第5話お弁当

今日の朝の授業も終わり昼休みの時間になると、俺たち四人はいつものように教室で一緒にお弁当を食べることになった。


晴人と光が隣りあって座り弁当を開ける。


「あれ?二人の弁当お揃いじゃん!!どうしたの!?」


あかねが二人のお弁当を見比べて驚いている。


「おうこれな光が作ってくれたんだよ。」


「今日は晴人の親が忙しいらしいからね。私はいつも自分で作ってるからそんな手間じゃないからね」


光が当たり前のように軽く言う。いや少し自慢げなのかもしれない。


俺も二人の弁当を覗くと彩もよく栄養バランスも良く考えられている。光は何でもできる人間だが例にもれず料理までできるようだ。


「はへ~、よくできてるな。これ毎日作ってるのかすごいな」


「でしょ~。まぁ今日はちょっと張り切ったけどすごいでしょ」


晴人の分まで作るので張り切ってはいたようだがそれでもすごいので素直に称賛する。


「あーホントにすごいよ。いいお嫁さんになるな」


「だろ」


「なんでお前が偉そうにしてるんだよ!!」


作って持っただけの晴人が偉そうにしている。光はこの状況を笑っていた。


「まったくラブラブだね~。じゃあさほら食べよ!いただきま~す」


あかねが話を切って合掌する。よほどおなかがすいてたのだろうか?ちょっと機嫌が悪い気がしないでもない。


俺たちもあかねに続いて食べ始める。


「ねぇ光ちょっと食べてもいい?」


「いいよ~」


あかねが申し訳なさそうに光に言う。もしかしたら料理が自分はできないことを気にしていたのかもしれない。


「おいしい~!!」


「そう?ならよかった」


光は嬉しそうだ。


あかねがあまりに美味しそうに食べるのでどんなもんかと光のほうを見ているとあかねがこちらのほうをにらんでくる。


「どうしたあかね?」


「・・・」


返事が返ってこない。どうしたのだろうか。


「隙あり!!」


急にあかねが動いて目に止まらぬ速さで俺の唐揚げを奪っていった。


「まったくどんだけ食い意地張ってるんだよ...」


俺はあきれたように言う。


「ふふ~ん。盗られるほうが悪いもんね~だ。」


こいつは何を子供みたいなことを言っているのやら。


「う~ん!!おいしい~!!やっぱ空のお母さんは相変わらず料理上手いね~。」


「いや今日は俺が作ったぞ」


あかねは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。思いのほか意外であったらしい。そのあと少し顔が赤い。


「へえ~空の手料理か~。うい味見」


「あっちょ、お前!」


どさくさに紛れて晴人が俺の唐揚げを盗む。俺の三つしかない唐揚げを二つもとられた...


「へえ~空くんの料理か~。私ももらお」


「あ、待って光まで」


光にまで唐揚げを取られてしまった。俺の唐揚げが...


俺は今かなりしょぼくれた顔をしている。


「まあまあちょっとやりすぎたか。ほれ」


「意地悪しすぎちゃったね」


二人とも笑いながらおかずを分けてくれる。


ありがたやと一瞬思ったが普通に考えてこいつらがとらなければいい話なんだよな。はぁ~こいつらの悪ノリに付き合わされる身にも


あっ光の料理美味しいな。


「私が発端ではあるしね。可哀そうだから私のからもとっていいよ!!私だけお母さんがつくってるけどね!!」


胸を張って言うことではあるまいに...俺はあかねの弁当から卵焼きを選んでとる。


「あっ、ソレダケワタシガ...」


「ん?なにか言ったか?」


「いや何も...」


なにか言いたそうだがまあいい。唐揚げの恨み!!容赦なく俺は卵焼きを食べる。


「美味いな。味変えたか?前にあかねのお母さんに食べさせてもらった時と違うが、俺はこっちの味のほうが好きだな」


あかねが目をぱちくりさせて何故か恥ずかしがっている。親が作ったものだろうに。


「ふ、ふ~ん!卵焼きならいくらでも食べていいよ。」


「そんな何個も食べねえよ!!お前と違って食い意地張ってねえからな!!」


どうしたのだろうか。あかねは今日一ご機嫌のようだ。


その様子を見ていた晴人と光が苦笑いを浮かべている。


「お前ら、本当に仲いいよな」


晴人がため息をつきながら言うと、光も頷いた。


「微笑ましいけど、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃう」


「だからそんなんじゃないって」


俺とあかねが同時に否定すると、晴人と光は顔を見合わせて笑った。


そんな他愛もないやり取りをしながら、今日も楽しい昼休みが過ぎていく。あかねの卵焼きは、確かに美味しかった。

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