獅子座
獅子座の話をする前に、ヘルクレスとヘラについて少し説明を。
ヘルクレスは大神ゼウスが浮気相手である人間の娘に産ませた半神半人の子です。生まれつきの怪力をもち、父ゼウスの期待を一身に受けて英雄として育ちます。
一方ヘラはゼウスの正妻。嫉妬深い彼女はいつも浮気している夫にキィーーッ!となっていますが、その憎しみの矛先はヘルクレスにも向かいます。
そして悲劇は起こります。
ヘラの呪いの言葉により、ヘルクレスは愛する妻子を殺めてしまったのです。
嘆き悲しんだヘルクレスは、贖罪のため十二の試練に挑む旅に出ます。
まあ贖罪の旅といいつつ、彼は行った先々で悪いことをたくさんするのですが、それはまた別の話。
とりあえず十二の試練の最初、人食い獅子との戦いの幕が切って落とされたのでした。
「なんでライオンがギリシアにおんねん」
「それは知らん」
ちなみにこのライオン、前話に出てきた怪物テュポーンから生まれたそうです。
「これでもくらえ!」
「痛っ!?」
ヘルクレスは手にした棍棒を獅子の頭に振り下ろしますが、ポッキリ折れてしまいます。
無課金ユーザーの初期装備である棍棒をいきなり失ったヘルクレス、大ピンチです。
どうやら第一試練は脳筋攻略不可。ここでは知恵が試されているようです。
そこでヘルクレス、考えました。
「ふんすっ!」
「ぐえっ」
ヘルクレスは獅子の首に取り付くと、腕力で思いっきり締め上げました。
そのままの体勢で絡み合う二匹の獣。
やがて日が暮れて朝を迎えます。
「ふんすっ!」
「ぐえっ」
まだやってました。
そしてこれが三日三晩つづいたといいます。
「ふんすっ!」
「きゅう……」
とうとう獅子は力尽きました。
「ハァ、ハァ……人間の……叡智を見たか!」
朝日に包まれるなか、ヘルクレスはそう言い放ったといいます。
そうして彼は獅子の亡骸から毛皮を剥ぎ取って身にまとい、次なる試練へと向かうのでした。
その後、獅子の亡骸だけが残された森にヘラが降り立ちます。
彼女は憎きヘルクレスを苦しめた獅子を讃え、空へ浮かべて星座としたのでした。
そうして獅子はいまも春の宵どき南の空に輝いています。
ただ、東の空からヘルクレス座が昇ってくると、慌てて西の地平に沈んでいくようです。
可哀想に、裸で首を絞めてくるガチムチマッチョがトラウマになっているようです。
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