第20話 決戦!魔王との最終対決

 ――

 魔王城への突入


 夜明け前の空は、まるで墨を流したように黒く、魔王城の上空には稲光が走っていた。

 俺たちは陥落した砦を抜け、いよいよ魔王城への道を進む。


「お兄さん……なんか、空気が重いよ」


 ルナちゃんが杖を抱え、不安そうに空を見上げた。

 彼女の言う通り、城に近づくにつれて胸の奥がずしんと重くなる。まるで邪悪な魔力が空気そのものを圧し潰しているみたいだ。


 ロイドさんは剣を抜き、険しい顔で前を見据えた。

「魔王が近い証拠です。ここから先は一瞬の油断が命取りになります」


「……分かった。俺はスープを切らさないようにする」


 鍋を握りしめ、俺は深呼吸した。ここまで来たら引き返せない。


 ――

 城門の戦い


 魔王城の門前には、黒い鎧に身を包んだ魔王軍の精鋭たちが整然と並んでいた。

 その中央に立つのは、漆黒の翼を持つ悪魔将軍。


「勇者よ……ここが貴様の墓場だ」


 地面を揺らすような声が響く。


 ルナちゃんが前に出て、俺の方を振り返った。

「お兄さん、スープ、準備できてる?」


「ああ。全員分、作ってある」


 スープを口にした兵士たちの体が光に包まれ、力と魔力があふれ出す。

 ロイドさんが剣を高く掲げた。


「行くぞ!」


 号令と同時に戦いが始まった。悪魔将軍の斧が火花を散らし、ルナちゃんの魔法が轟音を立てる。

 俺は後方で次々とスープを作り、兵士たちの体力と魔力を回復させた。


「くそっ、なんて力だ……!」


 悪魔将軍が押し込まれ、ついにロイドさんの剣がその鎧を貫いた。


「勇者……必ず、魔王が……!」


 言い残し、悪魔将軍は倒れた。


 ――

 魔王の間へ


 城内は不気味なほど静かだった。

 階段を登り、長い廊下を抜け、俺たちはついに巨大な扉の前に立った。


「この中に……魔王がいるのか」


 ルナちゃんがごくりと唾を飲む。


 ロイドさんは剣を構えたまま言った。

「勇者様、準備は万全ですか?」


「ああ。スープも、気持ちも、な」


 扉が重々しく開くと、広間の奥に漆黒の玉座が見えた。

 そこに座っていたのは――角と黒いマントを持つ、圧倒的な存在感を放つ魔王だった。


「人間どもよ……ここまで来るとはな」


 低く響く声に、空気が震える。


 ――

 魔王との対峙


 ルナちゃんが一歩前に出て杖を構えた。

「お兄さん、この人が魔王……だよね」


「そうだ」俺は鍋を握りしめ、前に出る。


 魔王の目が赤く光り、俺たちを見下ろした。

「勇者……お前のスープとやらの力、少しは楽しませてもらおう」


 ロイドさんが剣を構え、兵士たちが緊張で息を呑む。

 俺は深呼吸して言った。


「魔王……ここで終わらせる。お前の好きにはさせない」


 ルナちゃんがスープを飲み、体に光が宿る。

 ロイドさんも剣を強化し、兵士たちも次々と力を取り戻した。


 魔王の口元がわずかに歪む。

「面白い。ならば見せてみろ……お前たちの力とやらを!」


 次の瞬間、魔王の周囲から黒い稲妻が走り、広間全体が戦場へと変わった――。


 ――

 決戦の幕開け


 ルナちゃんが炎の魔法を放ち、ロイドさんが突撃する。

 俺は鍋を振るい、スープで全員を支援する。


「お兄さん、やるよ!」


「任せろ!」


 魔王の一撃は凄まじく、床が砕け、兵士たちが吹き飛ばされる。

 だがスープの力で立ち上がり、再び挑む姿に俺の胸は熱くなった。


「これが……俺たちの力だ!」


 魔王の笑い声が響く。


「面白い……人間ごときがここまでやるとはな!」


 だが戦いはまだ始まったばかり。

 最終決戦の火蓋が、ついに切って落とされた――。

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