グローバル・ウィッチ・コミュニケーション
花沫雪月🌸❄🌒
グローバル・ウィッチ・コミュニケーション
僕の妻、ヘレナ・田中は魔女である。
深夜、魔女は家の庭に穴を掘っていた。
数は3つ程。僕の膝下くらいまでがスッポリ入るくらいの深さ。
「ヘレナ」
「……」
「ヘレナ~」
「……」
「STOOOOOP!!」
「オゥ!?」
夢中にシャベルを動かすヘレナを強制停止させる。
ヘレナはシャベルを振り上げた姿勢のまま振り向きニヘっと笑った。
「ヨーイチ、オハヨウゴザイマァス!」
「おはよう、じゃないよ……今は深夜2時、丑三つ時だよ。草木も眠る時間だよ」
「魔女は起きる時間デス」
「いつもは寝てるじゃないか」
「じゃあ偶々デス!」
ヘレナと結ばれ、早1ヶ月。
彼女の為に貯金をはたいて購入した、郊外の一軒家での生活が始まった。
知り合った時から奇行が目立つヘレナだったが、あとで魔女と知らされて妙に納得したものだ。が、今日のはまた意味がわからない。
「それで? 今度は何をしてるのかな?」
「穴を掘ってマース!」
「見たらわかるよ……。なんでこんなことしてるのかな? ってこと」
「……それならちゃんと
「……Why?」
「“If you try to charm, you need two holes.” 人に呪いをかけるなら、穴が2つ必要です! 面白いコトワザ見つけました! 魔女にとってLOVE is charm……だから穴掘ってマス!」
日本にきて日の浅いヘレナは目下日本語の勉強中。
とくに諺に強い興味があるらしい。
どうやら呪いにまつわる諺を見つけたらしいが、直訳しすぎて意味がだいぶ変わっている。
「もしかして、人を呪わば穴二つ?」
「That's right! ソレデース!」
「ヘレナ。穴二つの、穴は墓穴――Graveのことだよ」
「What?!」
「呪いもcharmじゃなくてcurseのほう。人を呪うなら自分にも呪いが返ってきて、結局どちらも死んでしまう。だから墓穴が2つ必要になるって戒だ」
「NoOOOOO!! ヨーイチ! 死んではイケマセーン!」
やっぱり全く意味を勘違いしていたらしい。
放り出されたシャベルをキャッチして、飛び込んできたヘレナを抱き留めとんがり帽子の上から頭を撫でてやる。
「ほらほら泣かないで。死ぬような呪いをしたいわけじゃなかっんだろ?」
「ぅうう……日本語はムズカシデース」
「ところで……穴は3つあるみたいだけど?」
「まだ途中だったデス。4つ掘るつもりデシタ」
「Why?」
「ヨーイチの分デス! 私からヨーイチにLOVEで穴二つ、ヨーイチから私にLOVEで穴二つ。合わせて四つデス!」
ヘレナは本気で愛のおまじないのつもりでせっせと穴を掘っていたらしい。全く奇特で可愛い魔女である。
「じゃあもう1つは僕が掘るよ。それで樹でも植えようか」
「Oh! Good idea!」
「何がいいかな……桜やイチョウはありきたりだし」
「マンチニールにしまショウ! しなやかで頑丈、強い樹デース!」
「知らない樹だけど。うん、いいんじゃないかな」
「マムが苗持ってマス! 頼んでみマース」
後日、ヘレナの母から苗が届いたが、まぁひどい目にあったとだけ言っておく。
魔女との生活の教訓
樹は、気にしておくこと。
グローバル・ウィッチ・コミュニケーション 花沫雪月🌸❄🌒 @Yutuki4324
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