9月10日 生きる目的(現代)

 人生いいことない。

 小学校の高学年で仲良かった友達と派手に喧嘩したのが人生の転落の始まりだったな。

 グループからハブられて、教室にいづらくなって、成績下がって、中学でも持ち直せずに落ちこぼれ。

 友達もできなくてボッチ。

 底辺高校いっても何も変わらない。

 ちょっといいなって思ってた男子は、さっさとスクールカースト上位の子と付き合い始めるし。

 夏休み終わって、……学校行くのが嫌になって、親に内緒でサボって。

 バレて、めちゃ怒られた。

 わたしの言いたいことなんて判ってくれない。

 どんなにつらいって訴えても、我儘だ、忍耐力がない、って罵られて。

 何のために高校に行かせてやってると思ってるんだ、だって。

 何のためなんて、わたしが判るわけないじゃない。

 そもそもわたしが生きてる意味なんて、ないんだよ。

 あぁ、消えたい。

「わたしなんかいなくなったらいいんでしょ!?」

 叫んで、飛び出した。

 外は、めちゃくちゃな天気。

 叩きつける雨と風。ごうごうとうなる音に足がすくんだ。

 けど、今家に戻るのは嫌だ。

 走って商店街に向かった。

 どこかで時間潰そうと思ってたけど、……臨時休業ばっか。

 そうだよね、台風来てたんだったね。

 ……もういいや。本当に消えちゃおう。

 って思った瞬間。

 バアァーン!!

 ものすごい音がして、目の前のマンホールが吹っ飛んだ!

 わぁ、すごい。下水が噴き出して水柱みたいになってる。

「あぶない!」

 男の人の声がして、大きな衝撃が体に加わった。

「大丈夫?」

 顔をあげると、男の人の顔が近くにあった。

 うわ、めちゃイケメン。

 マンホールが、ごぉんって地面に落ちた。

 わたしが立ってたところだ。

「怪我がなくてよかった。気をつけて帰るんだよ」

 ぼーっとしてるわたしを置いてその人は行ってしまった。

 わたしのこと、助けてくれたんだって気づいた時には、もうその人の影も見えない。

 ……消えちゃうの、もうちょっと後にしよう。

 あの人にあって、お礼を言うまでは、生きていよう。




 二百二十日

 立春から数えて220日目。立春が年によって変わるので二百二十日も変動する。

 台風がよく到来する時期であり、厄日として警戒されている。


 世界自殺予防デー

 自殺に対する注意・関心を喚起し、自殺防止のための行動を促進することを目的とした記念日。


 下水道の日

 二百二十日ごろに台風が到来することから、洪水対策の役割を担う下水道をアピールするのに最適な日であると制定された。

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