!


 最後のダッシュで、ワイは石造りの祠の門へと身体を滑り込ませた。


 祠の中へ――――ワイは飛び込むことに成功したんや。




 ***




 祠の中に入った瞬間、外の大騒ぎが嘘のように静寂が広がっとった。

 外の様子も見えなくなったし、ワイの爆死カウントも開始されたンゴ。


 ワイは全力で走ったから足も痛いし、横っ腹も痛い。

 息切れして息が整うまでその場で少し休んだんや。


『ナビゲーター:「ちょっとは運動しろやデブ」』

「今したやんけ!」

『ナビゲーター:「継続してやれって意味や」』

「継続して何かができたらニートにならんで」


 とはいえ、アークたそのお願いを叶えるのは気分がいいンゴ。

 これは自発的に継続できてるやで。


「ふぅ……よっしゃ」


 行くやで!


 外のアークたそがワイを待ってるんや。

 早めに片づけなあかん。

 ワイの嫁が危険な目に合ってるんや。

 ワイも身体張るで!


 ワイは暗闇を進んでいった。


 祠の中は奥へ奥へと続く一本道で、壁には古い文字みたいなもんが刻まれて、床には結構な骨が転がっていた。

 白く乾いた骨や。

 骨だけじゃなくて、腐って行ってる途中の死体もあった。


 ここにそもそも入れないんやないんか?

 結構な量の死体っぽいのがあるけど……


 誰のもんかは分からんけど不気味や。


 最奥っぽい部屋に辿り着いた瞬間、ワイは息を呑んだんや。


 部屋の中央に、大量の骨が山のように積み上がっとった。


 人間の骨か、それとも別の種族の骨か……白っぽいのもあるけど黒ずんどる骨もあるし、大量に積みあがるようになって巨大な塊になっとる。


 その中心に、猫背のじいさんが座っとった。

 白い髭が地面につくほど長くて、髪も白い。


 なんや、このじいさん……何者なんや。


 今まで祠の中で誰かに会ったことはなかったンゴ。

 これが初めての対面や。


 じいさんはゆっくりと顔を上げて、ワイを見た。


「……また神に縋る者が入って来たか」


 ラスボスみたいなもんか!?

 ワイは戦闘スキルなんてないやで!?


 ワイは恐る恐るじいさんに聞いた。


「だ、誰やねんあんた……」


 じいさんは骨の山を撫でながら、ぼそりと続けた。


「神の導きか。滑稽だ。たとえ何を選ぼうとも……人は過ちを繰り返す」


 何を言っとるかさっぱりわからん。

 日本語でおk。


 なんやこのジジイ……めっちゃヤバいやつやんけ……!!


 じいさんになっても厨二廟とか、ワイよりヤバいで。

 テンプレな異世界人っぽいけど、そんなテンプレ言われてもワイにはわからへんねん。


 で……このじいさんのいる奥にいかなアカンぽい。

 無視して通ってもええか?

 イベント強制スキップや。

 ワイはじいさんの話を聞いてられる程暇やないで。


「私の話を聞かなければ奥にはいけないぞ、若者よ」


 ファッ……!?


【謎】ついにこれがエンカ不可避のラスボスなんか……?



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