才色兼備のお姉ちゃんと凡人の私
椿かもめ
第3話 お姉ちゃん、病み上がりなんだから無理しないの!
「ん〜お母さんに教えて貰った通りに作ってるんだけど、なんか味が違うなぁ」
何が違うのか色々と考えて見たが分からず、下手に調味料を加えて更に酷くなる
と、二重の意味で不味いので、お姉ちゃんには悪いがこのままにすることに決める。
お姉ちゃんの様子を見に部屋へ向かう。
お姉ちゃんを起こさないように静かに部屋に入る。
ゆっくりベッドに近づいて、お姉ちゃんの様子を見る。
「美咲ちゃん⋯⋯」
と、薄めを開けて私を見て言う。
「ごめん、起こしちゃったね」
「いいのよ⋯⋯」
「お粥出来たけど食べる?」
「ん〜少しだけ食べようかな」
「分かった。持ってくるね」
と、言い、部屋を出てキッチンに向かう。
茶碗にお粥を盛り付け、スプーンと風邪薬も一緒に持って部屋に入り、電気を点け
る。
「ただいま。一人で起き上がれる?」
「えぇ、大丈夫よ」
お姉ちゃんは、ゆっくり起き上がる。
「ベッドに腰掛けて」
と、言うと、お姉ちゃんはベッドに腰掛ける。
「お姉ちゃん、あれから水分取った?」
「少しだけ」
「そう。先に水分取る?」
「ん〜そうしようかな」
私は、テーブルの上に茶碗とスプーンを置き、替りに置いてある経口補水液のペッ
トボトルを取り、キャップを開ける。
「はい、お姉ちゃん」
お姉ちゃんにペットボトルを渡すと、ありがとうと言い、受け取る。
ゆっくり一口飲むと、私にペットボトルを渡した。
ペットボトルのキャップを閉めて、テーブルの上に置く。
茶碗とスプーンを取り、一口分すくい、ふーふーと冷ます。
「お姉ちゃん、あーん」
お姉ちゃんの口の前にスプーンを持っていく。
お姉ちゃんは口を開けて、一口食べる。
「味はどう?」
「うん、美味しいよ」
「お母さんのレシピ通りに作ったんだけど、なんか味が違うんだよね」
と、言いながら、一口分スプーンにすくう。
「もう一口食べる?」
「うん」
一口ずつゆっくり食べ、お茶碗一杯分を食べきった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。食欲があってよかった」
「美咲ちゃんが美味しいお粥を作ってくれたからよ」
にこっと笑って言う。
「はいはい、お世辞はいいから。お姉ちゃん、汗かいてるよね?」
「びっしょりではないけど、かいてるわ」
「分かった。体拭く準備してくるね」
私は茶碗とスプーンを持って部屋を出た。
茶碗とスプーンをキッチンの流しに置き、冷蔵庫から500ミリのペットボトルの水
を一本取り出す。
次にお風呂場に行って、タオル2枚と桶を用意。
桶に水を入れる。
タオル2枚をズボンのポケットに入れ、ペットボトルを脇に抱えて、水の入った桶
を持って部屋に戻る。
「ただいま。お姉ちゃん、上脱いで」
と、言いながら部屋に入り、テーブルの上に桶と脇に抱えたペットボトルを置く。
お姉ちゃんは、パジャマのボタンを外し始める。
私は、クローゼットを開け、替えのパジャマと下着を用意する。
替えの着替えをベッドの上に置く。
持ってきたタオルの1枚を桶に入れ、濡らす。
お姉ちゃんは、脱ぎ終わったパジャマと下着を綺麗に畳んで、ベッドの上に置く。
タオルを絞って体を拭き始める。
白く綺麗な肌。
細すぎず太すぎずの丁度いい腕と脚。
ほとんど同じ物を食べているはずなのに、なぜこんなにも違うのか不思議でしかな
い。
「お姉ちゃん、またおっぱい大きくなった?」
