[パンダ親子のマッサージ屋さん]【癒し】
残業続きで肩は石のように固まり、頭の奥まで重たかった。ふらりと入った路地の先、小さな灯りに「マッサージ」と書かれている。引き寄せられるように扉を開けると、そこに立っていたのは……大きいエプロンをかけたパンダだった。
驚く間もなく、分厚い掌がタオルをそっと受け取り、施術台へと導いてくれる。うつぶせになった瞬間、背中にふわりと影が落ちた。
大きな手が、肩を包み込む。重すぎず、軽すぎず、体の奥にまでゆっくりと浸透するような圧。押された部分から、ぽうっと温かさが広がっていく。固まっていた筋肉が解け、血のめぐりが蘇るたび、眠気にも似た安らぎが押し寄せた。
首すじをぐっと押さえた後、掌が背骨に沿ってなぞるように移動する。ひと呼吸ごとに、こわばっていた部分が柔らかくほぐれていく。息を吐くたび、心まで軽くなっていくのがわかる。
横では、子どものパンダが小さな掌で太ももをぽかぽかと叩いていた。まだ拙い動きなのに、不思議とそれが愛らしく、温もりを重ねるように体に響く。思わず笑みがこぼれ、その笑みごと、疲れがゆるんでいく。
肩、背中、腰。丁寧に、ゆっくりと。パンダのリズムは決して急がず、ただ「休んでいい」と告げるように優しい。やわらかな掌に包まれるたび、張り詰めていたものが溶けて流れ落ちる。
施術が終わる頃には、体も心もすっかり軽くなっていた。立ち上がると、パンダは深々と頭を下げ、子どものパンダも一生懸命にまねをしてお辞儀する。
外に出ると夜風までもがやさしく感じられた。
「……また来よう」
そう呟いた声は、知らず知らずのうちに、少し弾んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます