補修の先生のイラストがやたら上手い
烏何故なくの
第2話
『腕がもげてもとにかく集中!』
補習の教室の黒板に描かれたギャルのイラストの口から、スパルタな言葉が漏れ出している。
スクールカーストの高い人は勉強もできる気がするので、スパルタ系のギャルがいてもおかしくはない。
問題なのは彼女の髪だ。
七色のチョークを惜しげもなく使われたロングの髪が、自然に揺れて広がっている。
美しい。
このイラストより色使いが綺麗な絵は知っている。
もっと迫力のある構図も知っている。
しかし。
こんなに線が美しい絵を、私は知らない。
このイラストを描いた絵師(私は絵師という単語が好きではないがここは敬意を込めて使わせてもらう)に声をかける。
「センセってオタク?」
「何ですか薮から棒に。違います。少し線を描くのが好きなだけですよ。気分が落ち着くので」
簡単に言わないでほしい。
SNSのある時代の子供は生半可な出来の作品では満足できないのだ。
「線を描くのが好きならテストとかも楽そうでいいですねぇ」
「マークシートになるまでは楽しかったんですけどねぇ、テスト」
えっ。
本当にテストが好きだったのか?
字を書くのとイラストじゃまったく違うと思うんだけど。
「じゃ、じゃあ板書するのも好きなんですか?」
「はい。それが目当てで教師を始めました。自分のペースで線が引けるので」
「……神絵師ってより仙人絵師って感じ……」
イラストには敬意を表するがここまで勉強に考え方が違うとこの人につきっきりで補習受けるの嫌だな……。
「そんな嫌そうな顔しないで。私は貴方と補修できて嬉しいですよ」
「?!」
何故?! 話したこともほとんどないのに?!
出所不明の行為を向けられて怯える私に、先生は教卓から紙を取り出して見せてきた。
見紛うことはできない。あれは私の無惨な数学のテスト用紙だった。
「赤ペンつけるのも好きなんですよ。線さえ書ければ私はいいので。補習でもいっぱい間違えていいですからね?」
補修の先生のイラストがやたら上手い 烏何故なくの @karasunazenakuno
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