あくまでこの物語は第一話である。なにか物語が大きく動いたりするわけではない、これから起こる戦いを、物語を、読者に想起させるプロローグ。この先にどのような展開が待っているのか、どのような物語が詰まっているのか、それを読者に想像する余地を与える。ファンタジー物の出だしとしても、余白を与える物語としても、素晴らしい完成度だと思います。
まず冒頭の一文、「ビルとビルの隙間を埋めていた黒い雲が、あたしの溜め息一つで晴れた」がすばらしい。短い文章の中に、世界観、キャラクター、物語が凝縮された都会派ダークファンタジーの佳作です。
現代の街に潜む異世界の住人たちを描いた、洗練されたダークファンタジー。主人公の軽やかで魅力的な語り口と、雲を操るような幻想的な能力描写が印象的。深夜のオフィス街という舞台設定も秀逸で、日常に潜む非日常感が絶妙に演出されている。謎めいた男性キャラクターとの関係性も気になるところ。短編ながら世界観がしっかりと構築されており、続きが読みたい。