第41話 次の祠はなんなんやろか?




 ストーカー女が逃げ去ってからしばらく、ワイはずっとベッドに座ったままやった。

 世の中のイケメンはこんな思いをしとるんか?

 それとも、この世界が女をそうさせとるんか!?

 なにはともあれ恐ろしすぎる体験をして、女に対する意識がワイの中でちょっと変わったわ。


 イケメンならなんでもええんか。

 節操がないわ。

 節操っていうか、あれはもう性犯罪やんけ!


 アークたそはベッドの端に腰かけて、飴を転がしながら遠くを見つめて考え事してるようやった。

 相変わらず何考えてるか分からん顔してて、そうういうとこがまたカッコええんやけど、何も読み取れないとちょっと不安にもなるンゴ。


「アークたそ……次の祠にそろそろ行くんか」


 ワイがそう言うと、アークたそは長い髪の間から視線だけ向けてきた。


「うん。明日か明後日にはいこうかなと思ってる。この町にもう用はないしね」


 アークたその声は冷たいわけでも優しいわけでもなかったんや。

 でも完全にワイが感じとるだけなんやけど、その自然な声が妙に安心感ある。

 やっぱり好きや。

 絶対ワイはアークたそと添い遂げるんや!


『ナビゲーター:「錯覚や」』

「そんなことないし」

『ナビゲーター:「レスバ負けてて草」』


 負けてへんし!


 そんなワイを置き去りにアークたそは淡々と話を続けた。


「白聖盟は残ってる祠のところに集まってるだろうし、最後はますます大変そう」

「最後の最後に……面倒やな」

「もうあの缶じゃ追い払えないだろうね。何の対策もしてない訳じゃないだろうし、面倒だね」


 絶対ワイらが来るって踏んで、罠とか包囲とか準備しとるに違いない。

 あのアークたそのストーカーのクソイケメンもいるはずや。

 ほんまムカつくンゴ。


 なんでアークたそを付け回しとるんや。

 どうして魔王の力を削ぐために回ってるのに妨害されなアカンねん。

 ワイらは正義を執行してるんやで?

 そしたらあいつらは悪ってことやん。


 日本にいたときも宗教は胡散臭いと思っとったんや。

 情弱につけこんで金をとるその態度は気に食わんかった。

 ワイは宗教なんかにびた一文払わんで!

 情弱に怪しい壺とか売りつけてくるんとちゃうんか?


『ナビゲーター:「脳内のアップデートされてなくて草」』

「最近は違うんか?」


 そもそも、どの程度の規模の組織なのか分からん。

 やっぱり893みたいな感じで、上澄みは相当に金を巻き上げて潤ってるんか!?


 ……でも、あのクソイケメンは完全に現場に出とるけど、あいつよりも上がいるんか?


 ワイは悪の四天王みたいなのを思い浮かべる。


「アークたそ……その、白聖盟って、どれくらいおるんや? そんなワラワラ集まるんか?」

「集まるとしても200前後かな。全部じゃないだろうけど」

「に、にひゃく……!」


 そんなに集まったらどうなってしまうんや!?


 でも、アークたそが本気を出せばそのくらい簡単に追い払えるんやないか?

 ワイが安価で危険なことせんでも……時間とか止められるし、それじゃアカンのか?


 そう思うけど、ワイは曲がりなりにも男や。

 ワイがアークたその為に何かしたいって気持ちもある。

 アークたそが強いのはええけど、それに頼り切りになるのはなんか嫌や。

 ワイが活躍したいんや!

 スローライフもええけど、ワイは活躍したい!


 でも、ワイに何かできるんやろうか。

 アカン、考えてたら頭が痛くなってくるンゴ。


『ナビゲーター:「頭の中1MBかよ」』

「考え事は苦手なんや!」


 頭脳労働はアークたその方が得意や。

 ワイは頭脳労働担当とちゃう。

 ……かといって、戦闘要員でもないし……なんなんやろか。


 マスコットキャラみたいな?


