間章その壱
閑話その壱 前編 ジェスターと戦の最後
ジェスターが起きるとステラが倒れており、フラマ、ルーク、ルクスの聖者三人がいる。
嗚呼、ついてない。ジェスターはそう思った。
もうすぐ寝ているアリスも起きるだろう。
故に、四対一の形となってしまい、完全に不利だ。だから、ステラを回収して逃げることにした。
「ハハ、ハハハハハハ!賭けに失敗したか!」
そう言いながらも、とても愉快そうにジェスターは笑った。
ジェスターはその四対一の構図で逃げ切れるかどうかわからない。だが、きっと逃げれたら楽しそうだと思い、笑いがこみあげてくる。
しかもそれが、世界創造の賭けに敗れた結果だ。賭博師であるジェスターにとっては、面白い以外の何物でもない。
「さぁ、やろうか。第二ラウンドだ!!〈賽〉」
そう言いながら、愚者のカードを賽子へと変化させて頭上へと投げた。
出た目は、「肆」だ。効果は身体能力強化と自己再生だ。
ジェスターが今最も欲していた目だ。別に、「伍」や「碌」でもよかったのだが、やはり「肆」がこの場合では、一番手っ取り早い。
ジェスターは心の中でガッツポーズを浮かばせると、そのままステラのもとへ全速力で駆けた。
周りにいる聖者共もジェスターの目的に気づき、ルークが魔法を発動させた。
魔法を消滅、弱体化させる無属性魔法〈アルバ〉によって、ジェスターの動きは遅くなってしまう。
ジェスターはステラのいる部屋の隅に行き、自分の周りに数本のナイフを投げる。
そのナイフには〈爆〉のエンチャントがされており、床に刺さると同時にナイフは爆ぜる。
それによって、ジェスターのいる教会の一部が崩壊し、今にも落ちようとしていた。
ジェスターの狙いは最初は、ステラを持って身体能力強化された体で飛び降りようとしていたのだ。
ジェスターは〈アルバ〉をくらった瞬間に、足場ごと落として行方をくらます気でいた。
故に、これはジェスターの作戦通りの結果である。
だが、予想外だったのが、ルクスが最後の力を振り絞って〈火塵魔剣〉を振るったことだ。
目に見えてもう魔力がほとんどないのに、振るった。だが、ジェスターにとってそれは面白いことでしかなかった。
(嗚呼、これがあるから賭けはやめられない。人の心程、賭けやすくも、賭けにくいものはない。だが、この賭けは俺の勝ちだ)
ジェスターは余裕を持っていた。
己にすべてを焼き払い灰にする斬撃が向かってきているというのに。
それもそのはず、彼には見えていたのだ。己の最高の相棒である【切り裂き】ジャックが来ているのを。
ジャックは斬撃とジェスターの間に割り込んで、斬撃を切り裂いた。
「はぁぁぁぁぁ、間に合った。ったく、分霊よこしたってのにこのざまかよ」
「すまんすまん、相手をなめてたわ」
ジェスターは実際に油断していた。
油断の一つがアリスの存在だ。まさか、この戦争中にあそこまで覚醒するとは思ってもいなかった。覚醒前であれば、この戦いは負けていなかった。
次にルクスの存在。彼が来ることもソロモンの指輪を手に入れることもあまり想定していなかった。可能性の一つとして考えてはいたが、それは一つの賭けとして、ジェスターは来ないに賭けていた。
最後にルークの存在。まさか、無属性魔法を身に着けるとは思いもよらなかった。あれさえなければ、大分苦労せず終わっただろう。
そもそも、ステラが負けることもなかっただろう。
だが、ステラが負けたということは、ルークには今現在地点で英雄級以上の素質があるということになる。それも、堕天したてでだ。
もし、あれが力をつけたならば、勇者級も夢ではなくなってくるかもしれない。
ジェスターが戦いのことについて考えている間にも、ジェスター達を乗した瓦礫は地面へと猛スピードで落下していっていた。
ジェスターは帽子から薄い緑色の魔石を取り出すと、それを勢いよく地面へと投げた。
地面にその魔石が砕けると同時に、優しく包み込むような風が発生する。
その風によて、落下のダメージを抑えて、その上、砂ぼこりで煙幕まで張った。
「さぁ、逃げるか」
そう言って、彼らは人のいない物陰へと急いで逃げたのだった。
この戦はジェスターの勝ちといってもいいだろう。目的であるステラは回収し、ジェスターも死していない。
故に、勝利。
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