「デカ女って言われ続けてる私、モデルデビューで全員黙らせた」

藤 野乃

デカ女って言われ続けてる私


「やっぱ可愛いのが一番だよな」

彼は隣の量産型メイクの、ちっちゃい彼女に笑いかけた。

ただの同級生で、友達ですらない人達。


てか、量産型彼女。

頑張りすぎて涙袋が隈みたいだけど、大丈夫そ? ソレ。


「おまえさ、無駄にデカいし……女捨ててんの?」

「やだぁ~、可哀相だよぉ?」

量産型彼女が、きゃあきゃあ騒ぐ。


(知ってるよ? その量産型メイクの素顔。

流行の『可愛いは作れる』のに、バッカみたい)


可愛くメイクしたりお洒落するのはいいこと。

でも、他人を攻撃する必要ある?


──在学中、ずっと言われ続けた。

「化粧ぐらい覚えろよ」

「デカ女」

「可愛くなくてかわいそー」


そのたびに、友達は言い返そうとしてくれた。

でも私は、いつも笑って言い返さなかった。


ちなみに彼らだって美男美女じゃないのに。

よく言うよね。


メイクしたこと無いわけないじゃん。

学校ではしないだけ。


確かに私は背がとても高い。

一重で、つり目。

学校では日焼け止めしか塗っていない。


で、卒業式の朝。


《新モデルデビュー!》

《海外も注目・アジアンビューティー!》

《日本のファッション業界の未来を担う逸材》


先週からテレビでもSNSでも、

私の「地味顔」が流れ続けてる。


知ってる?

地味顔って、メイクで大化けできるんだよ。

……そこの量産型みたいにね。


朝からずっとこっちをチラチラ見てる彼らに、

私は爽やかに微笑んだ。


志望大学に落ちた彼が口を開きかける。

量産型は、短大行くんだっけ。

取り巻きも似たり寄ったりで、仲がいいね?


私は一歩踏み出し、ずーっと思ってたことを教えてあげた。


「マウント取って楽しかった?

私は毎回、大笑いだったよ」


──でもこれから社会で踏まれるのは、そっちだね。


「お疲れ様♡」


そもそも、本当に見た目がいい人ってさ。

他人の外見を弄ったりしないんだよ。


ちっさいコミュニティで威張ったり、

モテた気になって、誰かを攻撃するのって。


自分は美しくないって宣伝してるだけ。


「最高にダサっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「デカ女って言われ続けてる私、モデルデビューで全員黙らせた」 藤 野乃 @fuji_nono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