僕の歌

詩乃天夢

第1話

いつもと同じ星空の下で、今日も求める歌を探す。

この世界の歌は、いつも同じような物語。

「君なら大丈夫」って、「頑張れ君」って、明るくて元気をくれる歌。

「君は悪くない」って、「僕がいるよ」って、暗くても慰めてくれる歌。

どれも僕には響かなかった。

むしろ、僕を苦しめた。

そんな歌を聴いた僕は、部屋の隅で泣くことしか出来ない。

感動の涙だとか、心が解放された涙だとか、そんな綺麗な涙じゃない。

苦しくて、苦しくて、どうにもできない、救われない孤独の涙だ。

僕が欲しかった言葉は、共感できる言葉。

多くは望んでいないのに、どこにもない。

どの歌も、星の数ほど散りばめられた綺麗事ばかりだった。

そもそも、そんな光の世界に僕は住んでいない。

慰めてくれる人も、支えてくれる人も、僕にはいない。

フィクションを、上辺だけの言葉を綴った歌は、いつも僕を孤独の夜に追いやる。

いつ、どんな星を見ても、僕の嫌いな歌が聞こえる。

曲を聴くことも、歌うことも、ずっと大好きだったのに、いつからか、歌えなくなっていた。

いつ、どこを探しても、僕の求めた物語はなかった。

ただ苦しいだけの日々が続く。

僕はただ、僕と同じような人を探したいだけなのに。

叫びたい。

僕の辛さを、苦しみを。

僕は笑いたいだけなんだ。

昔みたいに、歌いたいだけ。

歌いたい、歌いたい、歌いたい。

「君は君という物語の主人公だから」

僕を苦しめた何かに感化されて、僕は歌を書いた。

何を綴ればいいか。

何が書いてはいけないことなのか。

初めてだから全く分からないけど、ひたすら筆を走らせた。

音も一文字一文字総当りで、手探りだけで作る。

歌を書いている時も、参考にと聞いた曲に苦しめられた。

でも、歌いたい。

ただ、笑いたい。

世界はいつまでも暗くたって、僕の心くらいは明るくしたい。

どこにいるか分からない君へ。

顔も、声も知らない貴方へ。

僕と同じように僕の人生のような歌を求める人はいますか?

僕が僕の物語を描いたら、僕の人生の歌を歌ったら、誰か、救われてくれる人はいますか?

僕の物語はどう思いますか?

僕と同じような人生を歩んでいる人はいますか?

もし、よければ貴方の物語も聞かせてくれますか?

聞きたいことが沢山あるので、僕の歌を聴いてください。

僕に、歌わせてください。

明日の星は、心から綺麗だと思いたいのです。

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