多数の平行世界は増える泡のようなもの

　このショートショートを読みながら、自分も平行世界を扱いたくて色々調べたり考えたりしたことを思い出しました。

　「多数の平行世界が収まるべき宇宙の総容量」が決まっているとしたら、指数関数的に平行世界が増殖すればあっという間にいっぱいになってしまうのでしょうか。さながら、巨大な容器の中でも泡が指数関数的に増加すればいっぱいになって泡が潰れてしまうように。
　こういう無限大を扱う思考実験は漫画や映像作品では難しい、文章だけなら容易なんだろうかとも思いました。

　このショートショートは「あり得る世界すべて」を想定しますが、娯楽的な物語ではそのうち「望ましい世界だけ」が描かれるのかもしれません。
　多くの人にとっては「現実と酷似した平行世界」よりも「自分が活躍出来る異世界」のほうが望ましいのでしょう。その中間を省略するだけでも､平行世界はけっこう省略出来るのかもしれません。

　SFは思索のきっかけを作る物語ですが、このショートショートも無限大の思索への入口として優れたスケール感を持った作品だと思います。