この兄、厄介につき~実は溺愛されてたなんて聞いてません!~(不定期更新)

ナナシの助

プロローグ

「そうね、このまま殺して……」 


ふと足元からぬるりと得体の知れない薄気味悪いピンクの色をした怪物の何かが、深淵へと自分を引きずり込もうとしている。甘美な香りは怪物のものなのだろうか。それならそれで悪くない。


「今、行くわ」 

 

そうして彼女は抗うこと無く自ら落ちていった。



***



遠い昔『生命いのちの泉』と言うとても美しい泉がありました。泉は世界を巡る魔力の源でした。しかし泉は人の世の急激な発展により、その美しさを失い始めていました。世界の調和を護る精霊たちは、このままでは世界が終わりを迎えることを予見し、その使命ゆえに心を痛めていました。


そんな時、精霊は一人の王と出会います。彼は、自らの国民を深く愛し、自然を敬い、王国の平和と繁栄を心から願う、高潔な心の持ち主でした。


精霊は王に語りかけます。

『大いなる泉は穢れ、このままでは世界は歪みに飲み込まれるでしょう。泉を清め、調和を保つためには、王の貴方の誓いが必要です』

高潔な王は迷うことなく、自らの全てをかけて誓います。

『この泉を清浄にし、その豊かな恵みを、分け隔てなく王国中に行き渡らせましょう。全ては民の幸福と、世界の調和のために』


王の曇りなき言葉に、精霊は深く頷きました。

かくして、王と精霊は、泉の清浄と恵みの公平な分配、そして未来の繁栄を約束する『まことの盟約』を交わしました。


そうして生まれたのが、ルミニス王国です。

精霊は、その建国に際し変わらぬ願いを込めました。


『いつまでも、この王国に真の繁栄と、分け隔てない幸福が永遠に続きますように』と。


  

 

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