第44話 アリスと極魔≪下≫

 アリスは龍の上から落下しながら、魔力を体全体へと廻らしていく。その過程で魔力を練り始める。

 透き通るように流れ、何もかもを破壊する強い魔力。

 地面へと衝突する直前に、練った魔力を風の魔法として解き放つ。

 風はアリスの体をふわりと包み込み、落下のダメージをなくして地面へと降ろす。

 アリスはそれを行う途中で思考をまとめていた。


(魔力を一か所に集中させて放つのは惜しい感じはあった。理由はないが、感覚でそう思った。考えてみると、覚醒するような一撃なんてものは、そんな簡単に放てるはずもない。そう言うものを放つのならば、限界を超えるような技だろう。限界...魔力の限界。魔力伝達効率か。自分の魔力伝達効率を上回った一撃)


 アリスは屍龍の攻撃を避けながら、神威とルクスの所へと行く。

 

「二人とも、重ね重ね悪いんだけどもう一回お願い。分かった気がする」


 アリスの可能性に賭けたのか、信頼なのか何も言わずに二人は攻撃を続ける。

 アリスはそれに感謝しながら、魔力をレイピアへと溜める。


(イメージとしては、今までの魔力で1.2から1.5倍くらいの威力を出す。でも要はどうやって出すかだ...)


 アリスがあれやこれやと考えている時、鈴と空天は楽しそうにその情景を見ていた。

 

「ねぇ、空天。気づいたようだヨ、彼女」

「あぁ、そのようだ。魔力の流れを見るにほとんど結論まで行ってる。後は方法が分からないんだろう」

「ここからならもう教えてもいいと思うネ」

「あぁ、此処からは知らないと無理だろうしな」


 そう言うと鈴は屍龍へと飛んでいく。


「アリス!!よぉく見とくいいヨ、今からヒントになる一撃を見せるね」


 そう言うと鈴は右手に魔力を集中させる。

 その魔力を魔法に変換する時、ほぼロスをゼロにするように変換する。

 


「〈火爪ひづめ〉」


 右手には黄金の炎の大きな爪が生まれる。それは、龍の左腹をえぐり取る。

 鈴の右手から黄金の炎は消え去る。すると、手は火によって焼けていた。


「まぁ、そんな簡単には成功しないけど...まあ、手本としてはそこそこか」


 そう言うと、鈴は右手に炎を纏わす。その炎は火傷をみるみると快復させていく。

 

「分かった?やり方」


 アリスはコクリと頷く。それを見ると鈴は笑みを返し、空天の所へと戻っていく。

 アリスは、それを見ながらさっき起こったことについて整理し、自分でやってみる。

 魔力をレイピアに流して溜めて練る。その魔力を魔法に変換する時、一部だけに魔力を手中させる。

 レイピア全体じゃない、レイピアの先端部分にだけ集中させる。

 雷の魔力だから、レイピアは壊れないだろう。

 だから、体に及ぼす影響も考えないで魔法ぶっ放す。


「雷光一閃...じゃ違うか、なら〈極雷〉」


 極魔と雷を合わせて、極雷。

 その雷は腹の一部をえぐり、龍の体を痺れさす。

 反動で、アリスの右手は全体的に雷が走り所々火傷をおい、動かないほどにしびれる。

 アリスは右腕をぶらりとさせていて、目を光らせている。


「ハハッ!一回で成功したヨ!!」


 魔力の流れを、威力を、なによりその光る眼を見て確信する。

 

「あ..あぁああ..あ...うぁ.....うぁぁぁっぁぁaaaaaaa!!!!!!!」


 アリスは左手で頭をつかみながら、身をよじらせながらしゃがんでいく。

 魔力が乱れ、魔力をただ放出させている状態だった。

 アリスはずっとうめき声を上げ続ける。心配になり、神威とルクスは駆けよろうとする。


「来るな!!」


 空天がアリスと神威達の間へと入る。そして、神威とルクスを持っていた棒で殴り飛ばす。


「思った以上にやばかったネ。まさか、極魔でここまでになるとはネ」

「あぁ、逸材だ」


 空天はそう言うと、持っていた棒をアリスに当てる。


「これで魔術式が乱れて、魔法は使えない」


 それからしばらくアリスはうめき声をあげていたが、それがやんだ。


「ふぅ、終わりネ」

「あぁ、普通ならば終わりだ」


 アリスの魔力は脈打っていた。ドクン、ドクンと右腕へと集まる。

 これはやばいやつだと判断したのか、空天は右腕を強く押さえつける。魔力で強化した力で。

 そして、アリスは右腕に集めた魔力を爆散させる。そのまま、何もなかったかのように立ち上がる。

 光属性の魔法で右腕を修復する。

 神威はそんなアリスを見て、恐怖を感じた。

 そして、今のアリスが今までのアリスとは思えなかった。

 今のアリスは冷たく儚く、そして恐怖を感じる。


「はぁ、起きたと思ったらひどい仕打ちじゃないか」


 声は変わらないが、喋り方とかの細かなことが違うように感じた。

 

「お前は、誰でござる」


 気が付けば、声が漏れていた。


「誰か?そうだなぁ...鏡のアリス、とでも言おうか」


 極魔によって覚醒した者によっては、脳がやられて当分使い物にならなくこともあるし、第二の人格が代わりに出ることもあるらしい。

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