「そんな事をないと思うけど⋯⋯」
と、困惑した顔で答える。
「今度下着屋行ったときに測ってもらった方がいいよ。絶対大きくなってるから」
「美咲ちゃんが言うならそうするわ」
その後、全身を水拭きし、もう一枚の乾いたタオルで水気を取る。
「氷枕の中身替えてくるから、着替えと薬飲んでおいて」
「分かったわ」
私は、氷枕を持って部屋を出てキッチンに向かった。
流しに氷枕の中身を捨て、冷凍庫から氷を取り出し、氷枕の中に入れる。
水を入れ、封をして部屋に戻る。
部屋に戻ると、着替えている最中だったので、氷枕をベッドに置き、脱いだパジャ
マと下着を持って部屋を出て、脱衣所に向かう。
洗濯機にパジャマと下着を入れ、部屋を戻る。
戻ると丁度着替えが終わったところだった。
お姉ちゃんは、薬とペットボトルの水を取って、ベッドに腰を掛け、薬1錠を口に
入れる。
ペットボトルのキャップを開け、一口分、薬と一緒に飲む。
「ペットボトル貰うよ」
「ありがとう」
キャップを締めてから、私に渡す。
お姉ちゃんは、ベッドから立ち上がり布団の中に入る。
「氷枕どう?」
「いい感じよ」
「それは良かった。しっかり寝て早く風邪治してよ」
「分かった」
私はお姉ちゃんの頭をポンポンと優しく叩き、電気を消して部屋を出た。
その後は、自分用の晩御飯を作って食べて、洗濯をして、お風呂掃除と湯張り、お
風呂が沸くまで今日出た課題をやり、お風呂に入って上がると、ちょうど日付をまた
いだところだった。
「ふぁ〜もうこんな時間なの。早起きしないとだから急いで寝なきゃね」
とは言ったものの、髪を乾かしたり何だかんだしてたらあっと言う間に25時前に
なっていた。
寝る前にお姉ちゃんの様子を確認すると、薬が効いているのかぐっすり寝ていた。
自分の部屋に行き、スマホのアラームを午前5時にセットして眠りに着く。
「ん〜」
目を瞑ったまま手探りでアラームが鳴っているスマホを探す。
何回か周辺を叩いてスマホを見つける。
アラームを止めて、思いっ切り伸びをする。
時刻は、午前5時。とりあえず寝坊せずに済んだ。
「眠い⋯⋯」
慣れない家事をするから意気込んで早起きしたものの眠いものは眠い。
私は目を擦りながら布団から出る。
部屋を出て洗面所に行き、顔を洗う。
完全に目を覚まし、キッチンへ向かう。
「美咲ちゃん、おはよう。早起きなのね」
と、お姉ちゃんが冷蔵庫を締めながら言う。
「お姉ちゃん!?なんで起きてるの!寝てなきゃダメだよ!」
「風邪なら治ったわよ。さっき熱測ったら36.5℃だったわ」
「嘘付かないの。いいから部屋戻って寝る」
「嘘じゃないわよ。少しはお姉ちゃんを信じなさい」
若干呆れながら言う。
「じゃあ、もう一度測ってよ。それで平熱なら信じてあげる」
「仕方ないわね」
お姉ちゃんは、キッチンからリビングに行き、体温計で熱を測る。
20秒後、ピピピッと音が鳴り測定が終わる。
「はい、美咲ちゃん」
お姉ちゃんが私に体温計を渡す。
受け取り体温を確認すると、36.5℃だった。
「ホントだ⋯⋯」
「だから言ったじゃない」
「ごめんって。で、朝ごはんは何する予定だったの?」
「美咲ちゃんには、ベーコンエッグとウインナー、サラダ、食パン2枚。私は昨日の
お粥の残りを食べようかなって。美咲ちゃん、メニュー決めてた?」
「お姉ちゃんは、お粥の余りにしようと決めてたけど、自分の分は決めてなかった
よ。だから、それでいいよ」
「分かったわ。せっかくだから久しぶりに一緒に作りましょ」
私達はキッチンに向う。
