このまま手をつないで

樹香瑠

第1話

オフ会帰り、久しぶりに訪れた彼と一時期一緒に過ごした部屋。

お風呂も入って着替えもして、後は眠るだけなのだけど、お酒で妙に上がってしまったテンションのままベッドに座ってスマホをいじり始めてしまったら眠れなくなった。

眠くないなぁと思いつつスマホを見ていたらお風呂に行っていた彼が戻ってきた。

ベッドに座っている俺を見てさっさと寝よう!と言ってベッドに押し倒し上掛けを掛て端っこに座ってしまった。

諦めて目を閉じ、眠気がやってくるのを待つ。しばらくして少しうとうとし始めた頃、晃さんが隣に潜り込んできた。

エアコンが利いていてちょっと寒かったから晃さんの胸元に潜り込んでみる。

そっと背中に手が回ってきて、ゆっくりと撫でられた。

うっかり笑いがこぼれると起きていることに気づかれたらしく胸元に置いた手を取られた。

「眠れへん?」

「うん。なんかテンション上がって」

「明日体力持たへんよ?」

「大丈夫そのうち眠れる」

「ええから、とりあえず目閉じとき」

「うん」

そう言って大人しく目を閉じる。

「震えとるな。寒い?」

「寒くないよ」

「まだ怖いか?」

「……ごめん」

「気にせんでええよ」

「……うん。あの、晃さん」

「眠れるまで手、繋いでていい?」

「昴がそれで安心して寝られるんやったらいくらでも」

「ありがと」

そう言って軽く息を吐く。

どうにかこうにか眠れて、次の日。1日一緒に過ごして、夕方過ぎに新幹線に乗って地元に帰るために切符の確認をする。

「忘れ物あらへんか?」

コーヒーのいい匂いとともにキッチンから晃さんが顔を出した。

「うん。あー、もうちょいのんびりしたかった」

「土日とか息抜きに来たらええやん」

「それもいいね」

「そやろ?」

淹れてもらったコーヒーを飲んで、のんびりする。

うっかり寝落ちそうになったら肩を叩かれた。

「すば、頑張って起きとかんと。」

「……うん」

いい時間になっていたらしくせっつかれてキャリーケースを持って部屋を出た。

一緒に駅まで行って、新幹線のホームまで晃さんも来てくれた。

すぐに新幹線が入線してきてあまり待つことなく乗り込む。

「またな」

「またね」

そう言ってそっと繋いでいた手を離した。少し高い位置にある彼の横顔を見る。

「晃さん」

「ん?」

「あの……好き。晃さんが」

「俺も好きやで、昴」

そう言ってにこ、と彼が笑った直後にドアが閉まった。

進行方向らしい方を向く横顔を見つつ、今日もよく眠れるように帰ったら電話しようと決めたのだった。

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このまま手をつないで 樹香瑠 @yuuri2623

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