永遠の約束〜君の笑顔と僕の誓い〜

白雪 愛琉

第1話 出会いと永遠の誓い

• プロローグ

• 第1章 出会い(2024年10月10日)

• 第2章 心の距離(〜2025年5月5日)

• 第3章 試練

• 第4章 永遠の誓い(2025年10月8日)

• エピローグ


登場人物まとめ


🌸椿 夢羽(つばき ゆめは22→ 23)


主人公。愛知県出身。

可愛くて友達思い、頑張り屋。

多くの病気・障害を抱えるが明るさを持ち、過去の男性経験から男嫌い。

SNSを通じて玲央と出会い、交際0日で婚約を提案。


⚔️橘 玲央(たちばな れお・30 → 31)


岐阜県在住。

優しく冷静で知的、ユーモアがあり、騎士のように彼女を守る。

彼女に告白したのち、交際0日婚約を受け入れる。


🌸夢羽の周囲

• 椿 美沙(48・母)

 過干渉で心配性。婚約に反対。


• 高梨 彩花(23・親友)

 明るく頼れる親友。時に喧嘩の火種にもなる。


⚔️玲央の周囲

• 橘 真一(35・兄)

 現実的で婚約に反対。


• 神谷 陸(30・友人)

 ユーモアで場を和ませるが誤解を生むことも。


💍その他

• 不動産スタッフ(20代前半男性)

 夢羽の物件探しを担当。喧嘩のきっかけの一人。


• SNSフォロワー

 二人を繋げた存在。応援や批判を通じて物語に影響する。



第一部 プロローグ


眠れない夜は、いつもスマホを手にしてしまう。

胸の奥に溜まった孤独や不安、体調のしんどさ──誰かに吐き出さなければ、心が潰れてしまいそうだった。


「今日も眠れない」

「体が痛い」

「でも、生きてるから大丈夫」


そんな言葉をSNSに綴ることが、夢羽の日課になっていた。

反応がなくてもいい。ただ「ここにいる」と誰かに示すことで、ぎりぎり繋がっていられる気がした。


ある日。

いつも通りの投稿に、ひとつの反応が返ってきた。

それは、短いけれど不思議と温度のある言葉だった。


──「無理しなくていい。大丈夫だよ」


スクリーンの向こうにいるのは、岐阜に住む三十歳の男性。

プロフィールを開けば、落ち着いた雰囲気とユーモアのある投稿が並んでいる。

知的で冷静、それでいて笑いも忘れない人。まるで「騎士」のように、言葉で寄り添ってくれる存在だった。


「今日、10月10日って覚えやすい日だね」

彼のそんな一言に、夢羽は小さく笑った。


──何気ないやり取りの始まり。

それはやがて、彼女の人生を大きく変えていく物語の幕開けだった。



第一部 第1章 出会い(2024年10月10日)


その日は特別な予定もなく、体調もあまり優れなかった。

いつも通り、布団の中でスマホをいじりながら、何気なくSNSに言葉を残した。


──「また眠れない夜。こんなんじゃダメだよね」


反応が返ってこないことに慣れていたはずなのに、その投稿にすぐ「いいね」がついた。

見慣れないアイコンをタップすると、岐阜に住む男性のプロフィールが目に入った。


落ち着いた文章、時々混じるユーモア。

彼の投稿を読み進めるうちに、自然と笑みがこぼれていた。


ほどなくして、彼からのリプライが届いた。

「眠れない夜は、星でも数えてみたら? …いや、途中で寝落ちするかもしれないけど」


思わず笑ってしまう。

こんなに自然に心をほぐしてくれる人は、これまでいなかった。


やり取りを重ねるうちに、彼がどんな人なのか少しずつ見えてきた。

三十歳。岐阜県に住んでいて、落ち着きがあり、冷静で知的。

けれど真面目すぎるわけじゃなく、冗談やユーモアも交えてくれる。


「今日、10月10日って覚えやすい日だね」

その言葉に、ふと胸があたたかくなる。


──きっと、この日を私は忘れない。


ただの「偶然の繋がり」。

けれど、画面越しの言葉は、今まで誰にももらえなかった安心を与えてくれた。


夢羽はまだ知らなかった。

この日が、彼女の人生の大きな転機になることを──。



第一部 第2章 心の距離(〜2025年5月5日)


