整服室殺人事件
兎霜ふう
第1話 殺人事件とハイエナ
男が殺された。
「
「五月蝿い、服部」
ばしりと鈍い一撃。重いデコピンを食らった僕はその場に蹲る。指をデコピンの形に保ったまま僕を見下ろすのは上司の神狩さんだ。ピシッと整ったカラスの羽色のパンツスーツに身を包んだ彼女は、フレームレス眼鏡の奥で冷たい眼差しをしている。
「手加減してくださいよ……」
ズキズキ痛む額をさすって立ち上がると、神狩さんは次の一撃の構えをした。
「お前が静かになるのが先だ」
凍てつくような彼女の視線。でも僕はめげない。このやり取りはいつものことなのだ。
「で、どうなんですか?」
尋ねれば、神狩さんははぁっとため息をついた。
「お前がそう言い出すだろうと思ったからな、取っておいた。さっさと行ってこい」
「はい!」
資料データが僕の端末に転送されたことを確認して、僕は部屋を飛び出した。
会社を出て無人タクシーを拾い、その中で資料を確認する。空中に映し出されたタッチパネルを次々操作した。
「
先日起こった殺人事件。それは、
買った服のデータを融合し、着替えることのできる
殺人はそのシステムをハッキングして行ったものだろう。被害者は首を絞められて窒息死していたとのことだ。射出するファイバーのサイズ形成データを弄り、首が絞まるほどきつく襟元を形成したのだ。
同様の手口での犯罪は他にも起きていて、警察は犯人を追って捜査しているとのこと。
僕の仕事は事件の流れを追うこと。そして、できれば犯人についての発見をすること。
申し遅れたが、僕の仕事は記者だ。五十年前に起こったデジタルビッグバン──情報化社会への革命──を生き残った、数少ない仕事である。
かたんと慣性を感じ、タクシーが停まった。支払いを済ませて降りる。
「よし、まずはここからだ」
僕が見上げたのは、事件が起きた
僕はフィッター
(続く)
整服室殺人事件 兎霜ふう @toshimo_fu
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