第4話 あの日について
「──で、司書さんはどう思う?」
「うーん」と少し悩んで、司書は答える。
「やっぱり、風紀委員がきな臭いかな。廿日市くんの能力が暴発したのって何か理由がありそうじゃない?」
「それに、あのふたりの能力も気になるなぁ。巨大コウモリになる力とぜんまいの力。本当にそれだけかな?あの子たち、能力の本質を隠してる」
「なんで隠すんだろう?」
「切り札だもん。隠さなきゃ」
夷谷は世界図書館を訪れていた。
そこは無限に思えるほど広大で、気の遠くなるような数の本を並べた、超巨大図書館だった。
夷谷もまた、能力について隠していたことがあった。″万能鍵″について、鍵あけはただの副次的効果に過ぎず、真の効果は″世界図書館への通行証″であったのだ。
夷谷が世界図書館を去ると、自宅のベッドの上で目覚めた。
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翌日、知広、廿日市のふたりは″反省室″に呼び出されていた。
「風紀委員長の
俺は「はい」と答えた。
「これは取り調べではありません」
「それより、どこかの学校と戦争でもするのか?」
「知っていたんですね。えぇ。今日呼んだのはまさにそのことです」
風紀委員長の珈は長い黒髪が綺麗な女だ。目鼻立ちが整っていて、茶色がかった目がこちらをまっすぐに見つめている。
どこかの学校と戦争...啓が言っていたことだ。まさか本当とは思わなかったが。
「取引をしましょう。私達はあなた達の容疑をこれ以上追求しません。ですから、私達の計画にご協力いただきたい」
「まずは計画をききたいかなぁ」と廿日市
「ええ、もちろん。では話しましょうか。生徒会強奪作戦について」
珈の雰囲気が変わった。
「私達はクーデターを計画しています。現生徒会を襲撃し、私達の要求をのませます。そのために、風紀委員では秘密裏に戦争の準備をしているのです。あなたたちにはそれぞれしてほしい役割があります。廿日市さん、あなたには新兵器の起動役をしていただきたい。そして治水さん、あなたには開戦前に、副会長を眠らせていただきたい」
「なんでそんなことを?」と廿日市
「弟がいるんです、来年入学してくる。サッカーが好きなんですよ、あの子。でも
俺と廿日市は顔を見合わせた。おそらくふたりとも同じことを考えていただろう。「え、そんなこと?」と。
「そんなこと?」と俺。
「そんなことです。でも、やるんです。とにかく、あなたたちには計画に参加していただきますからね」
その後、俺たちは詳細な自分の役割を説明された。
俺の役割は、宣戦布告前に副会長の
去年、″浪人″たちが学校へ攻撃を仕掛けてきたとき、何かをぶつけて討伐したらしい。それも数秒で。
決行は2日後、俺の襲撃完了の合図の後に行われる。
翌日。
俺が登校すると、ショートヘアの女子が教室を訪ねてきた。
「治水さん?」
「え、はい」
「ちょっと来て」と手を引かれて俺たちは教室を抜け出した。
行き先は校外だった。
「カラン」とカフェの扉を開き、適当な席についた。俺はレモンティー、女子はダージリンティーを頼んだ。
「さて、本題だよ。治水知広さん」
「ええと、はい」
「わたし、伊賀ちゃんに聞いたんだけれど、きみ、深夜に学校に侵入したんでしょう?そのことは委員長にも伝わっているはず。でも、あなたは変わりなさそう。どうして?」
「守秘義務かな」
「じゃあ、君の中学時代のことについて教えてほしいな。今回の件も、あのときも、鍵の彼が共謀だったと聞いたよ」
「聞いてもしょうがないと思うぞ。それに、突拍子もない話だし」
「それでもいいから」
とその女子はにこりと微笑みながら言った。
「じゃあそっちも名前、教えてよ」と俺
「中野柘榴だよ」
「.......事件については...話せない。でも、俺の
──────その神社はずいぶん古びていて、もう誰も管理していないようだった。
「なんだ、ここ。啓、早く帰らない?」
「ここ通ったら絶対近道になると思うんだよ。ちょっと休んでからいこう?」
「わかったよ」
少し涼もうと、俺たちは神社の縁側にこしかけた。そのとき、俺たちは″荘園″に巻き込まれた。あたりには喋る木々、煌々と光る太陽、にこりと笑う月があった。
俺はその所有権を″拝領″した。
その後俺たちは目覚めると古びた神社の縁側に座っていた。
その荘園は呪いだった。
「キーンコーンカーンコーン」
一限が始まった直後、あたりが突然夜になった。
教室がざわついて、空気がどよめいていた。
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暗い。暗い。暗い。耳鳴りがする。
暗いと、周りがよく見えず、身を守れない。
そこに何がいるのかわからない。それがなんなのかも。
その場の全員が理解していた。それは恐怖だ。
そこには得体の知れない恐怖が渦巻いていた。
にやり、粘っこい笑みを浮かべた巨大な"顔"が教室を覗いていた。
「パリンッ」
窓が1枚割れる。"手"が現れて、窓を割った。
"手"が俺と啓をつまみあげると、"顔"と目が合った。
「"庭"、お返しいたします」
思わず口から言葉が溢れ出た。体の芯が荘園を遠ざけようとしていた。
「カーンコーンキーンコーン」
それらは既に去っていた。
窓ガラスは、俺と啓が割ったということになった。
「─────これが、中学での話だ。この日から俺は
「う〜んと?」
「信じらんねぇだろ?俺もだ」
中野は「いやいや」と首を振った。
「信じてないわけじゃないんだよ!ただ、"荘園"とか、"拝領"とか、分かんない単語ばっか出てきて」
俺はすこし、考え口を開いた。
「俺が知る限り、人が扱える超自然的な力は大きく分けて3つ、
「なるほどなるほど...。その荘園ってどうすれば行けるの?」
「扉さえ見つければ行けるけど、探すのは無駄かな」
その後は何気ない会話が続いた。
中野はスイーツが好きだということ。
休日によくスイーツ巡りに行くということ。
今度の週末に一緒にスイーツ巡りに行こうと約束までしてしまった。
おすすめのお店を聞いてその日は解散した。
───計画の実行は2日後、俺はその日、中野と敵になる。
帰り道、中野の事を考えていた。
なんで急に俺に話しかけてきたんだろう。事件について気になるからといってカフェでお茶なんて。
そうしたということは、そうする必要があったと考えるべきだ。例えば、能力の発動条件を満たすため...とか。でも、そうなると計画について知っていたってことになる。
...考えすぎか。ただのお茶だ。
そのほうが嬉しい。
翌日、
振り返った頃には、もう見えなくなっていた。
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