30、人間観察
「いやぁ、面白かったぁ!」
机上の玉が映し出す光景を見終えた私は、椅子に座りながら腕をゆっくりと上に伸ばす。自分でも驚くほどにのびのびとした声が出た。
「やっぱり人間って一人一人違うから、見てて飽きないね」
ある時は、ギター弾きの少年が幼馴染の少女に告白する様子を見て、胸がドキドキさせられた。
またある時は、牢獄に幽閉された父親の決断を見て、胸がギュッと締め付けられた。
人間の間で本や映画がなど流行る理由は、こういった感情に浸れるからなのだろう。
「まぁ、つい手を出しちゃったこともあったけどね」
ある時は、雀に奇怪な行動をさせることで、事故で亡くなってしまうはずの少女をその場から避けさせた。
またある時は、心優しき男に不老不死の飴玉を渡してやった。今となっては、あれは間違いだったなと反省しているけれど。
「さぁ、次はどんな人間が見られるかな?」
私は玉に手を翳す。
そして、玉は再び誰かの光景を映し出すのだった。
400字小説 案内なび @anai-navi
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