SNSでのやり取りは、日に日に自然になっていった。

玲央は画面越しに冗談を交えながらも、夢羽の心を真っ直ぐに受け止めてくれる。


「今日も体調どう?」

「眠れた?」


些細な一言でも、夢羽には救いのように感じられた。

体調のこと、眠れない夜、過去の出来事──

少しずつ、彼に打ち明ける勇気が湧いてきた。


──「実は、昔は男性にひどい目に遭ったことがあって…」


思わず送ったメッセージに、彼は驚きもせず、ただ静かに答えてくれた。


「そうだったんだ…無理に話さなくていい。でも、教えてくれてありがとう」


その言葉だけで、夢羽は安心して涙をこらえられた。

普通なら逃げてしまうような過去でも、彼の受け止め方は違った。

怖れや不安を抱えながらも、少しずつ心の距離が縮まっていく。


ある日、玲央から告白された。


「夢羽、君のことが好きだ」


胸が高鳴る。けれど、過去の傷や体調の不安が頭をよぎる。

そして、夢羽は思い切って口にした。


「交際0日で婚約、っていうのはどうかな…?」


画面の向こうの玲央は一瞬だけ驚いた顔をしたけれど、すぐに笑った。


「…面白い提案だね。でも、未来を一緒に歩きたい。君の全部を知った上で」


その日、夢羽ははっきりと感じた。

どんなに自分に欠点や弱さがあっても、彼は受け止めてくれる──。

そして、二人の心は、確かな絆で結ばれ始めたのだった。



第一部 第3章 試練


交際0日で婚約を決めた二人に、周囲の反応は厳しかった。


「まだ若いのに、無謀だ」

「体調も不安定なのに、心配だ」


夢羽の母・美沙は特に強く反対した。

「早すぎる! 夢羽、あなた本当に大丈夫なの?」


夢羽は胸の奥で不安がざわつく。

体調が悪くなるたび、玲央に迷惑をかけてしまうのではないかと恐れた。

けれど、玲央は離れない。


「君の弱さは、俺にとって強さだよ」


それでも、喧嘩は避けられなかった。


物件探しの日、夢羽は一日中スマホを構い、彼に相談せずに友達の彩花に相談してしまった。

その結果、玲央との心の距離が少しずつ開いてしまい、些細な言葉のすれ違いから喧嘩になった。


「なんで相談してくれなかったの!」

「だって、あなたに迷惑かけたくなかったんだもん!」


その日の夜、涙をこらえながらも、二人は少しずつ歩み寄った。

「ごめんね」「俺もごめん」

画面越しの言葉と電話の声で、再び心をつなぎ直す。


しかし、二度目の喧嘩はさらに大きかった。

彩花への相談が裏目に出て、玲央を怒らせてしまった夢羽は、つい家を飛び出してしまう。

外の冷たい風に震えながらも、夢羽は自分の弱さに向き合い、玲央の温かい声を思い出す。


「夢羽、待ってるよ」


やがて帰宅し、二人は抱き合った。

その夜、夢羽は心の底から思った。

──どんな困難も、彼となら乗り越えられる。


試練は、二人の絆を確かめるために必要だったのだ。



第一部 第4章 永遠の誓い(2025年10月8日)


朝の光が窓から差し込む。

夢羽は少し緊張しながらも、胸の奥に温かい高揚感を感じていた。

今日という日は、ただの結婚式ではない。

──二人の人生を永遠に繋ぐ、大切な一日。


玲央は変わらず落ち着いていて、騎士のように夢羽を見守る。

彼の手に触れると、不安や緊張がふっと溶けていった。


誓いの言葉を交わす瞬間、夢羽は静かに目を閉じた。

過去の痛みも、体調の不安も、すべて受け止めてくれた彼の存在を、心から信じられた。


指輪の交換。

玲央の指にはめられたのは、夢羽の選んだリング。

内側には小さく「5108」の刻印。

──「恋と永遠」を意味する、二人だけの秘密の数字。


「夢羽、これからもずっと一緒だよ」

玲央の声が、優しく、力強く響く。


「はい、ずっと一緒に…」

夢羽は笑顔で応えた。


式が終わり、二人で手を取り合う。

新しい生活への期待と不安が入り混じるけれど、今はただ、心が満たされている。

──生きてきて、本当に良かった。


そして夢羽は小さく心の中でつぶやいた。

「これからも、ずっと…玲央と一緒に歩いていく」


未来はまだ見えないけれど、この日を境に、二人の物語は確かに動き出したのだった。



第一部 エピローグ


二人の結婚は、豪華な式ではなく、身内だけの小さなセレモニーで祝われた。

限られた人たちの温かい視線の中、笑顔と拍手に包まれる夢羽と玲央。


「これで、やっと正式に夫婦だね」

玲央がそっと手を握る。


夢羽は頷きながら、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。

体調の不安、過去の傷、周囲の反対…

すべてを乗り越えて、今こうして彼と一緒にいられる。


「小さくても、これが私たちの結婚式だね」

夢羽の声に、玲央は微笑みを返す。


二人は手を取り合い、これから始まる生活に思いを馳せた。

新しい日々は、まだ見えないことばかり。

けれど、互いを信じ、支え合う心があれば、きっと乗り越えられる。


──そして夢羽は、小さな声でつぶやく。

「これからも、ずっと一緒に…」


未来はまだ白紙のまま。

でも、二人の物語は確かに動き出した。

希望と不安が混ざったその一歩は、これからの人生を輝かせる最初の一歩だった。




第二部 プロローグ


結婚式を終え、夢羽と玲央の新しい生活が始まった。

派手な結婚式は挙げず、身内だけの静かな式。

けれど、それで十分だった。互いに向き合う時間と、心を通わせる時間が何よりも大切だから。


新居は2DK。

片方の部屋は二人の寝室。

もう片方は、夢羽の仕事場として使うことにした。

――別居婚の形だけれど、毎日の会話と距離感が、二人にちょうどいい心地を与えてくれる。


「明日は沖縄、楽しみだね」

玲央の声に、夢羽は微笑む。


「うん…海も青くて、温かい風が吹いて…想像するだけで幸せ」


新婚旅行は、二人だけの時間を大切にするために国内中心。

初めての遠出は、2026年の沖縄に決まっていた。

仕事や体調のこともあるけれど、二人で過ごす時間が、これからの生活の基盤になると信じていた。


こうして、第二部の物語は動き出す。

結婚後の日常、夢羽の仕事、そして二人の妊娠への歩み――

小さな日常の中に、幸せの欠片が少しずつ積み重なっていくのだった。

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