[パンダ親子のマッサージ屋さん]【癒し】

 残業続きで肩は石のように固まり、頭の奥まで重たかった。ふらりと入った路地の先、小さな灯りに「マッサージ」と書かれている。引き寄せられるように扉を開けると、そこに立っていたのは……大きいエプロンをかけたパンダだった。


 驚く間もなく、分厚い掌がタオルをそっと受け取り、施術台へと導いてくれる。うつぶせになった瞬間、背中にふわりと影が落ちた。


 大きな手が、肩を包み込む。重すぎず、軽すぎず、体の奥にまでゆっくりと浸透するような圧。押された部分から、ぽうっと温かさが広がっていく。固まっていた筋肉が解け、血のめぐりが蘇るたび、眠気にも似た安らぎが押し寄せた。


 首すじをぐっと押さえた後、掌が背骨に沿ってなぞるように移動する。ひと呼吸ごとに、こわばっていた部分が柔らかくほぐれていく。息を吐くたび、心まで軽くなっていくのがわかる。


 横では、子どものパンダが小さな掌で太ももをぽかぽかと叩いていた。まだ拙い動きなのに、不思議とそれが愛らしく、温もりを重ねるように体に響く。思わず笑みがこぼれ、その笑みごと、疲れがゆるんでいく。


 肩、背中、腰。丁寧に、ゆっくりと。パンダのリズムは決して急がず、ただ「休んでいい」と告げるように優しい。やわらかな掌に包まれるたび、張り詰めていたものが溶けて流れ落ちる。


 施術が終わる頃には、体も心もすっかり軽くなっていた。立ち上がると、パンダは深々と頭を下げ、子どものパンダも一生懸命にまねをしてお辞儀する。


 外に出ると夜風までもがやさしく感じられた。

「……また来よう」

 そう呟いた声は、知らず知らずのうちに、少し弾んでいた。

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