第22話 アリスと愚者
ウロボロス教団の中でタロットカードの二つ名を持つ幹部共は、特別な魔法を使えるという。
ジェスターが、今使っている魔法がその特別かは分からないが、まだ、手札はあるだろう。
彼が今見せている手札の情報は、少なくとも五つ。
一つ、最初に見た時にやっていた、帽子からハトを出す芸。あれは、帽子に収納魔法が付与された魔道具か、彼自身がそのような魔法を持っているのだろう。
二つ、これも最初に会った時に見たナイフ。魔法を切り裂くナイフ、スラッシャー・マロールム。
三つ、エンチャント。彼のスラッシャー・マロールムは彼がエンチャントしたものと言っていた。
四つ、指パッチンを発動条件とした爆破。これは、エンチャントによるものだと考えることもできる。
五つ、ウロボロス幹部の持つ、特殊な魔法。
これらを意識しながら戦うしかない。否、隠された何かがある可能性もある。
「さぁ、やろうか?楽しい
「えぇ、始めましょうか〈雷竜〉」
雷の竜をジェスターへと放つ。
ジェスターは、それを避けるか、スラッシャー・マロールムで切り裂くだろうとアリスは考える。ならば、その隙に、別の攻撃を繰り出せばいい。
「〈風脚〉」
ジェスターに聞こえないように小さな声で唱える。そして、ジェスターの後ろに回り込もうと、駆け始める。
ジェスターはコートの中に手を入れる...何かを出す気なのだろうか?
「〈雷竜〉〈雷竜〉〈雷竜〉〈雷竜〉」
後ろに回り込みながら、〈雷竜〉をあらゆる角度から放つ。
「気づいていないとでも?」
ジェスターはコートの中から、銃を取り出した。
その銃は、拳程度の大きさで、リボルバー式だった。
それを、自身周辺の床に四発、撃った。その銃弾四発は、丁度〈雷竜〉の進行方向だった。
「〈
そう唱えると銃弾は、天所に突き刺さる程度の岩の柱を作り出す。
その岩の柱は〈雷竜〉を防いだ。
ジェスターは、土属性まで使った...土と雷は相性悪いから、アリスの勝率は下がっていく。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
ジェスターは、無造作に銃をコートに入れながら、アリスに問いをかける。
「お前は、どうやってハーメルンを殺した?いや、戦ったか?」
「さぁ?どうだと思う?」
アリスはとぼける。向こうには、どんな情報でもできるだけ与えたくはない。どんな情報が致命傷たり得るかは分からない。
ジェスターは右手を、手のひらサイズの水晶を持つように前に出す。
「...そうか。じゃあ、あとで聞くとでもしようか。遊んであげてもいいが、さっさと終わらせよう〈
賽―それぞれに、六までの点が打ってある六面体。よく、ばくちに使われる物。
ジェスターが唱えると同時に、手のひらに一枚のカードが出現する。
そのカードには、太陽と旅人が描かれている様で、下には「The Fool」と書かれていた。
The Fool―愚者のことである。
そのカードは、六面体の賽子へと変化する。ジェスターは、賽子を投げるように手を上げる。賽子は、宙で回る。
そして、次第に止まった。賽子は「参」と文字に変化し、空気になるように消えた。
「参か...はずれだな」
はずれ。六面の賽子。賭博。あぁ、出る目によって魔法が変わるのだろう。
そして、「参」はハズレ。だが、これは今時点だからかもしれないから、一概にハズレとは断言しにくい。
けれども、他の魔法を使わなければ負ける。けれども、他に魔法なんてない。つんでないか?
「どうした?策がもうないか?」
確かにそうだ。もう、策はない。だから、何も言えない。
「無言も答えだよ」
きっとそれは、こちらを見透かした一言だったのだろう。
「本当になんで君はここに来たんだい?」
あぁ、確かにアリスは役立たずだっただろう。
でも、きっとあるはずだ。
「私がここに来たのは...私にしかできないことがあると思ったから!」
「詭弁だな。お前にしかできないこと?さぁ、何があった?」
ここにきてアリスにしかできないことなんてものはなかった。いや、
「貴方の足止めぐらいならできます」
「それは、お前じゃなくたっていいだろう?お前にしかできないことはないんだろう?」
そうかもしれない。なんだって、アリスにしかできないことなんてないのかもしれない。でも、それでも、しなきゃならないことだってある。アリスがする運命だったことだってあるはずだ。
本当に運命なのかもしれない。ウサギに誘われるまま来たのだから。
「ウサギに誘われて来たのだから、私がここにいるのは運命なんです」
「そうか...ハハ、ハハハハハ。そうか、そうか。お前もか、お前も神種か!!ならば、ここにいるのも納得だ」
神種。名の通りだと、神の種だ。
神になる者のことでも指すのだろうか?ならば、アリスは絶対に違うだろう。
そういえば、魔法あったな。神の如し魔法が。
「〈気違いの茶会〉」
ジェスターの時は停止する。
「〈雷獣〉」
雷の獣は、ジェスターの上半身を喰った。
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