第四章 監視

「僕たちの中に……裏切り者がいる」

屋上で見つけた手紙に書かれた言葉は、再び僕たちの心を支配した。サークルルームに戻った僕たちは、誰も口を開こうとしなかった。互いの顔をまともに見ることができず、誰もがスマホやパソコンの画面ばかり見ていた。空気は重く、互いを疑う視線が飛び交っているのが痛いほど伝わってきた。

そんな重苦しい雰囲気の中、梨奈が静かに口を開いた。

「ねえ、このゲーム、私たちのスマホのデータを抜いてるんでしょ?だったら、私たちの会話も盗聴されてるのかな?」

彼女の言葉に、僕たちはハッとした。

「そんな、まさか……」

健太がそう呟くが、彼の顔は恐怖に染まっている。

「もし盗聴されてるなら、この部屋にいる僕たち以外の誰か、つまり……ゲームマスターが、僕たちの会話を全部聞いているってことだ」

悠真の言葉に、僕たちは再び絶望した。

その時、僕たちのヘッドセットから、奇妙なノイズが聞こえてきた。

まるで、誰かが耳元で囁いているような、不気味な声だった。

「……見ている……」

その声は、僕たち全員に聞こえた。

「このゲーム……私たちのことを、本当に見ているんだ……」

沙羅が震える声で言った。

僕たちは、恐怖に身を震わせ、互いの顔を見合わせた。しかし、その顔には、恐怖だけでなく、疑心暗鬼の表情が浮かんでいた。

その夜、僕たちはそれぞれの部屋で、ゲームを再開した。

ゲーム画面は、再び病棟の廊下だった。しかし、今回の廊下には、至る所に監視カメラが設置されていた。

監視カメラは、僕たちのアバターをじっと見つめている。まるで、現実の僕たちを監視しているかのように。

「このゲーム、本当に気持ち悪い……」

健太がそう言って、チャット欄に「ゲームマスター、出てこい!」と打ち込んだ。

しかし、返事はない。ただ、監視カメラの目が、僕たちをじっと見つめ続けるだけだった。

僕たちは、監視カメラから身を隠しながら、病棟を進んでいく。

しかし、監視カメラは、僕たちの動きをすべて把握しているようだった。

僕たちが隠れると、監視カメラは僕たちの隠れ場所を正確に捉え、僕たちを映し出す。

「このゲーム、僕たちの行動をすべて予測しているのか?」

悠真がそう言って、顔を険しくした。

「そんな、まさか……」

僕はそう呟くが、自分の行動がすべて筒抜けになっているような、気味の悪い感覚に襲われた。

その時、僕たちのヘッドセットから、また微かな声が聞こえてきた。

「……逃がさない……」

剛の声だった。

僕たちは、恐怖に身を震わせ、ゲーム内のチャット欄を見た。

しかし、剛の名前はなかった。ただ、僕たちの頭に、彼の声が直接響いているようだった。

翌日、僕たちは再びサークルルームに集まり、ゲームを再開した。

健太の顔は、昨晩の恐怖のせいで、青ざめていた。

「このゲーム、やばいって。もうやめようぜ」

健太がそう言って、ヘッドセットを外そうとしたが、ヘッドセットは、彼から外れなかった。

「おかしいな……なんで外れないんだよ!」

健太がそう言って、ヘッドセットを引っ張る。

しかし、ヘッドセットは、彼の頭に吸い付いたように外れない。

「このゲーム、僕たちを現実世界でも束縛しているのか……?」

悠真がそう言って、顔を険しくした。

その時、僕たちのスマホに、一斉にメッセージが届いた。

送信者は、不明。

メッセージには、こう書かれていた。

『ゲームを放棄する者は、この世界から消失する』

僕たちは、そのメッセージを見て、絶望に打ちひしがれた。

僕たちは、このゲームから逃げられない。

そして、このゲームをクリアするまで、この恐怖から解放されることはない。

僕たちは、再びゲームを進めることを決意した。

ゲーム画面は、僕たちを嘲笑うかのように、監視カメラの目が僕たちをじっと見つめている。

僕たちは、互いに疑心暗鬼になりながらも、ゲームを進めていく。

すると、僕たちのヘッドセットから、また微かな声が聞こえてきた。

「……嘘つき……」

それは、剛の声だった。

僕たちは、その声に導かれるように、ある部屋へと辿り着いた。

部屋には「独房」と書かれていた。

独房の中には、一つの手記が置かれていた。

手記には、こう書かれていた。

『私は、彼を信じていた。しかし、彼は、私を裏切った。

そして、私のすべてを奪った。

私は、彼を許さない。

そして、彼を、このゲームの監獄に永遠に閉じ込める』

「彼って誰だよ……。まさか、僕たちの中にいるのか?」

健太がそう呟く。

「このゲームマスター、僕たちの誰かを恨んでいるのか……?」

悠真がそう言って、僕たちを睨みつけた。

その時、梨奈が静かに言った。

「ねえ、この手記の筆跡、誰かに似てない?」

彼女の言葉に、僕たちは手記を覗き込んだ。

筆跡は、どこか見覚えがある。

「これ……剛の筆跡だ」

僕はそう言って、驚きを隠せない。

「まさか……このゲームマスターは、剛なのか……?」

健太が震える声で言った。

「いや、そんなはずない。剛は、僕たちのことを恨んでいるはずがない」

僕はそう言って、首を横に振った。

しかし、僕たちの心には、深い闇が刻み込まれた。

このゲームは、剛が僕たちを恨んで、作ったものなのか?

僕たちは、剛に殺されるのか?

僕たちは、恐怖と絶望に打ちひしがれ、ただただ、その手記を見つめ続けた。

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ナイトメア・エスケープ 星月夜 @kojimaru32

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