ギャルとの離別
「ねぇ、アスアス♪」
「はっ?アスアス?」
いつもの様に昼休みに自分の席で、奈良の話に適当な相槌を打ちながら答え、私は本を読んでいたんだが、アスアスって謎の単語に思わず素のリアクションで返してしまった。
「だって飛鳥 阿澄でしょ?それならあだ名はアスアスっしょ♪」
っしょ♪じゃない。そんな安易なあだ名なんて私の最も嫌うところである。定着する前にやめさせなければ。
「私には飛鳥 阿澄って父と母が付けてくれた立派な名前があるんです。そんな略称で呼ばないで貰えますか?」
「んもう、硬いなぁ。あだ名は仲良くなるためのステップアップなの。そんなに重く受け止めるなし」
仲良くなるためのステップアップと言われても、私はこれ以上仲良くなんてなりたくない。仲良くなり過ぎたら、この女とスタバとかイオンのフードコートとか行って、延々とコイツのしょうも無い話を聞くなんて考えただけでもゾッとする。
「あっ、そだ♪アスアスも私にあだ名付けてよ♪アゲアゲな奴お願い♪」
うるさい女だな。本読んでる人にあだ名考えてよなんて、アホなこと言いやがって、だがパッと思いついたヤツを言ってやることにした。
「奈良の鹿」
「えっ、なにそれ可愛くないんだけど、それにあーし小鹿なんだけど、そんなのマジで無理」
ドン引きした顔で私のことを見る奈良だったが、今の内に読書を進めようと私は前向きに捉えることにした。
こんな風に読書しながら奈良のアホな発言に耳を傾け、たまに反応していやる。そんな毎日に慣れ始めたころ、奈良がニタニタしながらこんなことを言ってきた。
「えへへっ、あーし、彼ピ出来ちゃった♪」
「へぇ、そうなんですか」
こんなうるさい女と付き合う物好きが居たとは驚きだ。相手とか別に興味無いのでこれ以上質問は……
「相手知りたい?知りたいよね?えーでもどうしようかな?……でも、そんなに知りたいなら教えてあげる♪」
やばいやばい、勝手に話しを進めだした。私は何も言ってないのに。この女には私が「教えてよー」とか言ってる幻聴が聞こえているのだろうか?だとしたらドン引きである。
「えっとね、相手は池脇先輩♪」
池脇先輩って確かコイツが「超カッコいい♪キャハッ♪」とか言って頬を赤らめて話してた先輩か、確かサッカーが上手なんだよな。顔も目鼻立ちが整っていた印象だし、そんな如何にもモテそうな人がこんな女を好きになるとは到底思えない。
「あーし、いつもの様にサッカー部の練習を眺めてたら、連絡先貰っちゃって♪そしたらLINEで告られた♪みたいなー♪」
テンション高いなコイツ。てかLINEで告白するとかどうなんだ?現代人はラブレターとか直接告白とか本当にしなくなってしまったのか?文学少女としては何とも物足りなさを感じてしまう。
「あーし、彼ピ出来ても友達は大切にする人だから、アスアスとはズッ友だからね」
「あーそうですか、はいはい」
そんなやり取りがあったのだが、結局のところ奈良は彼氏優先の生活になってしまい、私に話し掛ける回数は激減した。話し掛けていても池脇先輩から呼び出されれば、「ごめんね」と言ってそちらに行ってしまうので、私は本をスムーズに読める時間が増えた。なんとも快適な生活、一度失うことで大切さが分かるとはこの事か。
……一度失うことでか。
ふと私は何故だか誰も居ない隣の席を見てしまう。その理由は私にも分からない。ただただ少し空虚感があることは否めない。まぁ、慣れてしまえば問題あるまい。私は文学少女、文学少女は過去は顧みない。
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