#33 現実逃避

【緊急イベント】ユメノネ防衛線【海底神殿ルールリエ】




1 名前:常連A [ID:longbow]


これまでの経緯


夢見亭のメイド(たぬまり氏)が交換宝箱に識別の紙片を入れる


→漁村のNPC教団所属のプレイヤー(魚取氏)がたまたま識別の紙片をゲットして教団が神と崇めているモノに使う


→結果をみるために魚取氏が夢見亭を訪れる


→たぬまり氏に識別結果を見せてもらってショックで昏倒


→教団側が魚取氏の動きを察知して夢見亭に凸


→異教徒扱いされた魚取氏とついでにたぬまり氏(教団は星の巫女呼びしてた)が誘拐される


→たぶんたぬまり氏が星をなんかした


→なんかの条件が満たされて海底神殿ルールリエが浮上


→ルールリエと教団がユメノネに攻めてくる(?)




2 名前:名無しの狩人 [ID:arrowhawk]


長い 三行で




3 名前:名無しの鍛冶師 [ID:forge77]


海底神殿


VS


始まりの街




4 名前:名無しの薬師 [ID:herb99]


たぬまり氏、また巻き込まれたのか……




5 名前:名無しの吟遊詩人 [ID:songbird]


星の巫女ってなんだよwww




6 名前:名無しの商人 [ID:coinpouch]


イベント発生ってことは報酬あるよな?




7 名前:名無しの踊り子 [ID:twirl88]


ユメノネ防衛ってことはPvEか?PvP混ざる?




8 名前:名無しの魔導士 [ID:manaflux]


ルールリエって浮上したらどうなるの?街壊れる?




9 名前:名無しの旅人 [ID:steplight]


とりあえず、夢見亭の様子見に行ってくる




10 名前:ツバキ [ID:camellia]


まず、魚取の言っていた漁村の偵察に行く。一緒に行く人は夢見亭集合




11 名前:名無しの傭兵 [ID:ironjaw]


<<10


行く。斧持ってく




12 名前:名無しの回復師 [ID:threadleaf]


<<10


回復役いる?行けるよ




13 名前:名無しの弓使い [ID:bowx3r]


ユメノネ防衛行くって言ってる有名人結構いる




14 名前:名無しの料理人 [ID:panflare]


バフ料理準備しとくわ




15 名前:名無しの占星術師 [ID:chartreader]


星の位置が揃ったって、どういう意味だったんだろ




……




106 名前:魚取 [ID:gyogyo]


なんか魔法で拘束されてもた。掲示板の書き込みくらいしかできないお(´・ω・`)




107 名前:名無しの鍛冶師 [ID:forge77] <<16


魚取氏www本物?




108 名前:名無しの狩人 [ID:arrowhawk] <<16


魚取氏どこー




109 名前:名無しの魔導士 [ID:manaflux] <<16


漁村の場所kwsk




200 名前:魚取 [ID:gyogyo]


<<17-19


漁村はユメノネから南西の海岸沿い。NPC教団の拠点で、今はほとんど神殿に移動してる。


たぬまりちゃん「星を揃えろ」って脅されて涙目で星を「えい」ってやったらルールリエ浮上しちゃってほんま可哀そう。かわいい。ほんとすこ。




201 名前:名無しの吟遊詩人 [ID:songbird]


ちゃっかり好きになるな




202 名前:名無しの薬師 [ID:herb99]


<<20


かわいそうかわいい




203 名前:名無しの商人 [ID:coinpouch]


ルールリエって入れるの?




204 名前:魚取 [ID:gyogyo]


<<23


普段は海底にあって魚人しか入れないけど、今は浮上してるから誰でも入れると思う






……




625 名前:名無しの騎士 [ID:shielded]


潜入組と防衛組で分けるか




626 名前:ツバキ [ID:camellia]


漁村偵察組、今から出発する。現地で情報集めて、必要なら神殿潜入に切り替える




……




802 名前:名無しの探索者 [ID:twirl88]