『ナビゲーター:「可愛い要素ないやろ。認識バグッとるで」』

「ワイはワイで頑張ってるし!」

『ナビゲーター:「いいように使われとるの間違いやろ」』

「それでも必要とされてるんやで!」


 少なくとも、ワイは祠を壊す担当や。

 アークたそができんって言っとるしな、だからそれがワイの使命やで。

 他に目的もないし、ワイはアークたそに尽くすンゴ。


「次の祠ってどんなんやろか」

「次は入るまでが大変かもね。祠を中心に町ができてるから」

「そんなことがあるんか!?」


 今まで完全に森の中とかだったのに、随分様子が違うんやな。

 聖地みたいなもんか?

 やっぱり宗教は理解できないンゴ。


「力の絶対信仰が特に根強い町だから、真太郎が外に出たら危ないよ」

「ヒエッ……」

「あそこは白聖盟以外の宗教徒がせめぎ合ってるからね。神聖連合とかリュミエとかの信者もいるし、地獄も近いし」


 ファッ!!?!?

 地獄ってなんや!!?


 情報量が多すぎて処理しきれんかった。

 でも最後の“地獄”だけが頭の中に残ったんや。


「地獄ってなんや……? 異空間に続いてるんか?」

「不老不死の人たちが暮らしてるんだよ」


 ファッ!? 不老不死!!?


 不老不死なんて全人類の夢やんけ。

 なんで地獄だなんて言われてるんや、どう考えても天国やん。

 なんで地獄なんて呼ばれてるんや?


 ワイは頭の中で情報を整理しながらアークたそに質問しようかと思ったけど、アークたそは「白聖盟は本当に面倒だなぁ」とつぶやいたので、ワイの思考は完全にそれにつられた。


「あ、そういや……あのクソイケメン、なんでアークたそのこと探し回っとるんや?」


 ワイは口にした瞬間、胃がキューッとなったンゴ。

 あいつを思い出すのも嫌なんや。

 本当にいい思い出がひとつもないわ。


「……力があると、いろんな奴に付け回されるんだよ」

「はえ~……大変やな」


 弱いワイがストーカーされたくらいやし、美女で強いアークたそは結構しつこく付きまとわれても納得や。

 ワイやってイケメンになっただけでこんな怖い目にあって納得いかないわ。


「でもアークたそは付け回されても全部やっつけられるんちゃうの?」

「関わりたくないよ。真太郎もわざわざ面倒なことに関わりたくないでしょ」


 どうやろな、即Sでレスバしてると楽しいけどな。

 アークたそは争いを好まない優しい性格なんやなぁ……


「次の祠自体は中に入れたらそんなに難しくないと思うんだけどね。次の試練では信じる心が試されるんだ」

「信じる心?」

「真太郎が私の事信じてくれたらすぐに突破できるよ」


 ワイはそれを聞いて、胸を張って即答した。


「もちろんやで! ワイはアークたその事信じとるからな! なら楽勝やで!」

『ナビゲーター:「脳死で草」』

「それでええんや!」

「次の祠の中ではいろいろ言われるけど、全部嘘なんだよ。だから自分を信じて突き進めばいいんだけど、真太郎は自分を信じるっていうよりも私を信じてくれた方がいいかなと思う」


 アークたその言う通りや、ワイは自信がない。

 この世界のこともなんもわからんし、さっき“地獄”とか言ってたけど、それもなにもわからへん。

 この世界ではワイの身を守ってくれるアークたそが正義や。


「おかのした。ワイはアークたそを無条件に信じてるで」

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」


 キュン!!


 ワイみたいなのから信じられたらアークたそは嬉しいんや!

 それだけで嬉しいのか。

 特別な何かをせんくてもアークたそに喜んでもらえるなら儲けもんやな。


「大変だったみたいだし、もう休みなよ。変なのが入ってこない様に結界を張るから。逃げてった女はまずこないだろうけど、他に変なのが入ってくるかもしれないからね」

「心強いやで!」

「じゃ、私は部屋に戻るから」


 飴を咥えたまま立ち上がって、飴の入った袋を持ってワイの部屋から出て行ったンゴ。


 ついに、最後の祠か……


 不安な気持ちもあったけど、ワイはアークたそを信じてるから問題ないで。


 ワイ、これが終わったらアークたそと結婚するんや……


『ナビゲーター:「完全に死亡フラグで草」』


【悲報】この世界の情報量多すぎてワイの頭では理解できないwww



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