「お姉ちゃんと一緒に料理するのいつぶりだろう?」
私は、冷蔵庫から、卵とベーコンとウインナーを取り出しながら言う。
「一緒にカレーを作った時以来かな」
「あぁ、あったね。私が小学5年生の春休みに、お父さんが仕事、お母さんが友達と
会うから夜適当に食べて言われた時か」
私は、冷蔵庫を閉めて取り出した食材をまな板の上に置く。
「ふふふ、懐かしいわね。一緒に買い物行って、料理作って」
「二人分でいいのにたくさん作って、お母さんに作りすぎじゃないって言われたね」
「そうだったわね。じゃあ、今日の晩御飯はカレーね」
「病み上がりなのに大丈夫なの?」
「大丈夫よ。美咲ちゃんは、ウインナーに切れ目いれてちょうだい」
「はいよ」
ウインナーの袋を開け、3本取り出す。
残りは、輪ゴムで封をして冷蔵庫に仕舞う。
ウインナーに、包丁で切れ目を入れる。
「お姉ちゃん、終わったよ」
「フライパン用意して、油引かずに焼いて」
「了解~」
シンクの下の扉を開き、小さめのフライパンを取る。
3口コンロの右側にフライパンを置き、火をつける。
隣では、お姉ちゃんがベーコンエッグのベーコン2枚を焼いている。
フライパンが温まったことを確認し、ウインナーを入れる。
菜箸で、焦げないように焼き目をつける。
切れ目もいい感じに開いてきた。
「お姉ちゃん、もういいかな?」
「うん、いいわよ」
火を止め、食器棚からお皿を1枚取り、ウインナーをのせる。
「美咲ちゃん、そのお皿ちょうだい」
私は、お姉ちゃんにウインナーをのせたお皿を渡す。
受け取ったお姉ちゃんは、お皿にベーコンエッグをのせる。
「サラダはどうする?」
「昨日の夜食べようと思ってた、ミックスサラダの袋が野菜室に入ってるからそこか
ら取って貰える?」
「はいよ」
私は、野菜室を開け、ミックスサラダの袋を取り出し、食べる分だけお皿に盛る。
輪ゴムで封をしてミックスサラダを野菜室に戻す。
お姉ちゃんが、パンをトースターで焼いてくれてるうちに、お皿をリビングのテー
ブルに持っていく。
「美咲ちゃん、コーンスープあるけど飲む?」
「飲もうかな。お湯沸かすね」
「うん、お願い」
私は、やかんに水を入れ、コンロに置き、火をつける。
お湯が沸くまでの間に、冷蔵庫からお粥の入った鍋を取り出す。
「お姉ちゃん、どれぐらい食べる?」
「お茶碗1杯分でお願い」
「はいよ」
食器棚からお茶碗を取り出し、お粥を1杯分盛り付ける。
ラップをして、レンジに入れて温める。
お湯が沸くのと同時にレンジとトースターのタイマーが鳴った。
「美咲ちゃんは、コーンスープ作って。私が残りをやるから」
お姉ちゃんに言われた通りに、カップにコーンスープの素を入れ、お湯を注ぐ。
スプーンで軽くかき混ぜてできあがり。
お姉ちゃんからパンがのったお皿を受取、コーンスープと一緒にリビングのテーブ
ルに置く。
お姉ちゃんが、お粥が入ったお茶碗を持って、テーブルに置き、席に着く。
「お姉ちゃん、何か飲む?」
「麦茶にしようかな」
「持ってくるね」
私は冷蔵庫を開き、麦茶が入ったボトルとオレンジジュースのペットボトルを取り
出す。
それぞれをコップに注ぎ、麦茶とオレンジジュースを冷蔵庫に仕舞う。
カップをそれぞれの前に置く。
「それじゃあ、食べましょう。いただきます」
「いただきます」
コーンスープを一口飲む。若干薄いが濃いよりはマシ。
お姉ちゃんが作ってくれたベーコンエッグの黄身に箸を入れる。
完璧な半熟具合。白身とベーコンを一口サイズに切り、黄身をつけて食べる。