邪神とか出てきませんように








ツバキは掲示板を閉じ、深く息を吐いた。




「こんなもんか。とりあえず今いるメンバーで漁村に向かう」




夢見亭のカウンターでは、こまちが心配そうに見送っていた。


店長は「俺はここで待機だな」と言いながら、グラスを磨いている。




漁村偵察班はツバキを先頭に常連客と掲示板で集まったメンバーで構成されていた。


遠征組はユメノネ防衛線に参加するため、今回は不参加。




漁村は、寄せ集めた情報をもとに特定できた。


南西の海岸沿い。潮の香りが強く、空気は湿っていた。




到着した漁村には、人影がなかった。


住人たちは、ほとんど浮上した神殿に移動しているようだった。




しばらく探索すると、村長宅と思われる少し大きな家の地下を発見。


そこには——簀巻きのまま転がされている魚取がいた。




「生きてるか?」


「はい……なんとか……」




魚取を助けたことで、海底神殿の内部情報が明らかになる。


普段は海底にあり、魚人でないと入れない。


しかし、今は浮上しているため、誰でも入れる可能性が高い。




「この情報、掲示板に流しておいて」


「了解です」




ツバキは、漁村偵察班の動きを神殿潜入に切り替えることを決めた。








その頃、神殿の上層。


たぬまりは、極楽だった。




教団の皆が星の巫女として敬ってくれるので、外の様子が見える一番いい席に案内され、海の幸を献上されていた。


教団の女性たちは人魚のような見た目で、胸元は貝殻風の胸当て。首元や手首、お腹をピッタリと覆う白いレース、下半身は色とりどりの魚の尾。


露出は少なく、どこか楚々としていて、優雅だった。




水の魔法であちこちに水が浮いており、たぬまりも水のソファに座っていた。


ただ一点、常に濡れていて不快だった。




「こちら、人魚変身ポーションです」


「解除のポーションを飲むまで解除されません」


「水場では人魚姿が快適ですよ」




女性たちは、柔らかく微笑みながら差し出してくる。


どうやら彼女たちも、全員が人魚というわけではなく、生活のために変身している者も多いらしい。


というか、ほぼ誘拐されてきたのだという。




「ヤバいところに来ちゃったな……」




たぬまりは思いつつも、濡れているのが本当に不快だったので、ポーションを飲むことにした。




変身のタイミングで、手際よく服を着替えさせられる。


女性たちの服に似た、ぴたりとした白いレースと貝殻の可愛い服。


彼女たちよりも少し豪華で、ところどころにパールが散りばめられている。


たっぷりとした白い布が腰元から流れ、動くたびに水の中で柔らかく揺れた。


魔女帽子は外され、代わりにティアラが頭に乗せられていた。


水晶のような透明な装飾が、光を受けて虹色にきらめく。




「巫女様、鏡をお持ちします」




一人の女性が水魔法で空中に水面を浮かべ、鏡のように整えてくれた。


その鏡に映ったのは、ソファにくつろぐ楚々とした人魚のお姫様。


白く輝く尾は、光に当たるとオーロラのようにきらめき、


耳元のヒレにはパールのアクセサリーが揺れていた。




猫耳も、たぬき尻尾も消えていた。


代わりに、耳の位置には薄く透けるヒレがあり、首元には水草のような飾りが添えられている。




「巫女様!とってもお似合いです」


「素敵です!巫女様!」




女性たちは満足そうに微笑み、たぬまりを囲んでいた。


その声は柔らかく、どこか切なげで、でも嬉しそうだった。




たぬまりは、まんざらでもなかった。


濡れているのが気持ちよくなったし、服も軽くて動きやすい。


何より、外の様子が見えるこの席は、風通しもよくて居心地がいい。




「……ここも悪くないな」




そう呟いて、たぬまりは水のソファに身を預けた。


外では、神殿の周囲を魚人たちが忙しそうに動き回っている。


空は薄曇りで、海の色は深く、静かに波打っていた。




遠くに、ユメノネの街が見える。


その方向に向かって、神殿の一部がゆっくりと回転しているのが分かった。




「ん……あれ、攻めてる?」




たぬまりは、紅茶の代わりに差し出された海藻茶を啜りながら、


自分が何かの引き金になったことを、ようやく実感し始めていた。




たぬまりは少しだけ目を閉じて、水の揺らぎに身を任せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る