星の雫が歌う森

sui

星の雫が歌う森

夜の森を、星の雫が降っていた。

それは雨ではなく、空からこぼれ落ちた光だった。

 


少女がその光のひとつを手のひらに乗せると、やわらかく震えて、

「ひとつだけ、願いを」と囁いた。


少女はしばらく考え、森の奥にそっと目を向ける。

そこには倒れた木々と、沈んだ湖が広がっていた。


「森が、もう一度、歌えるように」


その言葉が空気に溶けた瞬間、

光は静かにほどけて、無数の蝶となった。


青、金、緑――色彩の風が舞い、

枯れた葉に命を、濁った湖に透明を取り戻していく。


森は息を吹き返し、木々はそよぎながら、

ひとつの旋律のように、優しく揺れた。


少女は目を閉じ、ただその歌を聴いた。

それは世界のどこにもない、

一夜限りの、魔法の子守歌だった。


朝が来ると、蝶も光も跡形もなく消えていた。

けれど森は、あの夜の記憶をそっと風にのせて、

これからも静かに、優しく歌い続けるのだった。

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星の雫が歌う森 sui @uni003

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