「美味しい?」
「美味しいよ」
「それは良かった」
と、ニコっと笑って言う。
その後は、テレビを見ながら他愛もない話をして朝食を食べる。
「「ごちそうさまでした」」
食器をシンクに置き、お姉ちゃんが洗い物を始める。
「美咲ちゃんの今日の予定は?」
「午前中学校行ってくる。生徒会の仕事残ってるし」
私達姉妹は、生徒会に所属している。私は会計。お姉ちゃんは高二して生徒会長を
やっている。
「あらそうなの。じゃあ、私も行くわ」
「病み上がりなんだから家で休んでなよ」
「私も行ったら効率が倍になるじゃない」
「お姉ちゃんが学校にいるって知られたら、色んな部活から助っ人頼まれるでしょ」
「そんなこと無いわよ」
「そんなことあります〜」
私は仏頂面して言う。
「なら、私が居るってバレないように・・・・・・」
「それは無理でしょ。吹奏楽部が学校の至る所に居るんだから」
「美咲ちゃんと一緒にいれば大丈夫よ」
食器を洗い終え、水で洗い流しながら言う。
「それどういう意味よ!」
お姉ちゃんから、洗い終わったお皿を一枚受け取る。
「姉妹でいるとこを邪魔したら悪いかなって思って貰えるでしょ」
洗い終えた食器を水切りラックに綺麗に並べていく。
「それは絶対にない。てか、お姉ちゃん頼まれたら断れないでしょ」
水切りラックから食器を取り、布巾で拭いて食器棚に戻すを繰り返す。
「そんなことないわよ」
洗い物を終え、シンクの下の扉に掛けてあるタオルで手を拭き、布巾を取る。
「はいはい、分かりました。もう、お姉ちゃんの好きなようにしな」
私は、頑固なお姉ちゃんにこれ以上言っても無駄と判断して反論するのをやめる。
食器を全て片付け終えると、私はシャワーを浴びにお風呂場へ、お姉ちゃんは家の
掃除をし始める。
ついでに湯船掃除もやりお風呂場を出る。
「お姉ちゃん〜」
バスタオルで体を拭きながら、大声でお姉ちゃんを呼ぶ。
お姉ちゃんは、小走りで脱衣所に来る。
「どうしたの?」
「お姉ちゃんはシャワー浴びる?」
「そうね、浴びようかな」
「湯船は掃除しておいたから」
「分かったわ」
私はバスタオルで体に巻き、自分の部屋に向う。
鼻歌を歌いながら制服に着替え、学校に行くための準備をする。
30分後。支度を終え、リビングに荷物を置き、キッチンに向う。
やかんに水を入れ、お湯を沸かす。
沸くまでの時間を使って、歯磨きや髪を整える為に洗面所に行く。
洗面所に着くと丁度お姉ちゃんがお風呂場から出てきた所だった。
「お姉ちゃん、何時ぐらいに家出れる?」
「そうねぇ、30分後でいいかしら?」
「了解」
歯磨きと髪を整え終えると、お湯が沸いたのでキッチンに戻る。
水筒と緑茶のティーパックを2つ用意して、水筒にお湯を注ぎ、ティーパックを入
れて蓋を閉める。
キッチンタイマーで5分測る。5分後、ティーパックをゴミ箱に捨てる。
お姉ちゃんの支度が終わるまでテレビを見て待つことにした。
30分後。支度を終えたお姉ちゃんが、リビングにやってくる。
「美咲ちゃん、おまたせ」
「はい、お姉ちゃんの水筒」
私は、お姉ちゃんに水筒を渡す。
「ありがとう」
お姉ちゃんは水筒を受け取り鞄に仕舞う。
私も水筒を鞄に仕舞う。
「それじゃ行こうっか」
私たちは家を出て学校に向かった。
才色兼備のお姉ちゃんと凡人の私 椿かもめ @kamome_tsubaki
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