#3 瑠璃の記憶
前世。
僕は峰須るかという名の女だった。
ボートレース場に通い詰め、賭けに熱を上げていた。
ご当地メシにあの水面の熱狂、華やかなファンファーレ!あのターンの美しさ。
そして……?
「……ぼく、転生してるのか?」
呟いた言葉に、青いオルカヌーがキューと鳴いて応えた。
その瞳は、まるですべてを知っているかのように、僕を見つめていた。
「ふふ……面白くなってきたじゃないか」
そう呟いた僕の前で、青いレイクオルカヌーがキューキューと鳴いた。
まるで僕の心を読んだかのように、嬉しそうに水面をくるくると回っている。
「……なあ、お前、乗せてくれるか?」
オルカヌーは一瞬止まり、僕の顔を見つめた。
ミネスの瑠璃色の瞳と、青い体が陽光を受けてきらめく。
そして、ゆっくりと背を水面に浮かせて、僕の方へ近づいてきた。
「乗ってみろってことか……」
僕はそっと手を伸ばし、オルカヌーの背に触れた。
柔らかく、温かい。水棲生物なのに、どこか陸の獣のような安心感がある。
足をかけて、背にまたがる。
「キュッ」と鳴きながらヒレ?飛行機の翼ような部分で角?のような部分を指している。
器用だな。ちょっとそこに足を置いてるからあまり上げないでほしいんだが。
「もしかしてここに掴まっていいのか?」
ご要望通りに角?に掴まるとバイクのハンドルを握っているようで落ち着く。
そうしていると、オルカヌーがキュッと鳴いて、ふわりと水面を滑り出した。
「うわっ……!」
まるで風に乗ったような感覚だった。
水面を飛ぶように、滑るように、オルカヌーは湖の上を加速。
僕は思わず笑っていた。
「これ……これだよ! この感覚……!」
前世で何度も見た、あの水面での疾走。
自分が乗ることはなかったけれど、心のどこかでずっと憧れていた。
今、それを自分の体で感じている。
「よし……だったら!」
僕は湖の広い場所へと青いオルカヌーを導いた。
水面には、他のオルカヌーたちもぷかぷかと浮かんでいる。
赤、白、黒、黄、緑――そして僕の青。
「……レースをやってみよう。僕が、始めるんだ」
オルカヌーがキューと鳴いた。
まるで「待っていたよ」と言っているようだった。
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