第3話楽しい授業
ふぁ〜あ...
俺は小さくあくびを漏らしながら、3時間目の国語の授業を受けていた。学校も始まりすこしたったが、まだ体がこの生活リズムに慣れていない。朝練している部活勢には恐れ入るって感じだな。
席替えの結果、俺の隣にはあかねが座ることになった。前の方には晴人と光が座っており、四人ともかなり近い席になっている。昼休みとかはこの四人で過ごしている。相変わらずこういう運には恵まれている。
先生が黒板に何かを書きながら古典の説明をしているが、正直眠気が勝りつつあるこの状況はよくないなと感じている。
そうしていると、隣からひょいっと小さなメモが渡されてきた。
見ると、あかねが描いたんだろう雑な絵と矢印が描かれている。これは...りんご、か?
隣を向くとあかねがひそひそと話しかけてくる。
「暇だしやろうよ」
「お前授業中なんだから暇ってことはないだろ...」
先生にはバレないように小声で答える。
「え~でも空もあくびしてるじゃん」
「それとこれとは話が別だ」
「ふふっ、あんましゃべっていると先生にばれちゃうよ?」
あかねがにやりと笑いながら言う。まったくお前が話しかけてきたんだろうに...
そうは言うものの確かに授業は退屈で先生もこちらを向いていない。何よりあかねが話しかけてくれたおかげで眠気も冷めてきた。ちょっとぐらいならよってやるか。
俺はメモを受け取り、りんごの絵の下に「ゴリラ」の絵を描いて返した。我ながらひどい絵ではあるが分かればいいだろう。
「そらは絵が下手だね~」
あかねがメモを受け取ると、くすくすと小さく笑いながら次の絵を描き始めた。お前に言われたくはないのだが...
しかし、なかなか返ってこない。
しばらくして返ってきたメモを見ると、今度は「ラッコ」らしき絵が描かれていた。ちょっとがんばったのだろうか?さっきよりは上手い。
俺が次に「コアラ」を描いて返そうとすると、あかねが小声でささやいてくる。
「空、書くの遅いよ〜」
「俺は授業も聞きながらやってるからな」
「ふーん、真面目だね〜」
あかねはずっとニヤニヤしている。
俺が次に「コアラ」を描いて返そうとすると、あかねが小声でささやいてくる。
そうやって続けているとあかねが書いてるときに先生が呼びかけてくる。
「陽音さん」
ダメだ。あかねは集中していて気づいてない。
「陽音さん?」
先生がも強めにもう一度呼ぶと、あかねは慌てて立ち上がるとメモを床に落としてしまった。
こいつ絶対読む場所わかってないだろ...俺は読む場所をメモに書いておく。
「ではここの文章を読んでください。」
あかねは慌てて
「は、はい!え~と、え~と」
やっぱり分かってなかったか。俺はメモを返す。先生は落としたものを返してるようにしか見えていないだろう。
あかねが返されたメモをちらっと見ると少しだけ顔がパッとなって文章を読み始めた。
「はぁ~まぁ授業自体はちゃんと聞いていたようですね。これからも当てますからね、慌てないように。ちゃんと授業に集中してくださいね。他の皆さんもですよ。」
あかねが席に座ると、俺の方を見て恥ずかしそうに小さく言った。
「ありがと...」
「真面目にな」
俺がそう言うと、あかねは頬を少し赤くしながら、こくっと素直にうなずいた。
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