第6話 第5回転生「魔法の杖」

「ウィンガー◯◯アム・レヴィ◯◯サ」


「美月さん、何をしているのですか?」


「分からないの?ハリ◯タの呪文よ。

つい口に出して言いたくなるのよね」


「美月さんはファンタジー嫌いなのでは?」


美月はキッと山吹を睨む。


「それはあんたのせいでしょうがっ!!」


「ふふふ」


「ふふふじゃないわよっ!」


「それより美月さん。この

『ヴァイオレットは幸せですか?』という

小説は実に面白いですね」


山吹は銀髪ツインテールの女の子が表紙に描かれた

ラノベを手に笑みを美月に向けた。

(※作者の作品です。)


「でしょ? わたしの知り合いが書いてるのよ!

いつもどんな展開にするか

頭を抱えてるって言ってたわ」

(※事実です)


「小説家の方は大変なのですね……。

あ、そろそろ異世界転生のお時間です」


「はぁ……また異世界転生。嫌になっちゃうわ」


「そんなこと仰らずに。

あと5回転生すれば自由ですから」


「ぐ……。わかったわよ。異世界転生する」


「それでは行ってらっしゃいませ」


美月は白い光の中に消えていった。


「おや、美月さん、おかえりなさいませ」


美月は無言で山吹の胸ぐらを掴む。


「美月さん?」


「やってくれたわね、このファンハラ男が」


般若の形相である。


「なんでわたしが魔法の杖なのよ!

そりゃわたしハリ◯タ好きだけど!

なりたいとは言ってないでしょ?!」


ブンブン振り回される山吹。

「すみません、今回は行き違いがあったようです。

本来は聖女になるはずだったのですが……」


「!?

大当たりじゃんっ!?

もうっなんで行き違いなんかあるのよ〜!

泣きたくなってくるよ」


「まあそう言わず。

詳しくお聞かせ願えますか?」


美月は鼻をズピッと鳴らしながら

今回の転生先について話し始めた。


▲▲▲


わたしが転生したのは

『トワイライト』という世界。

ある日気づいたらわたしはの。


どゆこと??


そして、徐々に身の回りの環境を理解する。

わたしは悪役令嬢アルフィーナの魔法の杖として

転生したのだと。この文章だけで意味がわからないけどね。アルフィーナは綺麗な紫色の髪に

青い瞳を持つ綺麗系の美少女だったわ。

ある日、アルフィーナは思いを寄せている男性が

自分の妹ミレーナと恋仲になっていることに気づく。

アルフィーナはベッドの中で涙を流していたわ。

アルフィーナに同情したのも束の間、彼を手に入れるため彼女は妹の殺害を決意するの。


「わたしの愛する人を奪うなんて、絶対にゆるさない!!」


嫉妬に狂ったアルフィーナはミレーナを殺そうと

わたしを寝ているミレーナに向けるの。

だけどアルフィーナにはできなかった。

いくら魔力を込めてもあと一歩のところで

勇気が出なかった。ミレーナとの思い出が

脳を駆け巡り、自分はなんて馬鹿なことをしようとしているのだとわたしを折った。

めっちゃ痛かった。

いくら正気に戻ったからって折らんでも……。


「それで、アルフィーナ達は

どうなったのでしょう?」


「さあね。わたしは折られた時点で死んでるし。

っていうか杖に転生させないでよ。

……ともかく。恋より愛を選んだ彼女は

幸せに暮らしているんじゃない?」


「それもそうですね」


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