極端な思想は、夜のせいにして。

毎日毎日眠れない。人はどれだけ寄り添っても私の心の中まで入れないし、私は私の心の中に入りたいと思わせるようなミステリアスな人格者ではない。白いキャミソールワンピースを着て海辺で遠くを見つめ、大きなものを失った人間にしかできない、悲しみを含んだ笑みをするような、そんな儚さはない。むしろ伸び切ったクラスTシャツをまとい、毎晩毎晩snsを凝視してタイムパフォーマンスとドーパミンを愛してる人に向けられた短い動画や、縄文時代から言われてきたであろう世の真理と呼ばれるような軽いポエムを読んで、おすすめ機能にも舐められたものだなと思い腹を立てるような人間だ。こんな奴の心の内なんてたかが知れてる。

眠れないと恋人に言ったら、ずっと家にいるから疲れてないだけでは？と言ったことを言われた。3年も付き合っているとこんな事になるのか。言われた時は心底絶望した。愛しの彼女が胸を痛めているかもしれない、僕の気の利いた一言で彼女に希望を与えたい、という発想に至らないとは、とんだ間抜けな恋人だ。でも、別に言われたい言葉なんてないんだ。救われる言葉も求めていない。そう思っている。でも間抜けだと思ったということは，求めているということなのかもしれない。寄り添われてもむず痒いだけなのに。分かっている。

むしろ今は、こんなことをはっきり言えるなんて、さすが3年付き合ってるだけあるな、とも思う。逆張りしかしてこなかった人生だ。何を言われたって、でもだって、ああでこうで、などとごにょごにょごにょごにょ能書きをするだけだ。意味なんてない。意味がないなんて素晴らしい事じゃないか？いいやそんな事ない。意味がないんじゃなくて，何も変わらない。変わらないことが無意味かどうかは、誰にも決めさせない。

知りたくないのだろうか？わたしがどんなことを考えて，どんな事に苦しんで、その苦しみはどんな過去からくるのかを。彼は気にならないのだろうか。わたしは気になる。なぜ聞いてくれないんだろう。聞かれても、明快で最適な答えなんて出せない。もし出せたとしても、それは非常に平凡でありきたりで縄文時代から言われているやうなことしか言えない。

彼はここまで分かっているから、聞いてくれないのだろうか。だとしたら完璧ボーイだ。

愛されなきゃ人は育たないから。