『異世界転生』って、ある意味、転職に近いのかもなぁ?とか考えると、やっぱり簡単には出来ないモノだと納得しながら会社に着くと、やっぱり異世界転生したくなるのは悪い事なのか?

麻田 雄

第1話


 6月8日 午前7:00


 けたたましく鳴り響く目覚まし時計。


 布団から手だけを出し、本体上部の鳴動停止ボタンを押す。

 そしてまた、寝入る。


 ――5分後に目覚まし機能再始動。


 手慣れた動きで再び停止。



 同様の作業を三度行い、満を持して起床。

 今度はちゃんとスヌーズ機能も停止させた。


 ――うん。割とギリギリだな。



 トーストを、いつもはやや焦げるまで焼き上げるのだが、今日は少し焦げ目が出来る程度で取り出した。

 仕方の無い事だがマーガリンの伸びが悪い。

 相方はいつものインスタントコーヒー。


 朝食はこれだけで十分。

 目玉焼きなど作る時間は無い。


 朝食を終え、身支度を整えて、家を出た。


 一日の出鼻をくじかれてしまった?為、少し忙しくなってしまった。

 このいつもと同じ、だが少し違う日常……少し期待していたのだが……。



 これでは異世界転生は起きないか……。



  ◇  ◇  ◇



 おそらく異世界転生とは、意図的に行ったものでは起きないのだろう?と、推測している。


 例えば転生しようと思い、階段から転げ落ちてみたりとか、崖から飛び降りてみたりとか……。

 いや、その事象自体が起きない理由という訳では無く、自らの意思が介入してしまう事がNGだと考えているのだ。

 つまり、無意識に階段を踏み外してしまったとか、崖が崩れて落ちてしまったとか、意識外の出来事ならばOKなのではないか?。

 ……もちろん、ソースは全く無い。

 ついでに、出来なかった場合、普通に死んでしまうか、かなり痛そうなので全然OKでは無い。

 故に、そういう過激な行動は実行出来ない。



 そんな事を駅のホームで電車を待ちながら考えていた。

 そして、この場所で電車を待つ度に思う。


 他人の害意によって起きた事象ならばどうなのか?

 ここで今、突き落とされたりしたらっ……?



 そんな事を考えていると、電車は到着。

 難なくそれに乗り込む。



  ◇  ◇  ◇



 電車内で揺れ動く中吊り広告を、読むでは無く眺めていた。


 もし、ここで未曽有の大災害が起きた場合、ひょっとしたら電車ごと……。



 などと考えていると、電車は目的の駅に到着した。

 混雑する人波に揉まれながら、ホームへと降り立つ。



  ◇  ◇  ◇



 出鼻をくじかれたにもかかわらず、特に遅れるでもなく会社へ到着。

 何故、こんなにも普通の結果が得られてしまうのだろう?

 もしかしたらこれは、歴史の強制力のようなものなのだろうか?



  ◇  ◇  ◇



 社内のロッカールームへ入る。

 いつも通り、自分のロッカーから仕事道具を取り出し、面倒だが装備する。



 フルプレートメイルと、バスターソード。



  ◇  ◇  ◇


 装備を整えた後、会社屋上へと向かい、大空を飛び交う竜の群れを眺めた。



 『あー、異世界転生したい』





      完

    

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『異世界転生』って、ある意味、転職に近いのかもなぁ?とか考えると、やっぱり簡単には出来ないモノだと納得しながら会社に着くと、やっぱり異世界転生したくなるのは悪い事なのか? 麻田 雄 @mada000

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