習作三題噺

J太郎

第1話 オフィス・指輪・笑い

──東京、オフィスビルの一室。


 男はキーボードを叩きながら、指輪を親指でカリカリと引っ掻いていた。

 上司はその仕草を見て、思わず笑いながら問いかける。


「君どうしちゃったの?今日は機嫌悪い?」

「ああ、抜けなくなっちゃって…」


 よく見ると男の指は確かに膨れ上がり、鬱血していた。

 上司はそれを見て苦悶の表情を浮かべる。


「うわっ! 病院行きなよ。腐っちゃうよ」

「いえ、壊したくないので大丈夫です。大事な人のモノなので」


 男の返答に対して、上司は疑問が浮かんだ。


「そう言えば君って結婚してたっけ?」


 男は笑いながら答えた。

 

「今日、一緒になったんです。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

習作三題噺 J太郎 @JJJJJJJJJ___

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る