第7話 メガトンシャークMk2
「フハハハハ! 大漁大漁!」
「これハマっちゃいそうっスね〜」
アホみたいな量のドレインカープを釣り上げて、ようやく湖の底が見えてくるくらいになった。
既にバケツ5杯分は釣ったが、まだまだいる。魔法か何かで保存しておけば数日分の食料は賄えそうだ。
「……そろそろお腹空いてきたっス」
「おいおい昨日あんなに食ったのに朝飯だなんて贅沢なことは言わせねぇぞ」
「えぇー……」
「ですが、なんと、今回に限り!?」
「おぉ?」
「特別に朝ご飯解禁で〜す!」
「やったー! っス」
◇◆◇
街に戻って時計を確認すると、時刻は午前7時過ぎ。もう市場が開いている時刻だった。
商人から塩と胡椒、あとなんかよくわからんスパイスらしきものを購入して湖に戻ろうとすると、商品の中の、茶色の液体のビンが目に留まった。
我々日本人がよく見てきた茶色。まさかこれは……!
「おっ、にいちゃんこいつが気になるかい? こいつぁ隣の国の賢者様が作ったショウユとかいうモンだ。一口だけ舐めさせてもらったんだが、もう絶品でよぉ!」
ショウユ、醤油だな。その賢者ってのも十中八九日本人の誰かだな。クソッ、俺も知識無双とかしたいけどマヨネーズすら作り方知らん! もっと勉強とかしておけばよかった!
「その醤油、いくらで売ってくれるんだ?」
残金約5000ゼルト。安く買えるなら欲しいところだが……。
俺の問いに、商人はニヤリと笑って答えた。
「1瓶50000ゼルトって言いたいとこだが、見る目のあるにいちゃんには特別価格! 500ゼルトで譲ってやるよ」
「買った!」
商人とサムズアップを交わし、俺たちは再び湖へと向かった。
「アキト、そのショウユってのはなんなんスか?」
「日本が誇る最強の調味料だ。こいつを生魚につけてやるだけで、高級料理に早変わりよ」
「?」
「まぁ食えばわかる」
湖につくと、あのおびただしい数のドレインカープはすっかりいなくなっていた。
さっきはまだまだ大量にいたのに、どういうことだ……?
「あ、あれ見てくださいっス」
エミリスの指さした先は湖の中。よく目を凝らしてみると……。
「んん? えぇ……?」
サメだ。サメがいるのだ。
特徴的なヒレに、巨大な身体。口には鋭いキバが何本も見える。
そして俺の知るサメとは決定的に違う部分がひとつ。4本の足が生えてる。
「なにこれ……?」
「メガトンシャーク
「なんだそのMk2は」
「さぁ?」
髪をぷるんと揺らして首をかしげるエミリス。
現地人でも知らない生物がこんな近くにいるのかよ。ファンタジーだなぁ。
メガトンシャークMk2はバシャバシャと水しぶきを立てながら、その大きな口で残り少ないドレインカープを食い散らかしている。
「あれ、これ俺たちの仕事もう終わりか? こりゃラッキーだな。よし、さっさと飯食って帰ろうぜ」
「いや、もう無理っスね」
「はぁ?」
表情ひとつ変えずにさらりと言った。
「このサメは月1くらいで目を覚ましてエサを食って、また寝てって一生を過ごすんスよね」
「? それがどうした?」
「そのエサの量ってのは特に決まってるわけじゃなくて、目に写ったもの食い尽くすまでって感じなんスよ」
「急になんだよ。水族館のツアーごっこでもやりたくなったのか?」
「それで、こいつの視野はとっても広くて、水中からでも地上がよく見えるんス」
「なんでそんな詳しいんだ?」
「なんか図鑑で見てカッコよかったんで」
こいつは何を始めたんだ、と思った瞬間。
バッシャァァァアン!!
水しぶきを上げ、ヤツが湖から飛び出してきた!
「おわぁぁあっ!?」
「はい、視界に入ったのでジ・エンドっス」
「もっと早く言えよぉぉお!!」
「逃げたところですぐ追いつかれるっスからねぇ……」
頭上を覆ったメガトンシャークMk2は、俺に向かって大きな口を開き、無数のキバをギラリと見せつけた!
そのまま俺を頭からガブリ――――
キバが刺さった腹のあたりに激痛が走り、意識が一瞬消えた。
「……はぁっ、危ねぇ! ナイス不死身!」
俺の上半身はおそらくバッチリ食われたが、すぐに新しいのが生えてきたようだ。
「へぇ〜不死身ってここまで強力なんスね」
「こんなスキルをハズレ呼ばわりだなんて、王城のやつらは無能の集まりかぁ?」
俺の身体を美味しくいただいたサメは、地面にその4本脚で地上に立ち、俺たちの方に身体を向ける。
満足していないようだ。再び俺にかぶりつこうと口を大きく開けて突進をかましてきた!
「さぁいくらでもガブってきな! 俺は不死身だから……グハッ!」
次は腹から下を食われた。痛い! けど一瞬で痛みも消えてくれるからさほど気にならない!
さぁ〜て、ここから俺の最強無敵不死身スキルでこいつをボコボコにしてやるとするか!
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