【後編】仮想空間×海野彩葵

場所に着くと小さな小部屋のような場所だった。


椅子などもあるので、まずは向かい合って座ることにした。



ここで初めてユウくんはフードを取ってくれた。フードをしたまんまでも分かっていたけど、本当に可愛くて男の子だ。数秒見つめられただけで理性が吹き飛んでしまい、かねない。



「今日は会ってくれてありがとうございます」



「いえ、僕の方こそ、あおいさんからお誘い頂いて嬉しかったですよ」


今日は私の方からユウくんのことを誘った。予定は全てユウくんに合わせて、出来る限り近場で会える日を探した。今日は休日なので仕事もお休みだけど、もし平日しか時間がなければ問答無用で有給を使った。だってユウくんとアバターを通して会えるなんて私の人生の中で一番大切な日なんだから。



「たくさんお話したいんですけど、時間もあるのでお願いをしてもいいですか?」



「お願いですか?」



「はい、ギフトでお願いを…」


しばらくユウくんは考えるものだと思っていたけど、すぐに笑顔で受け入れてくれた。



「全然いいですよ。別にギフトじゃなくても、あおいさんがして欲しいんであればしてもいいです」



「いえ、そういうわけにはいかないので。ちゃんとギフトで」


ユウくんは優しいので全てを受け入れてくれる。本人が言うようにギフトじゃなくても、やってくれるかもしれない。




それでも私が支払いたい。私のために時間を使ってくれているだけでも、お金を支払うだけの価値がある。



「…あおいさんがそうおっしゃるのであれば」

私は色々なギフトを購入した。正直、全てのギフトをしっかりと購入したので、まずは難易度の低いものからいこうかな。


「じゃあ、最初に1000円のギフトで名前を呼び捨てで呼んでくれませんか?」



「呼び捨てですか?」



「はい…できればお願いします」


ユウくんは優しい人で、丁寧な人なので今までずっと『さん付け』で呼んでくれる。もちろん呼んでくれるだけで嬉しい。でも、呼び捨てで呼ばれるというのも体験してみたい。



「…わかりました。あおいさんがそうして欲しいなら」





ユウくんは目の前に座っている、私の瞳を射抜くように見つめてくれた。それだけでも今の私はショック死してしまうんじゃないかと思うぐらいに、心拍数が上がっている。


目の前に男の人がいて、これから名前を呼んでもらえる。数ヶ月前の自分に「これから男の人に名前で呼んでもらえるんだ」と言ったとしても信じてもらえないだろう。それぐらい……夢物語のようなことがこれから起こるんだ。



「あおい」


やばい。


なにこの破壊力。今までずっと名前で『さん付け』で呼ばれていたのが、急に呼び捨てになるとこんなにすごいの。



「あおい…?」



すご…い。


男の人に名前を呼ばれるのってこんなにすごいんだ。






私は初めて男の人に名前を呼ばれた。

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