黄昏の恋は宵闇に踊る
雪村灯里
#1 ジャック・オー・ランタンの呪い
私には呪いが掛かっている。
それは、みんなの顔がジャック・オー・ランタンに見える呪い。
そう、ハロウィンでよく見るアレ。
老若男女、人類
こんな事になったのは、この男のせいだ!
「
コイツは幼稚園からの幼馴染・
同い年で、私よりカボチャ1つ分背が高い。クールな目元のジャック・オー・ランタンだ。
この呪いは時を
ヒロイン……と言ってもカチカチ山のお婆さんだけど……。
先生、チョイス渋過ぎん??
私は極度の緊張しいだ。人の視線が怖い。教室で黒板の前に立った時ですら、言葉が上手く発せないのに。
悠斗の相手役なんて!……
しかし、あれよあれよと話は進み、当日に。舞台袖で震えていた私は願った。
――みんなカボチャになれ!
それが叶って、6年も尾を引いているのだ。
もちろん苦労した。カボチャの色や形、細かな傷で個人を見分けている。表情も分からないので、声や仕草で喜怒哀楽を読み取った。
カボチャ鑑定人と化した私は、眼光鋭く相手を観察し、他人の視線に動じなくなった。嫌味も通じない私を、人はこう呼ぶ。
『
花も恥じらう乙女にヒドイ。私だって年頃のJKだ。恋が気になる。
恋愛小説を読んでドキドキするけど……本から顔を上げると、みんなカボチャ。
出来るかな? 恋。
今宵は真のハロウィンパーティー。みんな思い思いの仮装をしてカラオケを楽しんでいる。私の隣に悠斗が座ったので、先程の問に答えた。
「ハロウィン感は無いけど、楽しいよ」
悠斗は私の呪いを信じてくれる唯一の人物だ。
「そう? 悩んでるみたいだけど」
さすが幼馴染、鋭い。鉄の処女の表情を読むなんて。
「バレた?……この先、私どうなるんだろうって。恋も出来ずにこのまま1人なのかな? ジャック・オー・ランタンの伝説みたいに、天国にも地獄にも行けないで1人なのかなって」
私はハッとした。天国や地獄だなんて、大げさな!――『なーんて、ごめん!』と、言おうとした時だった。
「天国にも地獄にも行けなくても……俺はずっと美月の傍にいるよ」
悠斗、それって……
心の底から、願ってしまった。彼が今どんな顔をしているのか。どんな目で私を見ているのか知りたい。
急に悠斗が慌て出す。
「どうした? 美月!! 顔真っ赤だぞ!?」
「だって……悠斗が……カボチャじゃないんだもん……」
そんな真剣な視線で射抜かれたから……とけてしまった。
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