第2話 アイケミ
『アイケミ』の略称で親しまれている虹彩感知式非接触型相性診断コミュニケーションツールは若者を中心に空前のブームとなっていた。
専用のコンタクトレンズとアプリをインストールしたスマートフォンの2つがあればすぐにでも始められるシンプルなサービスであり、その手軽さが人気の理由のひとつでもあった。
アイケミ用のコンタクトレンズを装着して、ユーザー同士がお互いを見つめると虹彩の形状や色素、深層心理がもたらす微かな揺らぎから、2人の
従来、人の目の色を使った人相学や色彩学を使って行われていた性格診断を、コンタクトレンズを介してアプリケーションのAIに処理させることでより正確に、より科学的根拠をもとに判定する。
発売当初は一部の人が知っているだけに留まっていたマイナーなアプリケーションだったが、人気動画配信者同士でアイケミを使って相性を計測する動画がバズり一気に人気が加速した。その人気にあやかりメディアもこぞってアイケミを取り上げ、瞬く間に世間に浸透、あっという間に知らない人はいないほどの知名度となった。
アイケミはコンタクトレンズを着けている者同士であれば多少の距離が離れていても目が合いさえすれば相性を測ることができる。オフラインのイベントやライブではタレント、アイドルがファンとのアイケミの計測を取り入れるまでに時間はかからなかった。自身のスマートフォンにアイドルとの相性が送信され記録として残ることは究極のファンサービスとなっている。
そして、占いなどに多感な若者や学生たちの間でもアイケミが流行するのは何ら不思議なことではない。世間的な大流行のおかげで通常の使い捨てコンタクトレンズとほぼ変わらない値段で、アイケミ用コンタクトレンズが販売されたという手軽さも後押しした。
学校でアイケミのコンタクトレンズを着けている人は半数以上を占め、学生たちは友達同士や気になるあの人との相性を計測し、その数値に一喜一憂する日々を謳歌していた。
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