時越えのふみ

@tokigoe_no_fumi

🌸第0首 難波津に咲くやこの花🌸

 白い息がまだ残る朝、

道のかたわらに、ぽつりと梅の花が咲いていた。

 冷たい風に揺れながらも、

小さな花びらは確かに春の色をまとっている。


 千年以上も前に詠まれた歌なのに、

その景色は今の私にも重なって見える。

 「冬は終わったよ。ここから始まるんだ」

そう声をかけられている気がした。


 歌を受け取るだけじゃなくて、

私たちだって未来に言葉を残せるんだ。

 百年先、千年先。

見知らぬ誰かが、

この瞬間を閉じ込めた言葉に出会い、心を震わせるかもしれない。


青春は一度きりじゃない。

花は、咲くときが来ればまた咲く。

大人になっても、今からでも。


 そうして扉がひらく。

百の歌をめぐる旅が、ここから始まる。

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