第18話 チーム別探索
──洋館西棟。鵺、ナギサ、ヴィクトリアチーム──
「気になったんだけどよ」
「ん?」
「そもそもお前、なんで来たんだ?戦えないし能力も使えないなら、完全にお荷物だろ」
「ちょっとヴィクトリア⋯⋯!」
開口一番で、ヴィクトリアは鵺に厳しい言葉を投げかけた。
「んー、まぁそうなんだけどね」
しかし鵺はさほど興味を示さず、しゃがみこみひたすら床を調べている。
「だけど、あくまで目的は調査だからさ。これは私がやるのが一番早いんだ」
「オレサマ達には務まらないと?」
「まぁそんな感じ」
淡白な口調だった。
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯ヴィクトリア、暴れちゃダメだからね?」
「分かってるよ⋯⋯!」
鵺はどこか上の空といった様子だったが、しばらくすると立ち上がって身体を伸ばし、懐からノートを取り出した。
「よし⋯⋯二人とも、ちょっと待っててね」
そして物凄いスピードでノートに何かを記していく。
「うわ字きったね」
「⋯⋯これ、後からちゃんと読めるんですか?」
「⋯⋯⋯⋯」
私達の声も届いていないらしく、虚ろとも言える瞳で一心不乱にペンを動かしている。
「⋯⋯⋯⋯ふぅ⋯⋯お待たせ、進もっか。この先は多分海蜘蛛が出るから、その時はよろしくね」
一分間ほどの記述を経て、鵺が顔を上げた。
⋯⋯まだ洋館の西棟に移動したばかりだと言うのに、もうそこまでの情報を手に入れたということなのだろうか⋯⋯?
「おい、情報を共有してくれないのかよ」
「え?共有したよ。コノサキウミグモガデマス」
「あ、カーナビみたいな口調」
「いやそうじゃねぇ!明らかにそれだけの記述量じゃ無かっただろ!」
「あ、そっか。ごめんごめん、じゃあはい。さっきのノート」
「字が汚くて読めない!!」
ヴィクトリアが頭を抱えて叫ぶ。
「あはは」
「笑ってんじゃねぇよ!」
「はははっ、ごめんってば。でも──」
鵺はけたけたと笑いながらも──
「──ちょっとショッキングな内容だから」
「⋯⋯え?」
⋯⋯結局、教えてはくれないようだった
「⋯⋯はぁ⋯⋯まぁいいか。てかさ、だったら東棟を探してるあいつらは無駄足ってことか?お前が見なきゃ調査になんないんだろ?」
ついにヴィクトリアも諦めたようで、溜息をつきながらも質問を切り替える。
「それは大丈夫。アカネ君とヒビキちゃんには記録装置を持たせてるから。あとから私がそれで確認するよ」
「撮影ドローン扱いかよ」
「海蜘蛛が出なきゃ、本当にドローンでやってもいいんだけどね〜」
鵺は会話を続けながらも、定期的にノートに何かを書き足していく。
今の話を総合すると、私達の目的は調査よりも鵺の護衛という方が適切かもしれない。
目標が明確になり、改めて気合いを入れ直す。
「よし!じゃあこのまま一気に行っちゃおう!!それいけヴィクトリア!発進!!」
(コイツ、オレサマの事をニチアサ枠扱いしてやがる⋯⋯!)
──洋館東棟。アカネ、ヒビキチーム──
「──そういう訳だから、あくまで私たちの目的は記録。身につけた端末が勝手に撮影してくれるから、心配しなくていいわ」
「へぇ、便利だな」
「海蜘蛛を積極的に倒す必要は無いから、さっさとマッピングだけして戻りましょう」
「⋯⋯マッピング⋯⋯」
身体に取り付けたいくつかのカメラ、それに加えてコンタクト型の記録装置を目に装着している。
⋯⋯今までコンタクトをした経験が無かったため、少し苦戦したが⋯⋯
これによって自動で情報が記録されるらしい。
「⋯⋯他に、何か気をつけるべきこととかあったら聞きたいんだが」
一応同い年らしいが、こういう任務の経験は当然ヒビキの方だ。
事前に教えを乞いて損は無いだろう。
「⋯⋯んー⋯⋯あっ⋯⋯」
「⋯⋯何か?」
「アカネ、ソシャゲとかやってる?」
「⋯⋯?やってるけど⋯⋯」
思わぬ発言に首を傾げてしまう。
⋯⋯ヒビキ、ソシャゲとか知ってるのか⋯⋯
「ゲームに限らず、スマホのデータはバックアップを取っておくべき。戦いで壊れちゃうかもだから」
「⋯⋯ふふ」
「アカネ?」
不思議そうにしているヒビキに対して、得意げにスマホを取り出す。
「既にやってきてる⋯⋯!」
「⋯⋯ぐっ」
サムズアップをしてくれた。
──────────────────
「⋯⋯ッ⋯⋯アカネ⋯⋯!」
しばらく進むと突如ヒビキが立ち止まり、こちらにも警戒を促す。
「海蜘蛛か?」
彼女はこくりと頷くと、手に持った武器を軽く握りしめる。
──面接の日にも見た、大きなカッターナイフのような武器。
刃が暗闇の中で、キラリと光る。
「⋯⋯とりあえず、私が戦うわ。私の能力は連携に向かないから」
「やっぱり、ヒビキも能力者なのか」
海蜘蛛とは数日前にも死闘を繰り広げたばかりなので、正直戦ってくれるのはありがたいが、能力という言葉に興味を引かれてしまう。
「⋯⋯先に言っておくけど、私の能力は⋯⋯多分見ても理解できないと思う⋯⋯」
「⋯⋯複雑な能力なのか?一体どんな⋯⋯?」
「とりあえず見てみて。私の能力は⋯⋯一言で言うなら⋯⋯」
彼女は数秒悩んでから──
「──『空間を斬り裂く能力』かな」
──その言葉と共に海蜘蛛に刃を向けた。
──────────────────
⋯⋯目の前で真っ二つにされた海蜘蛛を視界に収める。
「⋯⋯倒した、けど⋯⋯どう?理解できそう?」
「⋯⋯⋯⋯いや⋯⋯全く⋯⋯」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます