第14話 奇妙な出来事
「ロジン、サポートするわ! 合図して!」
「僕も戦うよ……!」
2人の提案に、俺は静かに答え、ヒビネスに睨みをきかせる。
「こんなやつ、俺一人で充分だ」
「誰だい君? ん? その顔……服装……、そうかそうか、君か。君だろ? 検問官から聞いてるよ。たくさんのお宝を持ったカモがきたってね。あれはひとつ残らず没収させてもらったよ。ありがとうね」
「返してもらうさ、お前を殺したあとにな」
ふふっと笑みを浮かべるヒビネス。だが言葉を続けた。
「ゴブリンキングを倒して調子に乗ってるのかもしれないけど、あの程度、確かに骨は折れるけど俺でもやれるよ」
「何を勘違いしているか知らんが、俺は一切知らん。なんせ……いや、お前が知る必要は無いな。御託はいい。3秒やる。最後に言い残したことはないか」
「1」
ヒビネスが薄っぺらい笑みを浮かべながら秒数を数え始める。舐めてるのかこいつ。
「2」
おい、謝罪の言葉もなしか。
「3。終わりだねじゃあ、君たちは脱獄犯として俺が直々に殺してあげるね」
「やっぱり救えないやつだ。情けでも与えようと思ったが必要ないみたいだな」
その場で一閃。
ゴトリ。と、
スキルも使わず飛び込んできたヒビネスの首が床に落ちる。
脱獄してすぐだから、武器など何も持っていないので、手刀だ。
「い、一撃……!! ここまでとは思わなかったわ……」
「つ、強い……ハイルディンが苦戦していた男が一撃で、」
「あぁ、だが殺してないはずだからまた復活するぞ? どーする? リナ、ハイルディン起こしてくれ」
いいのこしたことはないか? とか言いつつ、コイツはどうせまた復活するのだ。復活した後にでも聞けばいい。
「はいはーい【女神の祝福】!」
このスキルは、対象にかかる一切のデバフを強制解除する凄まじいスキルだ。それは呪いであっても変わりない。
1度の行動で多くの効果をもたらす僧侶の最強のスキルだ。
何事も無かったかのようにハイルディンがすくっと立ち上がる。
「奴は!? な! 私は、どのくらい……なに!?」
忙しいやつだ。周囲を見て、ヒビネスの頭を見つけて、そして全く汚れてもいない俺を見て、目をがんびらいている。
元気そうだな。
現実世界でもちゃんと攻略本通りの効果があるらしい。魔力切れによる昏睡も一応デバフ扱いになるのか。
確かに奴は強かった。だが、俺たちのレベルにはまるでいない。やはりストーリーに出てこないキャラはこの程度ということだ。
さ、最初は魔力にビビったけど!
だがしかし、結果はどうだ? 圧勝だ。苦戦する間もなく倒した。遅すぎるし、脆すぎる。取るに足る相手ではない。
ただなぁ、違和感も残る。たしかに、奴から感じた魔力は強大だった。いや、邪悪とも言うべきか、背中に悪寒を感じたのは間違いない。
それに、強さが感じた魔力に比例していない気がしたんだ。
「何考えてるかしらないけど、行くんでしょ? 」
リナの発言で急に現実に戻される。
「あと、早くスキル解きなよ。ハイルディンもびっくりしてるじゃない」
「あれ? あ、わりわり」
なんだ、俺のスキル仕様の姿にビビってただけか。最初にびっくりしてスキル使ってたの忘れてたわ。
☆
俺たちはハイルディンの主導の元、瓦礫の上をはいあがり門をぬけた。
先に拡がったのは豪華な内装と、複数の巨大な柱。その先に、巨大な椅子があり、そこに1人の女がいた。
服装は王族のものであることに間違いは無さそうだが、俺の目からしてもなんとなく、品を感じなかった。
あれが王の母親か? なんだろう、コスプレにしか見えない。ああいうのを服に着られてると言うかな。
俺たちはハイルディンの後ろをついて行く。軽くうつつを抜かしていたようで、広い部屋に反響する俺たちの足音で目を覚ましたらしい。
ハッとしたようにこちらを見て、そしてハイルディンを見て、逃げだす。
「き、騎士団長様!」
かと思いきや、長いスカートを持ち上げこちらに走ってきた。んーなんだこれ?
