新しいしごと
ようすけ
第1話
地下の格闘場では、毎日のように血が飛んでいる。
わたしが試合を観戦することは無くて、誰も二人の男が殺し合う様に自分の人生を重ねている時に、わたしは職場の同僚である鴨居という女とセックスをしていた。
鴨居とのセックスは、試合を観戦するよりかも楽しかった。
鴨居は、セックスをする度に強くなった。例えば背中だ。腋の下にある筋肉の発達も目まぐるしいものがあった。
ある日も、わたしたちはモップやチリ取りを放り投げ、鴨居が新しくAVで学んだという技を試していた。モンゴル流の辱め体位なのだが、まずは男の側が床に寝そべる。
「了明、そのままあたしを迎え入れるように両足を広げるんだ」
「キンタマが見えちゃうよ」
「お前のキンタマなんて誰も見ていないよ」
その時だった。職場の上司の金沢という女性が、わたしたちがまさにセックスを始めようとしている部屋の入口に立っているのに、鴨居は気がついていなかったが、わたしが気がついた。
それを鴨居に教える。「なんだって、金沢だって?」
「ああ、あいつが羨ましそうにお前のことを見ているよ」
「あいつが見ているのはお前じゃないのか?」
「どっちだっていいよ、あの女って旦那に相手にしてもらえないからって、随分と溜まっているのに違いないぜ」
「本当なのか?」
「なにがさ」
「あの女が旦那に相手にされていないってことだよ」
「知らないよ、そんなの!」とわたしが応じる。
職場の上司の金沢だが、この女はいつも苛々としていた。見ていても、こめかみに血管が浮き上がっているので、誰かからの愛が足りていないのは火を見るよりも明らかな事実だ。その金沢が、わたしたちのセックスを観察しているので、鴨居はいつにも増して興奮しているようだった。
「どうしようか、あいつを誘う?」
「よせよ。誘ったところで相手をするのはおれだぜ?」
「嫌なのかよ、性格はあれだけど、顔も悪くないしスタイルだって抜群だぜ」
「分かったよ、やるよ」とわたしは金沢を見た。
そして言った。
「金沢さん、一緒にやりませんか」
すると室内に入らずに入口の所で腕を組んでいた金沢が言うのだった。
「あんたたちは二人ともクビよ!」
金沢にクビにされたあとで、鴨居が労働基準監督署がどうとかわたしに助言した。
ロッカールームで着替え、格闘場で行われている試合を横目にしている。今でさえ、派遣社員で地下の格闘場施設の清掃員などをしているのだが、以前のわたしはオオカミでもあり、カミソリでもあった。
「労働基準監督署のことなんか知らねえよ、鴨居」
「なにかアテはあるのかよ」
「おれは選手になる」
「ええ?」
「おれはこの地下格闘場の選手になるんだ」
「無理だよ、お前には」
「おれにだって輝かしい時はあった」
「無理だって了明。こいつらって中学とか高校の時から頭がおかしくって、ずっとトレーニングをしてきた連中なんだよ、それよりもセックスをしようぜ」
「いいよ」とわたしたちはトイレに向かった。
新しいしごと ようすけ @taiyou0209
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