第5話 王都に響くスープの噂
ゴブリンの巣をあっさり攻略した俺たちは、王都へ向かっていた。
「勇者様、王都はもうすぐです」
ロイドさんが馬車を操りながら振り返る。ルナちゃんは荷台の上で杖を抱えて熟睡中だ。スープ飲んで満腹になったらすぐ寝る。どんだけマイペースなんだよ。
「王都ってやっぱりすごいの?」
「ええ。商業と魔法の中心地であり、我が国の心臓部です。もちろん、国王陛下もそこに」
王様か。異世界ファンタジーといえば王様だよな。いよいよ俺の勇者らしい見せ場が来るわけだ。……たぶん。
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王都到着
王都の門が見えてきた瞬間、俺はちょっと感動してしまった。
高い城壁、白い石造りの建物、行き交う商人たち。まさに異世界って感じだ。
だが、俺たちが入城手続きをしていると――
「おい見ろよ! あれがゴブリンキングを倒した勇者様だって!」
「しかも、勇者様のスープを飲めば傷が一瞬で治るらしいぞ!」
「なんだそれ! 魔法よりすごいじゃないか!」
……おい待て。もう噂広まってるのか!?
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王都の人々が俺を指さしながら口々に噂してくる。
「スープで怪我が治るって本当か?」
「魔力まで回復するらしいぞ!」
「飲めばモテるって噂も……」
いや最後のは絶対誰かのデマだろ。
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王族からの召喚
そしてその日のうちに、俺たちは王城に招待された。
「勇者様、ようこそおいでくださいました」
現れたのは若い王女様だった。金色の髪、涼しげな青い瞳、気品あるドレス姿――まるで絵本の中のプリンセスだ。
「わたくし、王女セリーナと申します。ぜひその……スープをいただきたく」
王女様が恥ずかしそうに言う。
いや王族までスープ目当てかよ!? 勇者としての威厳がどんどん薄れていくんだけど!?
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仕方なく《料理》スキルで作った特製スープを差し出すと、王女様はおそるおそる一口――
「……おいしい……体が、温かい……」
彼女の頬がほんのり赤く染まり、その瞳が俺をまっすぐ見つめた。
「勇者様。この力、ぜひ王国のためにお貸しいただけませんか?」
うん。なんか急に物語がシリアスになってきたぞ。
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陰謀の影
その夜、王城の廊下を歩いていると、二人の貴族がひそひそ話をしているのを耳にした。
「勇者のスープだと? そんな力、魔王どころか我々の支配まで揺るがしかねん」
「いっそ……始末してしまった方がいいかもしれん」
おいおいおいおい。なんか物騒な計画が聞こえたんだけど!?
俺、異世界来てまだ一週間も経ってないんですけど!?
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こうして俺は、スープの力を巡る王国の陰謀に巻き込まれていくことになった――。
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