ハイルディンは戦闘の構えを取り、「それ以上近づけば問答無用で殺す」と忠告するが、対する相手はビクリとふるえるだけで何ら好戦的な格好は見せなかった。
「ねぇねぇ、なんかおかしくない? だって、今目の前にいるのが全ての元凶なわけでしょ?」
「そ、そのようだが……全く敵意を感じないというか、見知らぬ俺たちに恐怖すら感じてるようだしな。多分強くもない」
「僕も……それは感じた。彼女は雑魚だ」
「お、ローニャが言うなら間違いねーな」
「そうね、間違いないわね」
感じた違和感の正体。ハイルディンの聞いてた話と全然印象が違うのだ。
見た目は平凡な顔立ちで、とても悪事を企むようには見えない。いや、むしろそう言う奴が裏ではってのもありえるが、そんな裏のあるやつがあんな追い詰められた小動物みたいな震え方するか?
「ハイルディン、この女で間違いないんだよな? 元王の居場所聞いて早く行こう」
「…………い、いえ。もちろんその通りなのですが」
どうやら、ハイルディンも違和感に気づいたらしい。それでも戦闘体制を崩さない所に、プロフェッショナルを感じる。ハイルディンは確認を取るように質問をする。
「母后シルア様、お答えください。あなたはなぜ反逆を起こしたのですか」
「…………反逆? わ、私は何も知りません! 私が何かしましたか!? 気づいたらここにいて、な、何が起こっているんですか!? ひっ! 戦争!?」
俺たちの後ろの残骸を見て、大きく尻もちを着いた。あの轟音のなかで寝てたのか?
これではまるで記憶喪失みたいじゃないか。だってついさっきの出来事だぞ? ここからヒビネスは出てきたんだからさ。
しかもだ。この人さっき、ハイルディンのこと「騎士団長」って呼んだんだよな。それが一番の違和感の正体か。
ハイルディンが混乱する俺たちに説明する。
「彼女は元々この城に仕えるメイドだった。なので、元は平民だ。それが、王の子を身篭ったことで母后となった。私はてっきり、彼女が指揮したものとばかり思っていたが、どういうわけか彼女は私がまだ騎士団長だと思っている」
リナがピンと来たような顔をする。
「…………記憶喪失、ね。魔物に操られていた時の症状に似てるわ」
さっすがヒーラー! 博識だね! たしかに俺は攻略本の知識はあるが、そういう副作用? とかゲームのご都合が働かないところについては何も知らないので、ほんとに助かる。
「一応、彼女も保護して、地下の幽閉施設に向かいましょ。事件の真相究明はそれからよ」
「お、おう、後でちゃんと聞かせてくれよな。俺全然ついていけてねーから」
リナを覗いて、全員が混乱しながらその場を後にした。
☆
「あぁやっぱいるよな」
「俺の分身でおとりを出してその隙に行こう」
城内をすすみ、地下へと続く道の途中に、騎士団の兵士が見えた。先程までやっていたように、分身でニセルディンを作り出し、向かわせる。
見つかった瞬間、ニセルディンをダッシュさせ、その隙に俺たちは地下に入る。
「き、騎士団長!? どうしてそのようなお姿で!?」
という作戦だったのだが、その一声でどうやら必要ないことを理解した。
「リナ、もしかしてアイツらも記憶喪失ってことか?」
「えぇ間違いないわ。ハイルディンのこと騎士団長って言ってたもの」
「ど、どういうことだ?」
理解が及ばないのだろう。だが、説明している時間が惜しい。俺は分身を解除し、ハイルディンを前に押して、心底驚いた顔をしている兵士らに鍵を貰って地下へ行く。
しばらく行くと、やたら大きな柵が見え、そこが王の居場所だと確信した。衰弱しきった王を連れ、俺たちは目的通り王座へと戻った。
空の王座に座らせた途端、だらりと垂れていたからだが起き上がり、取り憑かれたように喋り出す!
「おぉ、冒険者よ、よくぞ来た」
い、イベントが始まったぞ!!
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