第7話 — 声の魔法と、夜更かしの約束

彼女のプロフィールが“個人のもの”だと気づいた瞬間、僕は好奇心に包まれた。


アイコンには、小さな子どもの写真。


一瞬、「もしかして、年下なのかも…?」と疑った。


慎重に、彼女がどんな人なのかを探ることにした。


投稿をすべてチェックした。


日付、雰囲気の変化、彼女が惹かれているもの——


写真の数は多く、どれも印象的だった。


「よく生きてるな…」と、心の中でつぶやいた。


そして、正直に言えば——


彼女は、僕が想像していた通り、美しかった。


外見にこだわるつもりはなかったけれど、


やっぱり、顔を見てみたいと思った。


年齢も、僕と同じくらいに見えた。


後に知ることになるけれど、僕たちは誕生日が1週間違いだった。


彼女が“著者アカウント”で僕を探さなくなったので、


僕は、自分の個人インスタから彼女にメッセージを送った。


「(。。。)、こんにちは!


個人のインスタでフォローしてくれたのは、メグミさんですよね?笑


急に現れてびっくりしましたよ!


話したくなったら、インスタでもXでも気軽にメッセージしてね。


またね。」


送信した後、時計を見た。


「今は、きっと寝てる時間だな…」


僕にとっては夜だった。


彼女からの返信を待ちながら、眠りについた。


そして、彼女からメッセージが届いたのは、彼女の午後。


「こんにちは (。。。)です!


今、そちらは夜ですよね?」


絵文字がたくさん使われていて、彼女らしい文体だった。


でも、初期の頃よりも落ち着いていた。


僕は嬉しくなって、すぐに返事をした。


「こんばんは、(。。。)!


そうそう、こっちは夜だったよ〜


いつ返事が来るか分からなかったから、待ちながら寝ちゃった。笑


でも、メッセージ見てすごく嬉しかったよ!ありがとう。」


その後、僕はいつものように執筆を続けながら、


彼女との出会いの場であるTwitterを確認した。


彼女は、インスタのメッセージから2時間後、


Twitterにもメッセージをくれていた。


「また話したい」と思ってくれているのかもしれない。


そう思うと、心が高鳴った。


でも、彼女にとっては深夜。


僕は執筆に集中しようとしたけれど、


SNSのタブは閉じなかった。


彼女からの返信が来るかもしれない——


そう思って、何度も確認した。


そして、僕の夜が深まった頃、


彼女からメッセージが届いた。


「おはよう。


も今は朝だよ!


待っててくれたの!?


ごめんね。


こちらこそ、ありがとう。」


そのメッセージを見た瞬間、僕はすぐに返事をした。


「もちろん待ってたよ〜!


おはよう、かわい子ちゃん。


メッセージくれて嬉しい!ありがとう!


今日も素敵な一日になりますように。」


彼女の顔を知った今、少しだけ試してみた。


軽い褒め言葉を送ってみたけれど、


その時は、特に反応はなかった。


数時間後、またすれ違い。


彼女からのメッセージは、昼頃だった。


「色々と忙しくて、また遅くなっちゃった!お待たせ!


もう寝ちゃったかなー??」


でも、その日は遅くまで起きていたので、


すぐに返事をした。


「まだ起きてるよ〜


でも、無理しないでね!やることに集中して大丈夫。


今日はちょっと夜更かしする予定だから、こっちはまだまだ起きてるよ。」


その後、数時間の会話が続いた。


離れていた1週間が、まるでなかったかのようだった。


彼女はすぐにこう言った。


「おお


やること今は何も無いの〜


歌うくらい?何か、リクエストあるかしら?


の(。。。)が歌うよ 笑


夜更かししてるのー?


風邪とか、気をつけてね。」


僕はこう返した。


「新時代(Ado)聴きたい〜


(。。。)の歌声でぜひ!


こっちは寒いけど、うちの地域は


極寒も猛暑も慣れてるよ〜 笑


夜更かし仲間だね」


そして、彼女は歌の音声を送ってくれた。


アカペラに自信がないと言っていたけれど、


僕はすでに彼女の声に魅了されていた。


その夜、僕は執筆を続けながら、


彼女の歌声を聴いていた。


忘れられない夜だった。


そして、僕は素直にこう伝えた。


「そろそろ寝るね。今日の分、書き終えたよ。


(。。。)の声を聴きながら、ちょっとだけ恋に落ちちゃったかも…ふふ!


アリエルが聴いたら、きっと嫉妬するよ!


今日は一緒に過ごせて嬉しかった!ありがとう。


ずっと応援してるよ!」


彼女は、いつものように絵文字たっぷりで返してくれた。


「ありがとう。おやすみなさい!


また明日ね!」


その翌日、僕は少し距離を置こうかと考えた。


長く話しすぎて、彼女の時間を奪ってしまったかもしれない。


でも、僕の夜が来ると——


彼女からメッセージが届いた。


「おはよう!忙しいかしら?


(。。。)今日も元気だよ!」


また、彼女の一日が始まった。


そして、僕の心もまた動き出した。


この日、僕が知ることになるのは——


出会った頃から抱いていた疑問の答えだった。

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