「なー、今日って何の日か知ってるか？」

　時々おふざけが過ぎる悪友がニヤニヤしながら聞いてきた。

「今日？　九月九日だよな」

　確か、なんとかの節句ってあったよな。んー、なんだっけ。

　考えてる俺の顔を見て悪友は「わかんないかなー？」とわざとらしく首を傾げた。

　こいつ、ふざけたヤツだけど歴史とかそういうのは詳しいからな。

　きちんと答えられない俺にマウント取る気か？

　よし、それならそっちじゃなくて、朝、ニュースでやってたこっちを答えよう。

「救急の日だな」

「え？　そうなのか？」

「確か、救急医療の理解を深めましょー的な感じの日」

　悪友が「ほんとーか？　語呂合わせがすぎるだろ」とか言って疑いのまなこでスマホ検索した。

「あ、ほんとだ。でまかせかと思った」

　なにげに俺に対する評価低くないか？

「てか、おまえは何の日を想定してたんだよ？」

「よくぞ聞いてくれました！　九月九日はな、男色の日だ！」

　だんしょく？

　暖色？　なんで九月九日？

「わかんねー？　男同士の愛を尊ぶ日だ」

　男色かよっ！？

「ってことで俺らも愛をはぐくもうぜー」

　肩を組んできた悪友に思わず腹パンしてしまった。

　ぐぉぉ、って熊みたいなうなり声をあげながら悪友は悶絶した。

「わりーな。救急の日だから許せ」

「救急医療を理解する日であって、増やしちゃいけないと思うんだ……」

　腹を押さえてうずくまる悪友の隣で、何の節句だったか検索した。

　あぁ、そっか、重陽の節句だったのか。

　あーすっきりした。

　重陽の節句

　陰陽思想では奇数は陽の数で、陽の極である９が重なるので重陽の節句という。

　旧暦では菊が咲くころなので「菊の節句」とも呼ばれる。

　菊の花を飾ったり菊酒を飲んだりして邪気を払い長寿を願う。

　江戸時代では日本でももうちょっとメジャーだったみたいだけれど近年ではあまり聞かないね。

　救急の日

　救急業務や救急医療について一般の人々の正しい理解と認識を深め、救急医療関係者の意識高揚を図ることが目的。

　救急車を呼びましょうという日ではないよ！

　男色の日

　諸説あり。

　９月９日が重陽の節句であることが関係していて、菊は隠喩的な男色の象徴であるからという説が有力？

　隠喩的なっていうけどさらに調べたらわりと直喩じゃないのかな（笑）。

　気になる方は調べてみてください。